時 評
谷川昌幸
ネパール協会HP同時掲載

  2001年 (→Index

011231 『東電OL症候群』を読んで
 佐野眞一『東電OL症候群』を読み、ゴビンダ氏を勾留し続け有罪にするには、
あまりにも証拠不十分だということが、改めて強く印象づけられた。
 このところ人心はとみに移ろいやすく、ゴビンダ裁判もほとんど忘れられてい
る。しかし、こうした忘却は消極的現状肯定であり、検察に有利に働く。無罪判
決後、「マイナリ氏の即時釈放を求める声明」をだしたネパール協会や、検察控
訴を不当と感じた人々は、忘却することなく、不当裁判の声を上げ続けるべきだ
ろう。その意味で、佐野氏のこの本の出版は意義深い。
 また、この本は外国メディアへの訴えかけも重視している。政治色の強い最高
裁は、「外から見られている」という圧力(世界世論のSanction)がなければ、
公正に働きそうにない。最高裁には、もはや人権は国家主権の都合でどうにでも
伸縮できるものではなくなっていることを是非わかってもらわねばならない。佐
野氏の本は、この点に読者の注意を促すという意味でも示唆的だ。
 しかし、その一方、この本は女性被害者を実名で名指ししている。この点につ
いては、強い違和感を感じた。
 たしかに実名表記により、被害者はその存在と行為を身元(アイデンティティ)
証明付きで歴史に刻み込まれることになった。しかし、被害者は本当にそれを望ん
だであろうか。それは本人にしかわからない。とすれば、一般的に考え、このよう
な事件の被害者については、本人と家族の名誉やプライバシーを守るため、実名使
用は避けるべきだろう。
 この本は、ルポルタージュというよりは文学的な感じがするが、そうであればな
おさらのこと、実名使用はなじまないと思う。 


011216 米大使館警備員射殺される
 カトマンズポスト等によれば、アメリカ大使館の警備員(ネパール人)が、15日昼、
カトマンズ市内のリンカン校とUSAID事務所を巡回中に、マオイストを名乗る2人
組に射殺された。
 マオイストの対米攻撃なのか、別の動機による殺害かは、まだ不明。
 カトマンズ市内での白昼の事件であり、不気味だ。


011213 インド国会攻撃される
 BBCによれば,インド国会が5人の武装侵入者により攻撃され,11人が死亡,30人
が負傷し,インドは厳戒態勢に入る模様。
 同時多発テロを切っ掛けに,アフガン報復攻撃,パレスチナ攻撃と暴力の抑制が切れ,
ついに南アジアの中心部にまで及んだ。
 インドの緊張は,当然,ネパールに深刻な影響を及ぼす。成り行きを用心深く見守り
たい。


011207 外務省弁護論
 「海外安全情報」への批判はもっともであり,異論はありませんが,少し見方を変えると,
外務省はむしろ被害者のような気がします。
 安直な危険度マニュアルを求めているのは,実は旅行者自身。私たちは危険性判断の責任
を自分で引き受けず,旅行社に転嫁し,旅行社はそれを外務省に丸投げする。「皆様の外務
省」としては,危険度1〜5の恣意性は百も承知だが,求められれば出さざるを得ない。
 自分自身のことを言えば,特に情けないのが大学。教員は,最高学府に学ぶ大の大人の学
生に旅行の自己責任を取らせる勇気を持たず,教授会に責任転嫁し,教授会は海外事情に詳
しい人材多数を擁しながら自主的判断を回避し,責任を外務省危険度マニュアルに転嫁する。
 外務省は,こうした無責任体制の尻拭いをさせられている気の毒な被害者。危険度マニュ
アルが無くなって困るのは,外務省よりもむしろ旅行関係者,特に学校ではないだろうか。


011203. カトマンズ郊外,襲撃される
 3日,カトマンズ北方のRasuwa(地図では未確認)にあるキリスト教系NGO,Adventist
Development and Relief Agency(本部アメリカ)が襲撃された。
 また,スンダリジャルの軍駐屯地も攻撃された。
 いずれも,死者はない模様(The Statesman)。

 2日には,ロルパで国軍が武装ヘリからのロケット砲攻撃により,マオイスト37人を殺
したという(Tribune)。

 いずれもインド情報だが,ネパールは非常事態宣言で,報道規制され,ジャーナリスト多
数が拘束され,新聞社もいくつか閉鎖されているそうなので,致し方ない。


011202. 同時多発「人民戦争」
 先進国の人々が、マオイストを「極悪非道で時代遅れのテロリスト」と呼びた
くなる気持ちはわかるが、そのような感情的罵倒は、ネパールの小ブッシュ氏を
喜ばせるだけで、およそ問題の解決にはつながらない。
 ネパールの政党は、島国日本の政党とは比較にならないほど国際的であり、長
く厳しい権力闘争の経験を持っている。コングレス党はB.P.コイララのイン
ドにおける対英独立闘争にルーツの一つを持つし、ネパール共産党はインドで設
立された。以後、コングレス党も共産党系諸党も、インドの政治諸勢力と愛憎半
ばの切っても切れない関係にある。マオイストも例外ではなく、インドを中心と
した世界の急進左翼勢力と連携しており、少なくともその「前衛」は筋金入りの
革命家である。それを「時代遅れ」などと一蹴すれば、それこそ「無知」と笑わ
れるだろう。
 ネパール・マオイストは「英語帝国主義」と「情報帝国主義」のおかげで国際
情勢に明るく、したがって当然、人民戦争も国際的展開をねらっている。
 インド報道だから多少割り引かなくてはならないが、マオイストが、人民戦争
をベンガル、シッキム、ビハール方面に展開しようとしていることは事実のよう
だ(Hindustan Times)。ダージリンのインド共産党(M)などが、マオイスト
との連帯を表明している。
 すでにインドでは、藤本さんご指摘(2157)のように、ナクサライト系の
「人民戦争グループ(PWG)」がコーラ工場を爆破しているし、11月29日
にはハイデラバード付近のタタ・コーヒ工場を攻撃した。さらに同派の精鋭「人
民ゲリラ軍」が12月第1週に大攻撃を計画中という(Telegraph)。
 ネパール・マオイストの「前衛」は、たぶん1000人くらい(Hindustan)。
シンパを含めた動員力は4000〜5000人だろう。ネパール社会の現状では
核となる中間層が少ないので、人民戦争はまだ今のところ「一揆」か「ラダイト
(機械打ち壊し運動)」の段階にとどまっているが、南アジアの資本主義化は急
激であり、革命の目がないわけではない。
 一揆やラダイトの段階であれば武力で弾圧できるが、マオイストが近代化・資
本主義化の矛盾をうまく捉え、反政府民族感情を取り込み、国際的支援のもとに
革命状況に持ち込めば、もはや貧弱なネパール国軍だけでは押さえきれない。
 ゆめゆめ「無知」「時代遅れ」などと、侮ってはならないだろう。


011130. マオイスト Vs コーラ帝国主義
 29日のコーラ工場爆破の目的は,何であろうか?
 コーラは,山奥にまでも被抑圧人民の人力で延々と運び上げられ,外人トレッカーや
富裕特権層の一瞬の快楽のために消費され,資本家を儲けさせる。それはまさに資本主
義的搾取の先兵であり,マオイスト理論からすれば,攻撃されて当然ということになる。
このいわゆる「コーラ帝国主義」に対する攻撃は,アメリカとその手先の買弁資本家に
向けられた象徴的攻撃かもしれない。
 しかし,理論的にはそうであっても,このあからさまな挑発は,当然,アメリカやイ
ンドの介入に絶好の口実を与えることになる。マオイストは,国王に非常事態権限を与
えることを目的としたかのような,国軍攻撃をしたばかりだ。そして今度は,自らアメ
リカやインドの介入を求めるかのようなコーラ攻撃。
 マオイストは理論武装したイデオロギー集団なのか? それとも,指導者たちには何
か別の隠された意図があるのか? そこが分からない。


011129 コカコーラ爆破
 報道によれば,29日,バラジュ(カトマンズ)のコカコーラ工場が爆破された。
死傷者なし。軍が一帯を封鎖し,バスターミナルで容疑者6人を逮捕(The Times
of India)。
 軍が前面に出ていることに注目。また,非常事態宣言下で当然だが,カトマンズ
市内を完全装備の兵士がパトロールしている(The Tribune)。
 インドの新聞報道だけでは,どの程度の緊張状態かよく分からない。外務省の海
外危険情報では,カトマンズ・パタンは危険地域には指定されていないが,本当に
これでよいのでしょうか。現状をご存じの方,お教えください。


