時 評 | 谷川昌幸 ネパール協会HP同時掲載 |
2002年a (→Index)
020629 | お怒り、ごもっともなれど |
020628 | 播く種、耕す男は? |
020606 | クールなホットメール |
020605 | 多言語のパンドラの箱 |
020603 | 母語論者、逮捕 |
020529 | 議会抜き非常事態宣言/国軍大攻勢 |
020523b | 敬愛される立憲君主を目指すか? |
020523a | 議会抜きで国王にできること |
020515 | 怒れるネパール女性、サンスクリット大学焼討 |
020511 | プラチャンダ議長、停戦否定 |
020511 | ネパール人夫婦の姓について |
020426 | バンダの怪 |
020424 | 懸賞金付きお尋ね者リスト |
020419 | 別姓パスポートをつくろう |
020413b | 子供3人爆死 |
020413a | 新憲法か戦争継続か――プラチャンダの挑戦 |
020412 | ダン攻撃、62人死亡か |
020411 | 世界の大阪ネパール、日本のネパール大阪 |
020405 | サナダ虫でした |
020401 | Re: はじめまして |
020331 | 銃口1m: 恐怖・安全保障・自己嫌悪 |
020330b | カトマンズ厳戒態勢へ |
020330a | タメルに軍出動、世界一安全なCD |
020329 | ホーリー外人の不快、ナガルジュン峠の恐怖 |
020328c | 時の人、H・グルン博士 |
020328b |
平和ボケ身体 |
020328a |
犬がいない、細菌もいない |
020326 | 議会よりもお出迎え |
020325 | かっこいい女性警官 |
020324 | でも、やはり面白い国 |
020321 | カトマンズは静かです |
020318 | M訓練キャンプ攻撃、68人死亡 |
020317 | マイナリ提案の可能性 |
020316 | 桜とシャクナゲ、そして肖像権 |
020305 | ネパール人の肖像権? |
020223 | 外人部隊参加か? |
020222 | 32警官殺害、5市民焼殺 |
020221 | 非常事態宣言、延長か? |
020218 | 「敵国」としての日本 |
020214 | 「転向」上申書、あるいはネパール版「踏み絵」 |
020207 | Re: ネパール現地滞在のボランティア |
020131b | ネパールの反骨:「反テロ戦争」加担批判 |
020131a | そこに山があるから・・・・ |
020122 | 人民戦争開戦記念日 |
020121 | Re: 究極の選択 |
020629 お怒り、ごもっともなれど
わがボランティア教員も怒っていた。「せっかく30分も歩いて登校したのに、国王訪印で休み。なんで!」と。
藤本さんが、円高差益を逃したのも、実にお気の毒。
でもこれ、古き良きネパール文化を守るための貴重な努力で、(無責任な)部外者には好ましく思える。
古来、金儲けは立派な人の考えるべき事柄ではなかったし、近代的学校は人間性を矯め、知(=力=金)の独裁への従順な大衆(労働者)を生産する工場だ。(交通信号=記号化された知への絶対服従を教えられる小学生!)
Time is money も、某資本主義大国の近代の作(でなければ、スローガン化)だ。
経済や学校教育が王様の政治に優先するというのは、近代人の根拠なき偏見にすぎない。時は金ではなく、永遠に回帰していた。急ぐことに意味はなかった。
「そんなことは分かり切っている。分かっているが、腹が立つのだ」と怒られそうですが、つい藤本発言に啓発され、余計なことを書いてしまいました。
020628 播く種、耕す男は?
藤倉さんも紹介(No.2698)されているように、最近、マオイスト地域の現地ルポがかなり出始めた。読んで心配はつきないが、とくに気になるのが、この秋、飢饉になるのでは、ということ。
ルポによると、内戦状態のため村人たちは種まで食べてしまい、種不足の恐れがあるという。
おまけに、男たちは両派に狙われるので、危なくて村にいられない。薄暮の中、森から帰ってきたところを、いきなり政府軍に撃ち殺された村人の悲劇など、伝えられる通りの状況だとすると、働き手の男たちが村から逃げ出すのも無理はない。
こうして深刻な食糧不足が危惧されているが、不幸にして、そうなったとしても、NGOも逃げ出してしまったので、十分な食料支援はおぼつかない。
020606 クールなホットメール
ホットメールが有料になるらしい。2400円払わないと、POPメール使用不可。ネパールで使え
ない。困った。
普及させてから有料化。ひどい。
こんなことでは、英語帝国主義者たちも普及後の有料化を狙っているのでは、と勘ぐりたくなる。
"Thank you" はい、”1円”戴きます、なんて!