011127 マ協力者も終身投獄
  The Times of India によれば,ネパール政府は27日,政令(ordinance)によりマ
オイスト協力者も終身投獄にすると発表。
 非常事態宣言により,軍は誰に対しても必要な場合には実力行使ができる。また,疑わ
しい場合は,令状なしで捜査して逮捕し,90日間勾留できる。言論出版の自由,財産権,
プライバシーの権利も制限された。すでにマオイスト寄りとされるジャーナリスト十数名
が拘束されたという。
 以上の報道は,ほぼ事実であろうが,上記インド紙は,こんな気になることも書いてい
る。ネパール情報筋によれば,「最も悪質な活動は,マオイスト・ゲリラがISI(パキ
スタン情報局)と協力してタライのジャングルで訓練キャンプを設営し,(ゲリラの)訓
練だけでなく,反乱者を訓練しインド国境を越えさせようとしていることだ。」
 真偽は分からないが,こうした報道が出るだけでも憂慮すべき事態だ。問題が「国際化」
し,これ以上こじれなければよいのだが・・・・。


011126 Re: 非常事態宣言へ
 報道によれば,26日,デウバ内閣は全国を対象とした非常事態宣言の
方針を決定したようだ。国王がカトマンズに戻り次第,正式に宣言される
見通し。
 ついに来るべきものが来た。しかし,いま事態の主導権を握っているの
は,いったい誰なのだろうか? マオイストのようにも見えるが,しかし,
どこかおかしい。まったくもって不可解。


011124b ネパール「文盲政策」?
 上原善広氏のルポ(新潮45)読みました。著者の現地ルポの試みは貴重ですが,いくつ
か気になる部分があります。
(1)「現ネパール政府の『文盲政策』は"成功"している。」==寡聞にして,そのよう
な政策は聞いたことがありません。それにしても,「文盲」とは懐かしい表現です。
(2)「無知な田舎の自治政府代表と議論しても仕方ない」==「知」のあり方は状況によ
り異なる。それを無視し,「ただの無知な」「無知な田舎の」と切り捨ててしまっては,問
題の核心部分は見えてこないのではないでしょうか。
(3)「(マオイストは日本では)極悪非道で,時代遅れのテロリストだと報道されてい
る」==こうした報道は,皆無ではないかもしれないが,少なくとも一般的ではないと思い
ます。

●以上が私の感想です。間違っていたら訂正してください。


011124a ついに軍攻撃,人民評議会設立
 マオイストが,ついに軍を攻撃,「ネパリ・タイムズ」によれば11人の兵士が死
亡し,100人が捕虜になった。このままでは,非常事態宣言,憲法の人権規定停止,
国王の軍指揮権発動となる恐れがある。
 いま危機に瀕しているのが90年憲法と代議政治であることは明白だが,この危機
を誰が,何の目的でつくりだしているのかは,王族殺害事件の真相と同じく,皆目見
当もつかない。

 一方,マオイストは,23日,本格的な「中央人民政府」宣言をだし,「人民評議
会」を立ち上げた。委員36名,議長バブラム・バタライ。
 中央レベルでの1国,2政府。これは6年前のプラチャンダ宣言通りの展開であり,
その限りではマオイスト運動は統制がとれている。しかし,マオイスト運動にはどう
も釈然としないところがあり,プラチャンダ理論通りすすむのかどうか,これも皆目
見当もつかない。

 平和的解決を望みつつ,事態の推移を見守りたい。


011120 学祭・ネパール展

●ネパールの子供たち(長崎)
 ・11月24−25日
 ・長崎大学・学生会館
   *入場無料。ご家族ご一緒に,お気軽においでください。

▼メチャ面白くて楽しいネパール展ご希望の方は,こちらへどうぞ。
 →→ネパール展・MUSUMUSU(東京)


011115 楽しいネパール展

大森のネパールレストラン「プージャ」でネパール展を開催します。
参加自由。お気軽においでください。
(内容)児童画、写真、歌とダンス、雑貨販売、プージャのネパール料理など
(日時)11月23−24日、11:00〜16:00
●案内・地図


011111 共和制要求、撤回
 マオイストがついに共和制を交渉条件から外した。まだ政府との綱引きがどう
なるか分からないが、和平への大きな前進であることは間違いない。
 君主制か共和制かは重要な問題だが、暴力で社会そのものが壊れてしまっては
元も子もない。政府・マオイスト交渉の早期決着を期待したい。


011103 頑張れ、フェアトレード
 先日ご案内の公開授業「教育とフェアトレード」が無事終了しました。
 フェアトレードには、資本主義下では様々な困難がありそうですが、非軍事的な
平和創造努力の最も有力な運動の1つとして、ますます頑張ってほしいと思います。
 フェアトレードについては、11月23−25日の学園祭でも紹介する予定です。
改めてご案内しますので、こちらにもおいでください。


011018 Re: 肉不足?!
 中国から羊をもらっていたなんて、知らなかった。

 でも、勝手な(根拠のない)想像ですが、中国の好意を断ったのは、インドへの遠慮で
はないですか? マオイストを押さえてもらったお礼。

 外から見ていると、そんな気がする。


011013 教育とフェアトレード(再掲)

先日予告の公開授業「教育とフェアトレード」の案内状が出来ました。入場無料です。お気軽にご出席ください。
●教育とフェアトレード


011004 長崎大学・公開授業(予定)
 長崎大学教育学部・谷川研究室では、特別講師をお招きして公開授業を実施します。
ぜひご出席ください。(一部変更があるかもしれません。詳細は谷川研究室へお問い
合わせください。)

●JICAの開発援助事業
 (日時)10月12日(金)16:10〜17:40
 (会場)長崎大学教育学部 25番教室
 (公開授業)国際関係論
 (講師)JICA九州国際センター 笛吹 弦氏
  *満員の場合は入場をお断りすることがあります。あらかじめ、ご了承ください。
               
●教育とフェアトレード
 (日時)11月2日(金)14:30〜16:00
 (会場)長崎大学教育学部 31番教室
 (公開授業)国際理解教育
 (講師)ネパリ・バザーロ  土屋春代氏/サパナ・シャルマ氏
*入場無料。どなたでも参加できます。

■問い合わせ先
 長崎大学教育学部・谷川研究室
  095-847-1111 (内線)2409
  mtngw@hotmail.com


011002 イスラム寺院の門前市
 以前、時計塔側のイスラム寺院に立ち寄ったとき、ムスリム系の門前市が立ち、賑わっ
ていた。もう当分そんな風景は見られないでしょうね。淋しい。


011001 プラチャンダ議長逮捕か?
 議長まで含まれるかどうか分からないが、インド政府がネパール・マオイストを
「テロリスト」と呼び、何人か逮捕したことは本当らしい。(K-Post)


010930 プラチャンダ議長逮捕か?
 ネットの未確認情報によれば、マオイストのプラチャンダ議長がSilguriで
インド警察に逮捕された可能性がある。 
 他方、この逮捕とどう関係するのか分からないが、プラチャンダ議長は、拘束中の
警官ら全員を解放すると発表した。
 報道が事実なら、局面は大きく変わる。成り行きを見守りたい。


010927 ネパール非同盟政策の危機
 アフガン危機は、微妙な国際的パワーバランスの上に綱渡り的に、かろうじて独立を維持
してきたネパールにとって、大きな試練となりそうだ。
 ネパール国境へのインド軍1万人の動員は、以前からインドが非難してきたネパール国内
でのイスラム系諸勢力の暗躍に圧力をかけ、ネパールからの「テロリスト」の侵入を防止す
ることが主目的らしいが、軍隊の動員は当然大きな威嚇効果を持ち、ネパール国内の緊張を
さらに高めるだろう。
 また、ネパール政府はアメリカ軍への便宜供与を決めたが、左翼にはもともと反米感情が
強く、これも緊張を高める大きな要因となる。さっそくUMLは、米軍によるネパール領土
・施設の使用は非同盟・平和5原則の国是に反すると、抗議声明を出した。
 いくら否定しても「反イスラム十字軍」と見られる可能性の高い今回のアフガン攻撃に、
ネパールが巻き込まれるのは、絶対に避けるべきだ。1年前から激化した人民戦争に苦しみ、
下手をすると無政府状態になる恐れがあるいまのネパールに、泥沼の宗教・民族対立の火種
を持ち込むことが、いかに危険なことか。
 まさかそんなことはないと思うが、アメリカに「日の丸を見せよ」といくら脅迫されても、
安全な後方支援と言うことで、自衛隊をネパールに派遣するようなことは、夢にも考えては
ならない。自衛隊という名の日本軍がネパールに上陸すれば、これまでの日ネ友好の歴史は
一瞬にして瓦解するだろう。
 大国は、ネパールの危機的現状をよく理解し慎重に行動してほしいと思う。


010920 Re: 義賊マオイスト

いつも興味深く拝読。

マオイストは、3層への分解が始まったという記事がどこかにありました。
  ・特権的指導者層
  ・中間的市民・学生層
  ・下層貧困者層
指導者層は、もうそろそろ手を打ちたい、やりすぎると元も子もない、というのが本音でしょう。

難しいのは、インド。インドが、本気でダメ、といえば、たぶん終わりでしょう。終わらないところ
を見ると、もう少しやれ、というところか?


010919 コイララ氏、怒りの逆襲
 王宮事件で失脚したコイララ氏が逆襲に転じた。マオイストを支援しているのはインドと王宮だ
と公言、すでに同趣旨の発言をしていたMK・ネパール氏と暗黙の共闘だ。
 王宮事件後はっきりしたのは、(1)あれほど激しかった反インド活動がなくなり、(2)反イ
ンドの急先鋒マオイストもインド非難を止めたこと。なぜなのか?
 ネパール・マオイストは、インド共産党政権下のインド西ベンガル州を中心にインドで公然と活
動をしている。
 他方、王宮事件までは親インドの象徴だったコイララ氏が、いまやインド=王室=マオイストの
策謀に対する攻撃の先頭に立つ。
 歴史とは皮肉なものだ。


010919 ネパール報道の教訓をアメリカ報道にも
 王宮事件のときのネパール報道は、よき反面教師だった。当局発表は、当人も照れ笑いするほ
どいいかげんっだったし、新聞報道も錯綜していて、読者は常に疑ってかかる練習をした。
 ところが、いま世界はアメリカ発報道をほとんど鵜呑みにしている。湾岸戦争のとき流された
見事なピンポイント爆撃の映像それ自体はウソではなかったが、全体としては、それは真っ赤な
ウソだったのに・・・・。
 「知(情報)は力なり」
 途上国は、情報発信力が弱く、反証による公平な事実構成に参加できない。アメリカ情報には、
ネパール報道のような小さなウソは少ないが、その中にいると全く気付かないような巨大なウソ
があることがある。用心したい。


010917 軍・警察の共同作戦/M集会中止

16日、犬猿の仲だった軍と警察が初の共同作戦を実施し、学生寮の武器捜査を行った。

一方、マオイストは15日の集会禁止令を受け、プラチャンダ議長名で21日の大集会の
中止を宣言した。

事実なら、当面、危機は回避される。インドの圧力のおかげか?


010916 飛び火の恐れ
 アフガン危機は、すぐそばのネパールにとって、対岸の火事ではない。すでに印ネ国境に
大量のインド軍が移動中らしい。マオイスト問題と絡んで、いよいよ危なくなってきた。
 アフガンもネパールも、何とか最悪事態だけは回避してほしい。


010915 不平等社会の悲劇―ネ・米
 ネパール人民戦争とアメリカ自爆攻撃を同列に論じられないのはいうまでもないが、基本的な
点、つまり「不平等社会の悲劇」であり、「力では解決できない」という点では、かなりの共通
性がある。(以下、残虐行為の不当性は当然の前提とする。)
 アメリカとアフガンや中東。TVで交互に映し出される映像を見ると、こんな不平等(不正義)
は維持できない、と感じるのが自然だろう。世界資源(人類共有財産)を浪費し、贅沢の限りを
尽くし、その特権(不正義)を軍事力で守る。
 そのようなとき、アメリカ建国思想は「天に訴える」権利を認め、独立宣言は「抵抗権」を認
めている。やや牽強付会ながら、アメリカが普遍的正義の上に建国されたのなら、全くの間違い
とはいえまい。
 にもかかわらず、アメリカは武力報復を唱え、日本世論も好戦的主戦論に傾いてきた。恐ろし
い。
 力による弾圧は、不当差別の下にある人々を一層マジメにし、生命をかけて正義に訴える行動
に走らせるだろう。グローバル化した高度技術社会で、そんなことになったら、いくらアメリカ
でも勝ち目はない。
 日本政府は、率先して、力による報復の愚を説き、不平等社会(構造的暴力)の悪と闘う決然
たる姿勢を示してほしいと思う。


010910b 軍、マオイスト攻撃。大転換か?
 ついに軍が、8日、ゴルカでマオイストを攻撃した。
 8日、軍がマオイスト集会に向かうマオイスト3人を爆弾所持の疑いで拘束したのに対し、
マオイストが彼らの解放を要求して軍のゴルカ駐屯地にデモを仕掛けた。これに対し、軍が
発砲、2人が負傷した。
 まだ扱いは小さいが、これは重大。単なる偶発事件か、それとも対マオイスト政策の大転
換か? よく見極める必要がある。
 まだ何ともいえないが、「幕引き」の始まりのような感じがする。各地で、様々なマオイ
スト攻撃(軍は本格的には参加しないだろうが)が始まれば、どこかで手打ちがなり、ゴー
サインが出たことになる。
 動きを見守りたい。


010910a 佳作「心の歌」

イスワル・グルンさんを取り上げた「心の歌を聴け・ネパール」は、短いが佳作。淡々とした描写だが、
雰囲気は良く出ていた。

でも、民主主義や人権のメッセージの広がりを見ると、これからネパールは大変だなぁ、と感じざるを
えない。無事、軟着陸してほしい。


010907 嵐(9/21)前夜のネパール
 ネパール政府は、もう当事者能力を失ったのでは? カトマンズですら、事実上、2政府
状態。21日は、相当危ない。
 いまネパールを実質的に支配しているのは誰か? NC政府は、マオイストに脅され酒規制、
土地再配分など、無節操な譲歩をして信用を失墜するのみ。
 そのマオイストも、いつの間に30万人も動員できる大勢力になったのか? あまりにも変
だ。マオイストも支配主体ではない。
 ネパールには不気味な権力ブラックホールがある。確かにあると誰も感じているが、見た(と
語る)者はいない。その恐怖がネパールを支配している。
 人々はマオイストが怖いのではなく、おそらくはマオイストをすら動かしている、その得体の
知れない権力ブラックホールが怖いのだろう。

 21日が無事であることを祈るのみ。大集会(共和国宣言)→戒厳令→恐怖政治。この最悪シ
ナリオだけは避けてほしい。


010906 文化革命もどき

ネパール政府の酒規制はスゴイ。

@月4回の禁酒日 @酒販売店VDC2店規制 @24歳以下禁酒 @21歳以下、酒取り扱
い禁止 @酒宣伝禁止 @酒販売午後2〜6時 @酒造所新設禁止 @酒税による女子大設置
@華美なウェイトレス服禁止 @ポルノ、ファッションショー禁止 @ギャンブル全面禁止
@女性専用バス席 @一夫多妻等禁止

エライが、本気かなぁ。第2夫人に酌をさせ、頽廃西洋衛星テレビを楽しみながら、エライ人
たちがこんなことを言って、信じてもらえるかな。

本気で禁欲のマオイスト真正「文化革命」に勝ってこないような気がする。


010902 殺されても「遊ばない」人々
 アメリカ建国の主力はピューリタンですね。彼らはくそ真面目主義の典型。イギリス国王に「遊ばない
と死刑だ」と脅されても、教会に行き清く正しく礼拝した。地上の享楽は一切拒絶し、親子の縁も故郷も
振り切って「新世界」に渡った人々。金儲けも神の栄光のためだった。
 人権や民主主義、いや資本主義ですら、こうしたくそ真面目主義の成果だった。
 もしネパールの近代化や民主化(そして資本主義化)を求めるなら、マオイストの主張が最も首尾一貫
している、言い換えると、くそ真面目主義の代償(危険)なしに近代化や民主化が出来るのか、といささ
か疑問と危惧を感じている訳です。


010830 禁酒万歳!
 マオイストの生活改善闘争はエライ。そもそも近代の精神は「真面目」。どの国でも、近代化は
合理化でありマジメ化であった。
 前近代の王侯貴族文化は、酒、女(失礼!)、ギャンブル、暴力、不合理であった。だが、民衆
にとっては宗教(不合理)はアヘンだし、そのアヘンより悪い(とされていた)のが酒。そんなも
のにうつつを抜かしていては、革命はできない。
 マオイスト「全ネパール女性同盟(ANWA)」が、酒、ギャンブル、援助交際、ポルノ、ミス
コンテスト、華美なウエイトレス服などの禁止を政府に要求したのは当然。近代化を求める人が、
こうしたマオイストのマジメ化要求に反対するのは、矛盾。
 私自身、マオイストのマジメ主義には反発を感じるが、しかしよく考えてみると、これは憧憬の
裏返しであることを告白せざるを得ない。もう忘れたかもしれないが、私たちには皆、マジメな少
年・少女時代があった。マジメ主義批判は、永遠に失われたその時代を思い起こさせるものに対す
る一種の嫉妬ではないか。私たちは、落果寸前の爛熟文明の中で、悪徳の限りを尽くして残り少な
い生の証を手にしようと、焦り、もがいているような気がする。


010825 クラゲもどき

どうもネパールにいるのは、本物ではなく、「クラゲもどき」のようですね。

本物がいないとなると、私のクラゲ体験を伝えるのは難しい。クラゲを見たことも触れたことも
ないネパールの悪友に、あの摩訶不思議な生物を理解させるのは困難。彼が、キノコをさしてク
ラゲだと言い張ったとしても、「それは違う」と納得させきれない。都会の人が、たとえ写真や
テレビで知識として理解しても、クラゲそのものを体得させることはできない。

自転車の構造は本でも学べるが、乗り方は実物がないと体得できない。

う〜ん、難しい。コンニャク的、クラゲ問答。夏バテの後遺症か?