020605 多言語のパンドラの箱
母語教育権を認めた90年憲法(18条)は、パンドラの箱を開け、言語紛争勃発の 原因の一つになった。 母語初等教育の権利を認めながら、なぜ公文書での母語使用を認めないのか? 要求 はもっともであり、合理的反論は難しい。中にはネパール語風の名前を民族風の名前 に戻す運動を始めた人々もいる。いずれ、善意の「ネパール語」識字教育も、文化侵 略の手先として敵視されるようになるかもしれない。 「世界最新」の多文化主義を、国内文化や政治状況を無視して取り入れたための混乱 か。何事につけ、新しいものが良いとは限らない。
020603 母語論者、逮捕
6月1日、武装警察が、13名の母語論者を逮捕した。
母語については、1999年6月1日最高裁が公用文での使用禁止の判決
を出している。彼らは、この判決に抗議し、平和的にデモをしていた。
まだ新聞の扱いは小さいが、民族紛争の引き金になりかねない重要事件。
020529 議会抜き非常事態宣言/国軍大攻勢
下院解散、上院閉会の状況を利用し、国王=デウバ首相は5月27日、合法的に非常事態宣言を発した。3か月有効。脱法行為のようだが、国王=首相の作戦勝ちか。
コイララNC党首は強力だが、これから少なくとも3か月、実質的には6か月議会なしで済むのだから、首相は頑張ろうと思えばがんばり通せる。
そもそも、コイララ党首とデウバ首相の間に理論上の対立は何もない。なぜ対立しなければならないのか、合理的説明は不可能だ。
はっきりしているのは派閥的権力争い。これはネパール政治の悪弊で、マオイスト人民戦争をいつまでも解決できない根本原因の一つだ。議会諸政党が憲法秩序を守るという一点で協力しさえすれば、人民戦争はそれほど暴力を使わずとも抑制できる可能性がある。ところが、NC内やUMLなどが足の引っ張り合いをしていると、首相には力以外に頼るものはなくなる。首相は何が何でも実績を上げるため、無際限の力使用の誘惑に駆られる。
おそらくその兆候の一つであろうが、27/28日夜、ルクムで軍とマオイストが交戦し、マオイスト側に157人もの死者が出た。その惨状はテレビでも放映されたそうだから、本当だろう(死者が真正マオイストかどうかまでは不明)。今後、暴力の悪循環が拡大するなら、反デウバ諸党派もその責任は免れないだろう。
020523b 敬愛される立憲君主を目指すか?
国王が操っているのか、操られているのか? それは分からないが、少なくとも国王はいまのところ合法的に権力行使をしている。専制君主ではない。
議会を解散してしまえば、自由に勅令が使えるので、非常事態宣言がなくとも困らない。国軍も指揮できる。
問題は2つ。最高裁が解散を合憲と認めるか? 予算をどうするか?
これらをクリアし、11月に無事選挙が実施できれば、国王はめでたく立憲君主の威信を獲得し、敬愛される国民統合の象徴となる可能性が開けてくる。賢明であるはずの国王は、それを願っているはずだ。
ただし、合法的権力行使が正統とは限らないところに、このシナリオの難点がある。
020523a 議会抜きで国王にできること
国王=デウバ首相が議会を解散したらしい。本当だとすると、なぜ解散か?