010821 ネパール・クラゲ
 体温以上の猛暑で夏バテ。これはイカンと、お盆に海に行くと、たちまち天罰。
生ぬるい海にクラゲがうようよ。ビリビリと全身を刺され、目が覚めた。
 そこで、質問。ネパールには、この「クラゲ」なる珍妙な生物は、いるのでしょ
うか?イルカはいるから、クラゲもいるかな?


010808 終身大統領、世襲主席もありますよ
 いつも興味深く拝読。当方、夏バテで、意気消沈。
 やはりネパールの政治家は貴族様。「何も忘れず、何も学ばず」(逆かな?)。これでは、
終身・世襲制大統領の登場となりそうだ。いや、歴史の教えに従えば、革命か。
 いずれにせよ、王族殺害事件がまだ生々しく、あまり露骨に動くと、秘密が露見する。誰
がやったのか知らないが、知っている人は知っているのであり、もうしばらくは、政局はは
っきりしない感じがする。
 また、生情報をお送りください。


010804 「ネパールと日本」出版

Ram Kumar Pandey, Nepal-Japan Relations, Rs. 250

この本は日本滞在中に書かれたということで、日本がどう見られているか、興味深い。
日本の成功の秘密は「愛国心と教育」ということのようだが、そこが具体的にどのよう
に書かれているか?

MK・ネパール氏も、すみやかに日本語に翻訳されるべき本だ、と出版祝賀会で推薦し
たそうです。(カトマンズ・ポスト)


010801 プラチャンダ氏は勇敢だ

デウバ首相:プラチャンダは「たいへん勇敢なリーダーだ」。国王の許しを得て、話し合おう。

MK・ネパール:ダメ! 同志を30人も殺された。    (7/31)  


010729 NC(D)=M=K連合、標的UMLか?

いま実力最大はUML。おまけに分派MLが続々と本家に戻り、親分CP・マイナリ氏も
ウズウズしている。「帝国主義」にとっては、こっちの本家も怖い。マオイストも、ここ
まで大きくなれば利害が対立。

というわけで、NC(D)=M=K連合がなり、標的がUMLになる可能性がある。目下、動向観
察中。


010728 人権の普遍性を信じます

議論は大歓迎ですが、どなたの発言か分かりませんので、これにはお答えしかねます。

私の立場は、先述の藤原氏のお考え「米国の要求は決して理不尽なものではなく、日本
の刑事手続きが世界の非常識だからである」と同じです。記事をご覧ください。

なお、私には、オーム事件のさなか、「被疑者の人権を守れ」とあちこちで公言し、袋
叩きにあった前科があります。


010726 ゴビンダ支援、米国と共闘を
 沖縄・北谷町の女性暴行事件で、米国が容疑者である米兵の引き渡しに抵抗したのは、当然だ。
米国は、断固、米兵の日本側への引き渡しを拒否し、彼の人権を守り抜くべきだった。
 それは、ゴビンダ氏の人権回復にも関係することだ。なぜ、ゴビンダ支援運動はこの件で米国
と共闘できないのだろうか。人権の立場に立てば、米軍とだって共闘してもよい。
 そう思っていた矢先、日弁連副会長・藤原精吾氏の明快な論説が出た。ゴビンダ支援の皆さん
にも、ぜひ読んでいただきたい。

「刑事手続き: 日本、国際水準に引き上げよ」朝日新聞、7月26日


010724 バタライ首相選出、中央政府設立へ
 マオイストは、国レベルの人民政府設立の方針を決め、バブラム・バタライ氏を初代首相に
選出した。KN・ビスタ氏、DN・ドゥンガーナ氏、PK・トゥラダール氏にも入閣要請をし
たらしい。
 大統領はプラチャンダ氏か?現国歌は「プラチャンダ讃歌」だから変えなくてもよいし。そ
れとも、権威不足だから、やはりあの方かもしれない。
 中央政府が正式に宣言されれば、当然諸外国との外交関係樹立に向かう。応じる国があるか
どうか。アジアの某国など、必ずしもないとは言い切れないから、ややこしい。
 以上、未確認情報。マオイストのプロパガンダにすぎないという見方が強いが、これまでの
ところ、大筋では5年前の「マオイスト宣言」通り進行してきたから、スゴイ。

(補足)「ちょっとシグナルさえ出せば、マオイストはギャネンドラ国王を自由主義的、愛国
的と呼びはじめるに違いない。」(MK・ネパール)


010721b 練習問題です
 これは、興味深いご報告に触発された自問形式の練習問題。こんな事も考えられるかな、と
いう程度のものです。

 以前にも書きましたように、議会政党が大同団結しなければこの危機は乗り切れないと思い
ます。この期に及んで党派争いを続けるのなら、既成政党の歴史的役割は終わり、次の時代が
始まる可能性が高い。
 正直なところ、それも仕方ないかなと思っていますが、移行は願わくば平和革命でやってほ
しい。憎しみの暴力で国民を分断さえしなければ、新体制になっても希望はある。いや、あえ
て誤解を恐れずにいえば、庶民にとっては現在以上に公平な社会になるかもしれない。
 もちろん、ネパールの未来はまずそこに住む人々の決めること。部外者の私は、基本的に観
客であり、見聞きし感じたことを述べているにすぎません。


010721a 不可解、もって不可解!
 ネパール政局は、平和ぼけ老生の頭の体操に最適だ。そこで練習問題−−

 (Q1)軍・マオイスト、じゃれ合い説。軍は本気でマオイストを攻撃するつもりはない。
危機感の劇的盛り上げ→ネパール共和国→G大統領。ありそうだが?

 (Q2)軍本気+弱気説。軍は本気だが、怖くて攻撃できない。以前、警察がマオイスト一
掃作戦を展開し、多くの非マオイストを犠牲にした。村人は怒ってマオイストになり、アムネ
スティには人権侵害を非難され悪者にされた。
 軍が攻撃すれば、多くの女、子供、村人が死ぬ。ゲリラ戦で敵の見分けは至難。村人は怒っ
て人民軍にはせ参じ、アムネスティにもまた叱られる。
 どう計算しても、国軍に勝ち目はない。だから本気だが、怖くて攻撃できない?

 (Q3)NC=警察標的説。マオイストはNC=警察に攻撃目標を絞っている。UMLもた
まに攻撃されているようだが、目標はNC=警察解体にありそうだ。とすれば、残るは軍だけ。
軍を握るのは誰かな?

 (Q4)南のビッグ・ブラザーの本格介入は?事態は許容限界に近づきつつある。NCがこ
れ以上弱体化すると、本格介入となりそうだ。ただし90年革命のときのような経済封鎖は今
度は使えない。とすれば、いよいよ軍進駐か? 


010717 バッタライ氏の過激インタビュー

マオイストのバブバム・バッタライ氏のインタビューが「ネパリタイムス」に載っている。こん
な危険な文章を載せてなぜ大丈夫なの?まさか政府公認ではないでしょうね。

NT: How are your present relations with the communist parties in Nepal: the UML,
ML and the nine smaller left parties?

BB: We have a good working relationship with all political forces in the country
which are opposed to anti-national and fascist Girija Koirala and Gyanendra Shah
cliques. We are trying to further consolidate that relationship.

NT: Can you give us more details of the "contact" with King Birendra, through
Dhirendra Shah, which you had mentioned in your previous statement?

BB: Yes, Dhirendra Shah had approached us on behalf of his brother King Birendra,
to express concern about the impending danger from Indian expansionists and to
try to build an understanding among the patriotic forces in the country. Our Party
representatives had several rounds of talks with him. It would be historically
important to record it publicly that, in his last meeting with our representatives
just weeks before the royal massacre, Dhirendra Shah had expressed danger to his
and other royalties' life. This is one of the concrete proof we have about the
larger conspiracy for the royal massacre on June 1, 2001. History will definitely
unfold the real truth some day…


010716 軍、本格参戦か?
 毎日=AFPによると、軍は初めてマオイストを攻撃、160人を殺害した。ホラリー村でマオイストの
捕虜になった警官71人の奪回のため。英米の新聞では確認できなかったが、事実だとすると、一大事。本
格的内戦になる恐れがある。
 また、ある情報によると、アメリカではネパール行き航空券の発売を停止したという。アメリカ人は攻撃
対象となると見たのか?
 以上、2情報は、いずれも未確認。どなたか事実確認をお願いします。いま東京放浪中で、これも池袋の
怪しげなインターネット喫茶から書き込んでいます。

 それにしてもよくわからないのは、王族殺害事件で政府代弁者だったポウデル副首相の辞任。老獪なコイ
ララさんが、憎まれ役をポウデルさんにやらせて、はいご苦労さんと、お役ごめんにしたのか?軍動員でコ
イララ首相と意見対立ということらしいが、この辞任と軍のマオイスト攻撃はどう関係するのか?
 まったくもって、わからない。もう、お手上げ。占いでもなんでもよいから、とにかく内戦だけはなんと
か回避してほしい。


010712 国王=大統領説
 ギャネンドラ大統領説は、マオイストさん自身のご高説です。念のため。
 神秘の国ネパールでは、実は、これは政治常識。UMLもかつてビレンドラ
国王=大統領説を唱え、今も放棄していないはずです。インド大統領のような
ものだ、と。


010711 ギャネンドラ大統領
 シアヌーク国王もあったのですか? これまでのいきさつは知りませんが、マオイストは
ギャネンドラ新国王を暫定政府の「シアヌーク殿下」(=初代大統領)にするという案をま
じめに考えているようですよ。


010707b 警官40人、殺害される!
 6日夜、マオイストはラムジュンなど3カ所を一斉攻撃し、警官40人を殺害した
という。
 いよいよ深刻。もう和平は無理か。議会政党は何をしているのだろう。手遅れにな
りそうだ!


010707a 検索で見つかります

選挙情報収集は、超簡単! Yahoo(USA)で「nepal election」と入れて、検索すれ
ば、芋づる式にザクザク出てくる。CIA資料もあるが、こんなのにアクセスすると、
ばっちり情報を取られてしまうかもしれない。

ちなみに、どこやらの学生は、形式ばかり立派な膨大なネパール英文原資料を読めと
守旧派鬼教師に強制され、こんなクダラナイ授業は取るのではなかったと日々嘆き悲
しんでいるそうですよ。


010704b 科学の超克?
 ほんと、これはすごい。見事に当たる確率が高い。スーパーコンピュータも真っ青。
ぜひ日本にお招きし、来年の景気予測をお願いしたい。株で大もうけ出来る。
 でも、占いは信じない人には当たらないと聞いた。お招きする前に、お祓いを受け、
不信心の不心得を改めておかねばなるまい。


010704a 不思議の国へ、ようこそ
 「Prachanda: 勇敢な」 国歌の冒頭、4語目ですね。−−不思議の国へ、ようこそ!
さぁ、謎解きの冒険に出かけましょう。

 (Q1)ゴロ合わせか、深〜い意味があるのか? 大胆にも「君が代」の君はマルクスだと
言っているようなものだから、ゴロ合わせと切って捨てるにはあまりにも惜しい。永遠の
文学少年としては、検閲下の文章には「謎」が隠されていると信じたい。ゴロ合わせに仮
託して、何かが言いたかったのではないか?
 (Q2)国歌批判が盛り上がり始めた矢先、王族殺害事件が起こった。国歌批判−王族殺害
−国歌プラチャンダ説。この関係は?
 (Q3)王制とマオイストは、今でも一種の協力関係にあるのでは? とすれば、国歌プラ
チャンダ説の含意は?
 QQQQ・・・・その他、謎だらけ。

 どう? 不思議でしょう。暇なとき、童心に返って、謎解きに挑戦してみてください。


010702 夢見る乙女子のために

散文的だなぁー。ネパールはやっぱり Wonderland、 夢見る永遠の文学少女
でなくっちゃ。近代合理主義に呪縛されると、せっかくの長編傑作大ロマン
『調査報告書』も楽しめませんよ。

というわけで、ネパール国歌も、乙女子の純心をもって口ずさめば、「あっ、
プラチャンダ讃歌だ!」とすぐ分かります。

そこからの謎解きは、不思議の国のアリスになって、楽しんでください。迷
っているうちに、現し世に出られるかもしれません。


010630 国歌はマオイスト讃歌?

ネパール国歌は、本当は、マオイスト讃歌らしい。「プラチャンダ」が絶讃、
賛美されているという(ネパール某紙)。

表で国王を讃え、裏声で「プラチャンダ」を讃える。う〜ん、意味深長!

さすが神秘の国。この謎が解ければ、間違いなく推理作家になれる。


010628 Re: 大同団結!
 本当にわからん。議会制民主主義を守ることは、大政党だけでなく、過激
派CPN-Masalさえも賛成しているのに、どうして一致協力して憲政擁護の行
動に出ないのか。
 王族殺害事件に加担していないのなら、どうして?


010626a Re: 手紙が届かない?
 困った。昨日手紙を出したのに。
 でも、不思議なことに、「スポットライト」「ヒマール」「ネパリ・タイムス」は、何事もなかっ
たかのように、ちゃんと届いています。雑誌は検閲済みだから良いのかもしれない。私信は検閲中か
も。

 コイララさんは、もういやになって、政権を投げ出すでしょう(カトマンズポスト)。でも、誰が
後を引き継ぐのでしょう。NCには、誰もいない。火を落とした冬の風呂で、出るに出られず、とい
って待てば待つほど寒くなるし、困っているのだと思う。
 いっそのこと、UMLのネパールさんにやってもらう。逆転の発想で名案だが、手を汚したくない
ので、断るでしょう。
 とすると、当面NC=UML大連立で行くという手がある。これだと、どこからでも首相は出せる。
王政逆行を防止するには、議会諸政党の共闘が必要だが、もっとひどくならないと、踏み切れないか
もしれない。手遅れにならないことを祈るのみ。

 議会政党にとってマオイストはますます脅威となっている。以前からやっていたが、このところマ
オイストは有力者の家族親戚への攻撃や誘拐作戦を活発化させてきた。中米の某国を見れば分かるよ
うに、これは防ぎようがない。実態は不明だが、動くに動けない有力者がかなりいるのではないだろ
うか。 


010625 コイララ&公安&マオイスト
 コイララ首相はどこにいらしゃるのでしょうか? このところ、やたら副首相ばかり目立つ。
 
と思っていたら、コイララ首相の地元が、とばっちりを受けていた(カトマンズポスト)。
ご乱心なれどわが殿の命令、ビラトナガル警察は20日、学生や通行人、新聞を買おうとし
た人、お茶をしている人、要するに「悪いことをしそうな奴」を手当たり次第検問し、多数を
逮捕した。「おい、こら」で捕まった人の中には、マオイストANNFUSもいたらしいが、まぁ
「アカ」はどこにでもいるし、「頭が高い!」と公安の印籠を示せば、誰も恐れ入って赤くな
る。
 元来、不逞の輩は面従腹背、お上の前で恐れ入らせても、逆効果。さっそくマオイストと称す
る輩が、22日、「おい、こら」への下々の不満に乗じて、爆弾をビラトナガルのあちこちに投
げつけ、インド系商店を破壊する狼藉に及んだ。
 一方、都も大変。20日、謀反の疑いでリラマニ・ポクレル(UPF)をお縄にしたのはまだ
しも、同志ローヒット(NWPP)までも捕まえたのは、まずい。ロ同志の声望はいや増すばか
り。こんな事をしていると、一揆になりますぞ。
 都では、直臣NSU学生組合までも、お上の取り調べは変だと騒ぎはじめ、切腹覚悟で直訴に
及ぶ跳ね上がりものも出そうな雲行き。

 コイララさん、ご高齢とは存じますが、早くお出ましになり、主権者人民の正統の代表として
事態収拾にあたられないと、混乱はますます拡大するのではないでしょうか。余所事ながら憂慮
しております。


010621 公安条例2001、怖いですね
 ネパール公安条例2001。外国人も対象でしょうね。「おい、こら」で捕まりそう。
公安筋からのご招待は、代理出席可でも、ごめん被りたい。(知らぬが仏、もう代理出席
済みかな。)
 でも、日本にもちゃんとありますよ。お前のところはどうなんだ、ネパールより人権感
覚が鈍いじゃないの、と言われると、ちと辛い。