議会を解散すれば、国王(=首相)は、合法的に、法律と同等の効力を持つ勅令(国王命令)を出すことができる。そして、国王には、国軍の指揮権もある。
事実上無制限の勅令と国軍指揮権。ただし、この勅令の有効期限は6ヶ月。おそらく国王(=首相)は、この6ヶ月の合法的委任独裁をフルに活用し、強権をもって事態沈静化を図るつもりだろう。
従って、選挙は6ヶ月後の11月13日。選挙が実施できれば、とりあえずは国王(=首相)の勝利。問題は、NCのコイララ派とUMLがこの強力な委任独裁を容認するか否か。容認しなければ、大混乱。成否は、難しい選択を迫られたコイララ派とUMLの出方にかかっているようだ。
020515 怒れるネパール女性、サンスクリット大学焼討
11日夜、マヘンドラ・サンスクリット大学を焼討にした約200(500?)人のゲリラの大半は、女性らしい。
抑圧移譲の最下端にいる女性が、「構造的差別の鉄鎖を美しく飾るイデオロギー装置」の打破に立ち上がったとしても、理屈の上ではよく分かるが、実際には事はそう簡単なことではなさそうだ。
これまで人民戦争はかなりの抑制が利いていた。その一つが、これを宗教戦争にしないという賢明な自制。世俗戦争なら、どこかで妥協が可能。
ところが今回は、ヒンズー教攻撃の側面が強く出た。かつて、たしか昨年末、動転した政府側が「マオイストは牛肉を食べている」という禁じ手のキャンペーンを始めた。さすがに、これは危ないと悟ったのか、すぐ止めた。ところが、今回はマオイスト側が反則の危険球。
早速14日、「世界ヒンズー連盟(WHF)」が声明をだし、WHFはヒンズー教を守るためであれば、あらゆる手段をとる、と警告した。
これは危ない。あらゆる手段をとられても、マオイストは革命断行の覚悟なのだろうか?
020511 プラチャンダ議長、停戦否定
マオイスト政治局長老のDina Nath Sharma氏は、BBCインタビューに対し、プラチャンダ議長は停戦拒否と明言した。
ロルパ戦での死者は11人であり、優勢な人民戦争の停戦理由はない、という。
ネパール版「大本営発表」か? 600人死んだとしても、真正マオイストは11人だけという意味か? 両者が情報戦をやっており、振り回されないよう注意が必要だ。
020511 ネパール人夫婦の姓について
この度めでたく「谷川」姓の使用を公認された(→
許可証実物)。自分の名前をお上に許可してもらう(お上が許可しなければ自分の名前を名乗れない)とは、完全な倒錯だが、まぁ、日本の人権感覚はその程度と言うこと(No.2501参照)。
名前は単なる記号だ、という人もいるが、名前こそアイデンティティの核。人権は「人をそのアイデンティティにおいて尊重すること」であり、名前なくして「私」はなく、姓名権なしの人権なんかあり得ない(ナチスドイツ、軍国日本はなにをしたのか)。
で、ネパールだが、ネパール人夫婦には別姓が多く、パスポートも別姓になっている。同姓もあると思うが、その辺の事情はどうなっているのだろう?
ネパール人男女は、結婚後の姓をどのように決め、使用しているのだろうか? これは、ネパール人にとっては説明するまでもなく自明のことでしょうが、この方面にうとい私にはよく分からない。
「姓」の意味が違うかもしれないし、他にも微妙な問題があるかもしれないが、差し障りのない範囲で、ネパ−ル人夫婦の姓について、お教え下さい。
020426 バンダの怪
とうとうタメルで死者まで! もはや外人も例外ではなくなった。こうなると、マオ
イスト「観光省」が宣伝するように、西部の解放区観光の方が安全かもしれない。
それにしても、こんな大規模なバンダ(ゼネスト)がどうしてこんなに易々と実行で
きるのだろう? 日本では、ゼネストはおろか、1時間の私鉄ストですら、最近では難
しい。
バンダは、真正マオイストだけで出来るはずがない。庶民の中に多くの同調者がいる
はずだ。 バンダは以前からあり、ネパール名物になっている。庶民にとって、呼びかけ役はお
そらく誰でもよいのだろう。マオイストか誰かが呼びかけさえすれば、かなりの人がそ
れに積極的に応じ、バンダを成功させる。
なぜそうなのか? どうしてこのような「バンダ政治文化」が形成されたのか? そ
こが知りたい。
020424 懸賞金付きお尋ね者リスト
ネパール内務省が、マオイストの顔写真付きお尋ね者リストを発表した。
「マオイストの3指導者(プラチャンダ、バッタライ、MK・ヴァイジャ)を捕らえ引き渡した者には、生死に関わらず、500万ルピーの賞金提供」(内務省)。
3指導者はさすがに大物で、賞金も桁違いの大金だ。獲得はなかなか容易ではないだろう。しかし、これ以外にも、捕らえたマオイストのランクや情報の重要度に応じて、350万ルピー以下の賞金が用意されている。
この賞金付きお尋ね者リストは、某国軍幹部がマオイスト活動地域を視察した後に発表された。表現も、ネパールらしくない即物性(即金性)も、某国そっくり。
某国西部の希薄な人間関係を前提にしたドライな「お尋ね者リスト」「懸賞金付き密告奨励」を、ネパールのような濃密な人間関係をもつ伝統的社会に直輸入してよいのだろうか。効果はないと思うが、仮に効果があるとすれば、それもまた恐ろしいことだ。
020419 別姓パスポートをつくろう
自民党守旧派が頑迷に抵抗しているが、夫婦別姓はもはや時の流れ(朝日社説4/18)。
20数年前、別姓運動を始めた頃は、まるで宇宙人扱い、「進歩的」法学者にも非常識だとバカにされたものだ。
ところが、ちょっと島国の外を見ると、夫婦別姓は常識。たとえばわがネパール。別姓夫婦なんて珍しくもない。ネパール視察の代議士先生には、山だけでなく、別姓の方もちゃんと視察していただきたい。
でも、外務省はエライ。「ネパールでは、こんなの常識だ」というと、ネパール式の夫婦別姓パスポート(実物写真)をつくってくれた。
これに対し、世間知らずの文部省=大学当局は、頑迷。なかなか認めない。仕方ないので、やはり某国の例にならいゲリラ戦。あみだクジで負け法的には喪失した旧姓(谷川)の権利回復闘争を始めた。以下、使用実例(2001年度)。
出勤簿=横山 全学教育=谷川 学部時間割=横山
学部シラバス=谷川 大学院=谷川 会計係=横山
学務係=谷川 図書館=谷川・・・・・その他、多数。
まるでパズル。本人にも分からない。もちろん学生は混乱し、文句を言う。「でも、悪いのは僕ではない。世界の非常識を強制する大学だよ」と、平気な顔で2年間過ごすと、「もうたまらん」ということで、やっと不完全ながら夫婦別姓制度(通知文書)が実現した。
ネパール好きの皆さん、文化先進国ネパールに習い、夫婦別姓パスポートをつくりましょう!
020413b 子供3人爆死
13日、バジュラ郡の小学校近くで爆発、子供3人が死亡。詳細不明だが、ますます規律が弛緩し、危険になってきた。
020413a 新憲法か戦争継続か――プラチャンダの挑戦
昨年末、プラチャンダ議長は、憲法制定会議の開催に応じない限り、人民戦争継続を明言していた。
(発言要旨)
インド介入を強く牽制。インドは世俗的共和制国家であり、ネパールが君主制ヒンズー国家を世俗的共和制国家に改めることに反対する理由はない。万が一、インドが介入すれば、断固これと戦う。
また、アメリカによる戦闘ヘリ等の兵器支援も許せない。「国際的反テロ同盟」は、9・11の主原因としての米帝の責任を棚上げするものであり、人民戦争を困難にすことはない。
以上が、発言要旨意訳だが、インド憲法が正当化根拠にされると、ネパール諸政党もインド政府も反論に窮す。
今回のダン大攻撃で、いよいよ政府は崖っぷちに追いつめられた。憲法制定会議開催に応じるか、さもなければ、武力制圧か。しかし、どちらも非常に難しい。
020412 ダン攻撃、62人死亡か
11日夜、マオイストがダン郡の警察隊基地を襲撃、警官50人、マオイスト12人が死亡した模様。詳細はまだ不明。
020411 世界の大阪ネパール、日本のネパール大阪
定価(権威)に弱いと噂の東京人に対し、大阪人は定価なんか頭から認めない。高級デパートだろうがホテルであろうが、とにかく値切ってみる。それが大阪人のモラル。大阪は万事交渉制。なんと人間的、文化的か!
ネパールも以前は原則として交渉制。ところが、これでは儲からないので、悪賢い近代資本家がスーパーやデパートをつくり、西欧の権威を借りて「定価」を権威付け、庶民の価格交渉権を剥奪し始めたのだ。カトマンズで最も非ネパール的な場所といえば、スーパー。あんなところには人間も文化もない。あるのは、商品と、値札と、レジ。どこに人間が、あの優しいネパール人がいるのか?