「政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対する目的をもって、左の
各号の罪[騒乱罪、往来危険罪等]の予備、陰謀若しくは教唆をなし、又はこれらの罪を
実行させる目的をもつてするその罪のせん動をなした者は、3年以下の懲役又は禁こに処
する。」(破防法)


010620b 国王には配慮していました
 気になったので、前後のニュースを見たら、左翼6党は「調査報告に対する抗議活動は
しない。反ネパール陰謀を招くから」と宣言していました。
 国王には反対しないが、「公安条例2001」を出したコイララ政府とは断固闘うとい
うのであれば、従来と同じ下々の権力闘争。
 国王が、左翼6党からのこのシグナルにどう反応するか。まさか下々の争いに露骨に介
入する愚はおかさないと思いますが・・・・。


010620a Re: 規制がはじまりました
 「国王+NC(+インド)」vs「UML+左翼諸党(+マオイスト)」となると、
ちょっと危ないかな。
 「賢明な」国王は、そんな選択はしないと思いますが、でもわからない。国王と、
マオイストの出方を注目しています。


010619 街の埃は静まり、マオイストは山へ
 日本国の強固な盾に身を潜め、絶対安全圏からネパールについて論評するのは、いかにも
卑怯と忸怩たる思いだが、老体につき戦場に赴く体力も気力もなき故、お許し願いたい。

 今回の王族殺害事件は、日本国の法の傘の下で安全を守られていなければ、とても触れら
れないほど恐ろしい出来事だが、それにもどうやら本格的な幕引きが始まったようだ。何者
か知らないが、百も承知の見え見えのガセネタを世界中にバラ撒き、説明に矛盾が有るの無
いのと殆ど無意味な議論をさせ、冬のカトマンズも顔負けの埃をもうもうと立てておいて、
張本人はそれに紛れてどこかへスルリと逃げ去った。見事というほか無い。
 「もう埃(騒動)は静めよう」(カトマンズポスト)。UMLは16日の常任委で調査報
告を積極的に(positively)評価し、ライジングネパールがこれを大々的に報道した。各紙
は、新国王の教養と有能さをわれ先に讃え始めた。
 「良かれ悪しかれ、報告は出た。他に選択肢はない。」(カトマンズポスト)

 街の埃は静まり、マオイストは山で仕事を始めた。いつものように・・・・・・


010615 詳細な科学的報告書に敬服
 王族殺害事件調査委員会は、18日への延期を取り消し、予定通り14日、調査報告要旨を発
表した。6日の議会棟内設置からわずか1週間あまりで、調査委がよくもこれほど詳細な科学的
調査報告を完成できたものだと、敬服している。
 発表は要旨であり、新聞には誤植もあるが、基本的には最初のシャヒ証言通り。事件はディペ
ンドラ皇太子の単独犯と判明した。
 報道によると、ディペンドラ皇太子はウィスキーを飲み、ハッシシと得体の知れない黒色物質
を混ぜた特製タバコ(常習者だった)を持ってこさせた。
 午後8時12分から数回、皇太子は恋人のデビヤニ・ラナさんに携帯で電話した。デビヤニさ
ん自身の証言によると、皇太子の口調が変(sulurred)なので、お付きの副官に様子を見に行く
ように頼んだ。8時39分から32秒間の電話の最後で、皇太子はデビヤニさんに「もう寝るよ、
おやすみ。また明日、電話でね」と話した。
 そして、その後、皇太子は戦闘服でホールに入り、銃を乱射したのだ。
 報告は、恋人デビヤニさんを含む多くの目撃者、関係者の証言をきっちり押さえ、証拠を科学
的に分析し、時間も秒の単位まで正確だ。皇太子のMP−5Kは "rat-rat-rat" と発射された。
 要約でさえ、これほどのリアリティがあるのだから、200ページにも及ぶ報告書は、寸分の
疑いも入れぬほど科学的に完璧なものであるに違いない。
 残念なことに、報告要旨にはパラス王子の「英雄的働き」の記述がないが、ここではスペース
上割愛されたのだろう。200ページの報告書には必ずや複数の目撃証言付きで記載されると思
う。
 歴史は、かくあったし、またかくあらねばならない。


010614b 一部訂正

<マオイストの暫定政府論>
 「憲法改正とセット」ではなく、正確には「新憲法制定とセット」です。

     暫定政府→憲法制定会議→新憲法。

 これは平和革命の提案ですから、現状ではとても無理です。


010614a Re: マオイストの政権参加の可能性について、BBC

藤倉様
 マオイストの暫定政府論は、憲法改正とセットになっており、当面実現は無理です。統一共産党(UML)が
昨年秋、護憲から憲法改正論に転向し、マオイストを地上におびき出す作戦を立てましたが、今回の王族殺
害事件で、それも難しくなりました。
 今後、マオイストはどう動くか。プラチャンダ、バブラム・バッタライら党幹部が、党の統制を維持でき
るか。気になるところです。情報があれば、またお教えください。


010613b 調査報告再延期/両陛下のメッセージ
 王族殺害事件調査委員会は、14日予定の報告書提出を再延期し、次の月曜日(18日)とす
ると発表した(13日付カトマンズポスト)。
 一方、13日付ライジング・ネパール紙によると、天皇・皇后両陛下は、ギャネンドラ国王へ
メッセージを送られ、新国王が「敬慕されていたビレンドラ国王(how very much His Majesty
respected and loved his brother His late Majesty King Birendra)」をなくされたこと
を悼み、また新国王の「これからのご多幸を心から祈念(most sincere good wishes for the
future)」されたという。同紙は、このニュースをトップで報道した。


010613a 変化球−−草野球ですが

藤本さん、はじめまして。
 拙文(1589「王政vs民主政」)をお読みいただき、有り難うございます。
 草野球並ですが、直球ばかりだと打たれると思い、変化球を混ぜています。時々、暴投し、
「プロの真似をするな!」と味方に野次られています。
 でも、いくら野次られても、王制や天皇制は直球では攻めにくい。エラスムス先生に私淑し
風刺修行中ですが、まだ "Error-smus" 止まり。
 平に、ご容赦を。


010612 調査委よりも占い師を
 王族殺害事件調査委員会は、実に奇妙な委員会だ。統一共産党(UML)が、(1)憲法上の
根拠なし、(2)内閣の助言なし、という理由で参加拒否したのも、もっともだ。コングレス党
(NC)のコイララ首相は助言したと強弁しているが、審議の形跡はなく、追認ということだろ
う。
 一方、UMLの態度も変だ。MK・ネパール書記長の参加を拒否しておきながら、調査委を全
面支持し、調査結果を受け入れると早々と約束したという。ネパール式政治か。
 手続き上の問題の他に、国王設置の調査委は、事件関係者に真相解明を求めるもので、中立性
は最初から否定されている。しかも、憲法によれば、議会には国王、王妃、皇太子の行為の審議
権がなく、裁判所には国王の尋問権がない。(King can do no wrong!)正確には、調査委は下
院議長と最高裁長官だが、大差ない。中立性のない調査委に、出来ないことをさせようという構
図だ。
 憲法上出来ないことは、やらない方がよい。分からないことは分からないのだ。
 数年前のバンダリUML書記長ジープ転落死の真相も、波状的大デモの圧力にも関わらず、結
局、分からなかった。
 いやそれどころか、つい半年前、昨年末のリティック・ローシャン事件(会報166参照)でさえ、
TV発言の有無という至極簡単なことが、何万人もの目撃者(視聴者)がいて、ビデオもあるは
ずなのに、いまだはっきりしない。
 こんなことも分からなくて、どうして王族殺害事件の解明が出来ようか。これは占い師が予言
した事件だそうだから、占い師に聞くのが最善。何年も先の事件を正確に見通す超能力者のこと、
血糊も乾かぬ目前の事件の「真相」が分からぬはずはない。


010610 注目の調査結果−UMLの対応は?
 国王殺害「真相解明委員会」への参加を拒否できたことで、統一共産党(UML)は図らず
も圧倒的に優位な立場を手に入れた。今後の帰趨はUMLにかかっているといえる。

 UMLは議会第2党だが、前回地方選で大勝し地方議員の過半数を擁し、事件前の世論調査で
も支持率はコングレス党(NC)よりもはるかに高い。実力的には,UMLはNCより上だ。
 そこに今回の調査委員会不参加で、局外にとどまり、手を汚すことを回避した。これで、実力
に加え、威信も倍加した。
 そのUMLが、調査委員会報告にどう対応するか。これは難しい。ジョーカーを手にしたが、
どの局面で、どう使うか。2つのシナリオが考えられる。

(1) 調査結果に納得せず、「真相」究明活動を展開する。これはマオイスト等の左翼諸政党
を刺激し、各地で「真相」解明=反政府活動が激化する。UMLは議会政党だが、過去にマオイ
ストと暗黙の協力をしたこともあり、状況によってはこの可能性もある。
 しかし、これをやれば、軍動員は避けられず、内戦か軍政になる恐れがある。
(2) 調査結果を受け入れ、当面は、憲法秩序の回復を優先させる。
 これは、調査結果の内容にもよるが、シャヒ証言(No.1639)通りだとすると世間の納得を
得ることはかなり難しく、UMLの威信低下は避けられない。どこまで耐えられるか。M・K・
ネパール書記長の党指導力も盤石とはいえないので、極端な威信低下には耐えられない、と見な
ければならない。

 ――結局、ネパール政治の行方は、一方では、調査委がUMLの受け入れ可能な程度の報告を
出せるか否かにかかり、他方では、UMLが事の軽重を冷静に判断し政治的に賢明な行動が出来
るか否かにかかっている、といえるであろう。


010608 迫真の目撃証言
 ついに「カトマンズポスト」に決定的証言が掲載された。証言者はディレンドラ殿下の娘
プージャ王女の夫ラジブ・シャヒ大佐。当夜現場に居合わせ、事件を目撃した。

 その夜、ディペンドラ皇太子は酩酊状態(very, very intoxicated)で、ろれつが回らず
(stammer)あちこちで倒れ込んでいた(fall down)。
 9時頃、国王が撃たれ、ディペンドラ皇太子が部屋から飛び出した。再び入ってきた皇太子
は、大きなホールを出入りしながら銃撃、負傷者に次々ととどめを刺していった。
 このとき、パラス王子(ギャネンドラ新国王の息子、現皇太子)は全女性を背後にかばい、
助けようとした。パラス王子は、「積極的、英雄的とも言える働き(positive, even heroic,
role)」をした。
 シャヒ大佐によれば、動機は分からないが、ディペンドラ皇太子がビレンドラ国王を撃った
ことは確かで、彼は「人殺し(murderer)」だ。

 これは、現場にいた事件目撃者の証言であり、私はこれを読んで深く感動した。多分、そう
であろう。
 そして、真相解明委員会の3日後に出される結論も、ほぼこの線に落ち着くであろう。


010606 インド・中国、新国王支持/真実よりも平和を
 6日付カトマンズ・ポストによれば、インドのナラヤナン大統領が新国王へメッセージ
を寄せ、インド政府は新国王を強く支持することを表明した。
 また、朱鎔基首相は在中ネパール大使館を訪れ、新国王支持とネパール安定への希望を
表明した。
 新国王もすでに「複数政党制民主主義と立憲君主制を堅持する」ことを宣言した。

 これでよいではないか! 両大国、新国王、NC、UML−−皆意見が一致した。まも
なく平和は回復するだろう。

 あえていう。少なくともネパール庶民にとって、いま求めるべきは「真実」よりも「平
和」だ。事件は残虐で胸が痛むが、これは王室内の事件。庶民には直接関係ない。流言飛
語の中で「真実」を求めて右往左往しても無益なばかりか、新たな犠牲と悲劇を生むだけ
だ。
 「真実」は、求めるに相応しいときに求めるべきで、その時は必ず来ると思う。


010605c 訂正の補足
 出所は不明ですが、当初の深読みが間違いでないかもしれない情報がある方から寄せられ
ました。ご参考までに。

(事件の背景の1つ)
「ビレンドラ王がマオイスト制圧のために軍の動員を決めたことに、軍将校ら
は不満を持っていたこと」


010605b マオイスト声明(訂正)/共謀説の矛盾(補足)

(訂正)
 藤倉さんのご指摘の点は、前後関係から見て、誤植の可能性が高い。ただこの国のこと、ミス
か故意かは判断しかねる。この部分が変なので、私はこう深読みした。元国王の国軍投入反対は
周知の事実だが、ことここに至ってはコイララ案に同意せざるを得なくなっていた、と。しかし、
これは不自然。やはり誤植でしょう。

(マオイスト共謀説の矛盾)
 これとの関連で指摘しておきたいのは、このところ急浮上してきたマオイスト=某王族共謀説
の矛盾。これまでの情報を見る限り、その可能性は小さい。
 ビレンドラ元国王とマオイストの関係は、和解不可能なほど悪くはなかった。人民戦争への国
軍投入に反対してきたのは、おそらく元国王だろう。事実、この5年間、マオイストと国軍は一
度も戦わず奇妙な「平和共存」を続けてきた。その国王をマオイストが某王族と共謀して殺すは
ずがない。
 マオイスト犯人説が流布し、公認されれば、国軍投入の障害はなくなり、本物の「内戦」にな
る。
 そんな愚かなことをマオイストがするはずがない。新政府の有力ポストを与える密約でもあれ
ば別だが、そうでない限り、マオイスト共謀説は、別の意図を持つ「謀略」の感じがする。
 マオイスト共謀説は、可能性ゼロではないが、よほど用心しないと、危険だと思う。


010605a マオイスト声明−比較的穏健な真相解明要求
 ネパール情勢は確かに深刻だが、有力政党・政治勢力が組織的に民衆暴動を組織しなければ、
いずれ平静を取り戻せると思う。要注意は学生組織。今のところ学生は組織的には街頭に出てい
ない模様。
 楽観的すぎるかもしれないが、ネパール政党の政治力に期待している。政党が混乱を煽るよう
だと、戒厳令→政党禁止→国王親政となる。鍵を握る国軍は、おそらく国王につくだろうから、
これは可能なシナリオ。政党の自殺行為だ。
 コングレス党と統一共産党は、国王個人が誰であれ、当面は協力して王制の権威回復につとめ
るはずだ。問題は、他の左右急進派、とくにマオイストだ。そのマオイストが3日、プラチャン
ダ党首の声明(カトマンズポスト)を発表した。

(プラチャンダ声明の要点)
・ 国王殺害事件は、王室内のもめ事ではなく、計画的な謀殺。
・ 故ビレンドラ国王は、国軍による人民戦争鎮圧というコイララ首相案に肯定的だった。
・ 「コイララ首相、インド資本家、覇権的支配者グループ、内外のファンダメンタリスト反動勢
 力が自由主義的だった故ビレンドラ国王を許容できなくなった。」
・ 事件の真相を明らかにし、これ以上の虐殺を阻止せよ。
・ (今後の目標)全政党参加の会議→暫定内閣設立→新憲法制定

 故ビレンドラ国王については、一応コイララ寄りを批判しているものの、「愛国的」とか「自由
主義的」とかむしろ好意的。全体の論調は予想外に穏健。
 この政治危機を利用して一気に人民戦争を拡大し革命へ、という雰囲気ではない。気がかりは、
真相解明暴動の煽動だが、声明を読む限り自重している感じがする。
 マオイストが組織的に街頭に出るかどうか、これが今後の展開の鍵を握っていると思う。


010604 王政vs民主政
 今回の王族殺害事件は、ネパールを愛するものの一人として、悲しみに耐えない。が、私情を離
れ、これを歴史上の事件と見ると、また別の見方も可能だ。(礼を失するかもしれないが、国王・
王族は公人であり、公的議論の対象とすることをお許しいただきたい。)
 
 ネパールは立憲君主制だが、日本の象徴天皇とは違い、国王には国政に関する権能が大幅に認め
られている。国王は日常的に政治を行うだけでなく、究極の決定権を持つという意味では実質的な
主権者である。
 一方、その国王を長とする王族は、伝統的な王家であり、古典的王室文化に従って行動してい
る。それは、下々の、日常的で散文的な近代民主主義文化とは全く別物だ。
 古来、王宮には詩とロマンと戦いがあり、英雄がいた。そこでは、ballotよりもbullet、頭数
を数えるよりも頭を叩き割ることもまれではない。近代社会では私事、秘事の結婚、子づくりも衆
人監視の下で堂々となされるべき公務であった。
 これはネパールに限らず、王家はどこでもやってきたことだ。近代文化の側から、それを(のぞ
き趣味で屈折した欲望を満足させつつ)不道徳といってみても仕方ない。
 崇高と野蛮は王家の本質。問題は、この異文化に近代人がどこまで耐えられるかだ。世界の多く
の国は、耐えられなくなって、民主化した。90年革命以降、民主化してきたネパールは、どうか。
 たとえば、国歌。21世紀の今日、国歌の強制に見事「成功」しつつある奇跡の先進国がある一
方、ネパールでは今、国歌批判が始まったばかりだ。ヒンズー守護者=国王の栄光を讃え、ネパー
ル統治を願う国歌には、もはや耐えられない、というのだ。

 ネパールの悲劇は、変化が急激すぎること。犠牲になられた王族と多くの関係者を悼みつつ、ネ
パールの人々がこの危機を乗り切り、これ以上の犠牲なく、平和へと軟着陸することを切に願って
います。


010603 国王殺害−事実は創られる
 昨日、「あぶない」と書いたように、どの国であれ、当局発表には用心したい。「事実」
は権力者が創るもの。生きているはずの人が死んでいても、何ら不思議はない。いま、国
王殺害事件の歴史的「事実」が創られつつある。
 <誰が、何のために、どんな「事実」を創ろうとしているのか?>
しっかり見ていようと思う。

(マオイストとの関係)
 中村さんからの難問ですが、関係ありと見るのが自然。このところ王室関係者がマオイ
ストと様々な形で会っていた。マオイストが直接関与したとは思えないが、人民戦争によ
る体制危機が背景にあることは間違いない。
 まさか「ママに結婚を反対され、キレた」わけではあるまい。
 マオイスト運動との関係は、今後、マオイストがどう動くかで、ある程度想像できる。
 (1)人民戦争を止め、地上に出てくるか?
 (2)人民戦争を激化させ、体制転覆に向かうか?