ネパールの皆さん、「定価」なんか信じてはダメですよ。大阪人がトラの手も借りて応援していますよ。値切り交渉は美徳。上手か下手かだけの違いだと思いますよ。
020405 サナダ虫でした
「ある医者」は、東京医科歯科大学の藤田紘一郎教授。先生が幼虫を飲み込んで、お腹の中で飼っているのは、サナダ虫の「キヨミちゃん」。現在、キヨミちゃんは2m以上に育ち、先生も快調のようだ。先日拾った文春(4/4)にでていた。
連載60回なので、回虫の話もあるかもしれないが、これはまだ未確認。
020401 Re: はじめまして
グラブさん、こんにちは。昨日帰国。大阪は春爛漫。自宅前の公園では桜満開、ウグイスが鳴いています。
ところで、ゴキブリをみると卒倒するという噂のjuniさんが、返信の中であんなことを書いていますが、取り返しのつかない程度の腹痛や発熱の体験は貴重ですよ。日本ではもうそんな贅沢なことは経験できない。
かつて小中学生だった頃、カゼ予防注射が半強制的に実施されていた(今も?)。これは、かなりの確率で発熱の副作用がでた。あほらしくて断固拒否。発熱で次々欠席者がでる中、一人ピンピンしていた。
カゼを引くすぐ注射、山ほど薬をもらってくるらしいjuniさん、インフルエンザに効く薬は、今のところないのですよ。効かないと知っているくせに、悪徳医者は注射と薬で大儲けしている。
グラブさん。回虫が10匹くらい住んでいてもよいではないですか。東京のある医者は、わざと回虫を飲み、体内で飼っているそうですよ。もちろん健康のため(これ未確認。すぐまねをしないでください)。
ネパールの人は事情が違うが、少なくとも日本人には、潔癖症という、日本ではほとんど不治の病を治していただきたい。
そして政治社会の病。授業で「政治は暴力だ」なんていくら講釈しても、おそらくクラブさんは「あっ、そう。それで」と冷たい反応しかされないでしょうが、カトマンズで兵士に銃を突きつけられたり、役所や通信施設や金融機関などの要所を軍と警察が守っている――庶民を守っているのではない!――のを見れば、「たしかに政治は暴力だ」と納得されるはず。十分注意した上で、暴力との安全距離を測る練習をしてください。
異文化内での生活。大変だと思いますが、私のような「ジジイ」ではなく、青春真っ只中、大いに楽しみ、またこのボードに書き込んでください。
020331 銃口1m: 恐怖・安全保障・自己嫌悪
ヒマラヤ銀行現金支払機(CD)に行った。右前の土嚢防御壁内に1人、前に2,3人、裏の寺境内には2,3人。鉄壁の「無人」CD。防御壁上に据えられた銃の銃口は丁度私の首の高さで、1mの距離。軍が金そのものを守る。見事な図式。
この検問所はタメルの警戒=防衛が重要任務。観光租界タメルの客は、王国軍に安全を守られ、外界の生活とはかけ離れた享楽をむさぼっている。いかにも不健康。
いまは私自身タメル客。英帝国植民地官吏G・オーウェルの感じたような自己嫌悪が、多少分かるような気がする。といっても、非力非才の身、オーウェル同志のような勇気もなければ、傑作をものできるわけもないが・・・・。
020330b カトマンズ厳戒態勢へ
29日、カトマンズの情勢は一気に緊迫。軍が各地に土嚢などで防御陣地を造りはじめた。軍用車や兵隊の行軍も見られる。
マオイストのバンダ警戒のためだろうが、つい先ほど聞いたところでは、昼頃、スワヤンブー行きのバスが爆破され、20〜30人が重軽傷という(未確認情報)。
本当だとすると、外国人も安心できない。また、昼間も安全とは言えない。
過剰反応は控えるべきだが、可能な限り、知り得た情報は早くお伝えしたいと思う。再確認のうえ、判断材料の一つとしてご利用ください。
020330a タメルに軍出動、世界一安全なCD
タメル入口に軍が土嚢で防護壁を構築し、小銃で武装した7、8人の兵士を配備した。鉄条網の車止めもある。
でも、位置が変だ。昨日は、SAARC付近に陣地を造りかけていたのに、今日行ってみると、ヒマラヤ銀行の現金支払い機(CD)の前。
どうやらこれはタメルよりもCDの防衛が主目的らしい。このCDには番人も常駐していて、今度は王国軍の警備。
すごい! 明日は、この世界一安全なCDを使ってみよう。