(ファンダメンタリストとの関係)
 もう一つ考えるべきは、ヒンズー・ファンダメンタリストとの関係。ファンダメンタリ
ストが最近のネパールの自由化に危機感を募らせていたことは間違いない。彼らの動きと
今回の事件がどう関係しているか?
 今のところ何の情報もないが、この方面も注視していたい。


010602 本当に皇太子か?
 金曜夜の王室悲劇は、不可思議な事件だ。本当に、あのディペンドラ皇太子が
撃ったのか。誰が見たのか。恋愛沙汰とは単純すぎないか?
 政府発表によれば、自殺したとされた皇太子が実際には重体だが生きていて王
位継承したと言うが、まさか、そんなことは・・・・・。常識ではあり得ない。
 この事件は、行間も紙の裏も読む努力をしないと、あぶない。

 限られた情報だが、常識と推理を働かせ、まず何が事実かを知る努力をしてい
きたい。ネパール民主主義のために。


010529 マオイストの私学攻撃、日本支援校も閉鎖
 このところマオイストは、2月党大会採択の新方針「プラチャンダの道」に従い、
活動を多様化してきた。その中でも気になるのが私学攻撃で、都市部中心に休校が
続出しているようだ。
 日本支援の私学も例外ではなく、ムグリン近くの長い歴史を持つキリスト教系私
学も、マオイストに「植民地化教育」「金儲け主義」と攻撃され、やむなく閉鎖を
決めたとのこと。
 ネパールとは教育関係の交流が多く、他への波及が憂慮される。 


010502 2大英字紙、マイナリ支援を大々的に報道

ネパールの2大英字紙、Rising Nepal と Kathamndu Postが、昨日(5月1日)競って
マイナリ支援活動を大々的に報道した。ネパール協会声明も紹介されている。

日ネ関係が緊密化してくると、両国の友好関係を損ないかねない不幸な事件も増えてくる。
今回のマイナリ事件はなによりもまずマイナリ氏個人の人権の問題だが、日ネ友好にとっ
ても避けては通れない事件だ。「事を荒立てるな」という考え方もあろうが、臭い物に蓋
では真の友好関係は期待できない。

ネパール協会の「即時釈放要求声明」は、昨日の新聞報道によってネパールで再び注目さ
れ、マイナリ支援活動の国際化を促す切っ掛けとなりそうだ。協会には今後もマイナリ氏
の人権回復を支援していただきたいと思う。

上記英字紙には、このHPの「ネパールリンク集」から簡単に入れます。ぜひお読みくだ
さり、ご意見をお聞かせください。


010418b マオイスト人民銀行設立
 マオイストが、ジャジャルコットに国立銀行を設立した。人民軍、人民政府、
そして人民銀行。3点セット完備。
 1000ルピーで口座を開設し、11.5%の利子を稼ぐ。金満日本人が、
死蔵タンス預金を取り出し、貯金するかも・・・・?


010418a マオイスト人民銀行設立
 マオイストが、ジャジャルコットに国立銀行を設立した。人民軍、人民政府、
そして人民銀行。3点セット完備。
 1000ルピーで口座を開設し、11.5%の利子を稼ぐ。金満日本人が、
死蔵タンス預金を取り出し、貯金するかも・・・・?


010414 ネパール文化祭・ご案内

楽しいネパール文化祭
 ムスムス2001

連休名物、上野のネパール文化祭!
ご好評にお応えし、今春も大々的に開催。
ぜひ、おいでください、

(会場)東京・上野「宗善寺」
(日時)4月29日 14:00−18:00
    4月30日 10:00−17:00
(プログラム)ネパールダンス、ネパール雑貨展示販売、サリー試着、児童画展、
    写真展など
(会場地図)下記HPをご覧ください。イラスト付き案内状もあります。
http://www.edu.nagasaki-u.ac.jp/private/tanigawa/musmus/2001/map/map.htm

 ●左記「ネパールリンク集」のなかの<ネパール研究会>からも、上記HPに入る
  ことが出来ます。


010208 長い長〜い家、ありますか?

 あるテレビ局の方からの質問ですが、まるで見当がつきません。ご存じの方、お教え
ください。

(所在地)西ネパールのどこか。
(家の特徴)細長く、1軒が100m位ある。
(居住者)長老(家長?)と、その一族
(なぜ長い)家族が結婚するたびに、家の端に新婚用の部屋を増築する。こうして、10
     0mにもなった。
(記 録)20年ほど前の写真集に出ていたそうです。 

 こんな変な家は、どの地方の、どの村にあるのでしょうか?また、そんな家に住んでい
るユーモラスな人々は、何という民族でしょうか?


010122 マイナリ裁判批判(ワシントンポスト/ネパリポスト)
 ネパリポスト(1月12日)が、ワシントンポスト(日付不明)掲載のマイナリ裁判批
判記事Japanese Justice on Trialを転載している。
 渋谷付近(?)の写真付きのかなり大きな記事。ネパリタイムズは20ルピーもするの
で、影響力は限定されるが、そのうち他の新聞・雑誌にも転載されるだろうから、裁判批
判はおそらく庶民層にも拡大していくだろう。
 対日感情の悪化が心配されるが、無罪判決による正義回復以外に解決方法はあるまい。
残念なことだが。


010112 マオイスト「人民政府」設立か?
 昨年12月、マオイストはルクム郡で「人民政府」設立を宣言したらしい。本当なら、
郡レベルとはいえ、1国2政府。難しいことになった。
 また「ネパール人権年鑑」によると、マオイスト運動は全国化し、どこが安全とも言え
ないようだ。ネパールはネパール人の国であり、見守るしかないが、「平和か正義か」と
問いつめられると、つらい。
 →→詳しくは、ネパール協会「会報」をご覧ください。


010114 マイナリ裁判に抗議し続けよう!
 マイナリ氏有罪判決への抗議文を朝日新聞に投書したら、没にされた。天声人語(2000.
12.23)で「後味がよくない」といった軟弱意見しか言えない朝日は、もうダメだ。21世紀
は、ナマステボードの方が断然クオリティが高くなる(と思う)。
  ***  ***  ***  ***  ***
外国人被告に 人権の保障を
 東京高裁で逆転有罪となった東電殺人事件裁判は、ネパール人店員マイナリ被告に対する
重大な人権侵害だ。
日本語もよくわからぬまま別件逮捕され、強引な取り調べや弁護士接見妨害を受けたことも
問題だが、それら以上に明白な人権侵害は四月の一審無罪判決後の勾留継続だ。マイナリ被
告は、外国人であるが故に、そして恐らく欧米人でなく途上国の国民であるが故に、釈放さ
れなかった。これは国際人権法、憲法、刑訴法違反だ。
なかには逆転有罪だから勾留継続は結果的に妥当だったと考える人がいるかもしれないが、
これは刑事裁判の「適正手続き」の大原則を根本から否定する危険な俗論であり、到底認めら
れない。現行法には、外国人被告の場合、不備があるとしても、それは断じてマイナリ被告の
責任ではない。法に不備があれば国家は処罰できない。ただそれだけのことだ。
この裁判がいかに不当かは、ネパール滞在中の日本人が同じ扱いを受けたときのことを想像
してみれば、すぐわかる。日本人を理由とした被疑者・被告人の権利否定を、私たちは許容で
きるだろうか。
マイナリ裁判は、民族差別と取られかねず、ネパールや他の途上国との友好関係にも大きな
禍根を残す恐れがある。法の番人、最高裁が高裁判決を破棄し、普遍的正義を回復されること
を期待する。 (朝日新聞・没原稿:2000年12月23日)