020329 ホーリー外人の不快、ナガルジュン峠の恐怖
28日はホーリー。変な祭りだ。悪ガキどもが色水(赤が多い)や泥水を通行人に浴びせ掛け、楽しむ。学校も官庁も店も休み。社会の安全弁としての祭りの乱痴気騒ぎだろう。
けれども、近代的観点から言うと、ホーリーはいかにも不潔、不合理、不経済。わが空中浮遊「定式」によれば、こんな祭りはいずれ禁止されるはずだ。子供は良い子と非行少年に分離され、あいまいな「いたずら」は許されなくなる。善行か犯罪かだ。
あとしばらくだ。ネパールの少年たちには、せいぜい楽しんでほしい。
それにしても許せないのが、ホーリー悪乗り不良外人だ。朝っぱらから酒をのみ、噂ではドラッグもやって、地元少年をそそのかし、乱暴狼藉を働く。危なくてホテルを出られない。午前中、部屋でふて寝をしていた。
が、いかにも忌々しいので、午後、やけくそでバラジュの先、ナガルジュンの森に暇つぶしに行った。森の中にネパール式リゾートホテルが点在。ボケーとしていると、いかにも平和。手付かずの森はうっそうと繁り、新緑が目に痛い。小鳥がさえずり、ホーホーと呼びかうのは、たしか大型の美しい鳥のはず。近くまで来たが、姿は見えなかった。残念。
深い森を見ていると、ふと、マオイストが隠れていそうだな、と余計な心配が頭をよぎったが、トラはいるがマオはいないといわれた。本当かなぁ。
薄暗くなってきたので、引き返し、峠の検問所(箱根の関所のようなもの)にくると、10数人の兵隊が自動小銃を構え、検問していた。命がけだなとすぐ察せられるほどピリピリし表情も硬い。車を調べている間中、小銃の銃口はこちらに向けられ、引き金には指があった。
マオはいなくてもトラはいる王室所有林のそばの検問所。兵士も恐いだろうが、こちらも恐かった。
020328c 時の人、H・グルン博士
今日(27日)も暇だったので、トリブバン大学(キルティプール)に遊びに行った。悪ガキどもにホーリ祭の色水をかけられながら、友人の「英雄ホンダ号」で20分、TUについた。
春の花満開、のどかで一見美しいが、教員室や教室を覗くと、まるで廃虚。キャンパスの中央に、巨大な豪華新校舎ができていたが、これもいつまでもつのだろう。この大学は、いくら豪華校舎を建てても、維持には金をかけない方針らしい。完成後は自然な崩壊に任せる。
午後、ハルカ・グルン博士を訪ねた。立派な研究所で、多くのスタッフとともに忙しく働いておられた。博士は、まさしく時の人の一人で、憲法改正、国教、言語政策、分権化などについて、お考えを伺った。お話は実に明快、危険なくらい先鋭。
敬意を表して、帰途、新著を1冊買い求めた。
020328b 平和ボケ身体
27日、知人がカカニに行った。この時期、カトマンズからヒマラヤはほとんど見えないが、さすがカカニ、バッチリ霊峰が拝め、痛く感動して帰ってきた。
話によると、途中、検問が5個所もあった。そのつど調べられ、バスは全員下車で捜索する徹底ぶり。
先日、「女性警官の増員を」と書いたが、余計なお世話だった。写真を見ると、制服の格好いい女性警官が各所に配置され、にっこりVサインの日本人と一緒に写っている。すでに大増員されているのだ。
それにしても、検問所や警官・兵士を写真に撮るとは、命知らずの大胆不敵か、幼児の天真爛漫か。
他人のことを言えた義理ではない。その日、王宮近くで友人の後ろ姿を見かけた私が、駆け寄ろうと思わず小走りになったとたん、路上警備兵が銃口を向け、制止した。ぎょっとして、すぐ止まったが、もし気付かず、走っていたら、撃たれていたかもしれない。撃たれても文句は言えない。それが非常事態というものだ。
それは頭では分かっていても、身体感覚はすぐには対応しない。平和ボケ身体の人は、タメル地区内でインターネットでもしているほうが身のためだ。
タメル入り口には、平和ボケ身体の外人向けに大看板が出ている。いわく、「タメルへようこそ。安全はわれらのモットー。安全をお守りしますので、ご協力を。観光警察」
タメルは、観光警察に守られた別天地。いずれ、「野良牛、野良犬、雑菌、そして・・・・は立ち入るべからず」と書き加えられることになるかもしれない。
観光租界タメル!
020328a 犬がいない、細菌もいない
カトマンズ名物、野良犬が激減した。昼間はぐったり路上でうずくまり、踏みつけると、哀れな悲鳴を上げ、こそこそ逃げ出すくせに、夜ともなると、野獣の本能を取り戻し、狂暴に襲い掛かる。蹴飛ばして歩きたいほど嫌な奴だったのに、いなくなると妙に淋しい。
「定説」(ネパール空中浮遊で悟った)によると、「近代化=合理化=分離分析=清潔」であり、野良牛・野良犬のようなあいまいで不合理・不潔な存在は許されない。野良牛は家に帰り聖なる家畜となった。でも、不潔で無能な野良犬には帰るべき家はない。犬は、忠実なエリート番犬と、無益な余計もの駄犬に分離された。犬ですら、まじめに働かないと生きられない社会になったのだ。哀れ、野良犬!
犬もかわいそうだが、無数の細菌たちもかわいそうだ。ネパールでは色々な細菌が平和共存していて、適当にお腹を壊し、熱をだし、私を苦しめ楽しませてくれた。これも嫌な奴だったが、抹殺されてしまうと、淋しさが募る。
タメルのレストランには、「殺菌液で30分以上殺菌。清潔、安全な野菜使用」と書いてある。細菌、微生物のたぐいは見事に分離され、良い子ヨーグルトは人に飼い慣らされ、他の細菌どもは必殺薬剤で皆殺しにされたのだ。かわいそうに。
かくして、細菌どもと付き合い、平和共存のための間合いを計る練習ができなくなった。食物は近代化され、私の胃腸も近代化された。私は清潔な人になった。めでたい。
020326 議会よりもお出迎え
25日、下院本会議傍聴。以前は、シンハダーバーの敷地にまでは自由に出入りでき、午睡をむさぼったりしていたものだが、今は警戒厳重。議事堂に入るまでに3回もチェックがあった。
下院は例のマオイスト問題を審議中というのに、インドから帰国の首相を出迎えるため多くの議員(特に右側の与党)が空港に行ってしまい、空席が目立った。
下院での議論はネパール語のためよく分からなかったが、議員食堂での昼食後、議長室でラナバート議長としばらく憲法について議論した。憲法も、マオイストがらみで今大問題となっているため、議長との議論は面白かった。
それにしても、改正改正といっているわりには、憲法のどこをかえるのか、よく分からない。こんな調子で憲法制定会議を開いてみても、もめるだけではないか。
一方、カトマンズでは土木工事真っ盛り。日本の年度末さながら、あちこちで道路を掘り返し、歩道や、日本では撤去運動の盛んな歩道橋を造っている。ラーニポカリには新市庁舎建設中。いったいどこからこんな金が出てくるのだろう。
まぁ、近代化だから当然か。近代化=分析=分離。牛と人を分け、人と車を分け、そして強者優先社会をつくる。カトマンズは近代化問題学習の適地かもしれない。
020325 かっこいい女性警官
ディリ・バザールとバグ・バザールの交差点に、毎日、女性警官が来て、交通整理している。かっこいい。
現在、非常事態下で、町中警官だらけ。要所には、兵隊さんが鉄砲を構え、いつでも撃てる態勢で警戒している。
庶民も苛立っているのか、ケンカが多い(「ケンカ」統計はないので印象にすぎないが)。訪ネ以来、1日1回の割で、路上での激しい殴り合いを見た。
知識人達も不満たらたら、「マオイストの手段は悪いが、主張にはもっともな所がある」というのが、一般的な意見だ。もう、どうにもならない、力だけでは押さえられないと、皆いっている。
そんな苛立ちの中で、女性警官は雰囲気を和ませてくれる。それともう一つ、最新モードの銀輪警官もかっこいい。騎馬警官は権威的・威圧的で好きになれないが、自転車は庶民的。女性警官と銀輪警官を大増員してどうか?
女性の社会進出は急。6年がかりの女性権利法が、やっと成立。財産の平等、離婚の権利等々。
女性警官を突破口に、ネパールの女性の皆さん、頑張って下さい。ひょっとしたら、男性社会ネパールの苦境は女性が救うことになるかもしれない。
020324 でも、やはり面白い国
色々なことがあっても、やはりネパールは面白い国だ。
村も面白いが、街もよい。カトマンズでは、バグバザールが好きだ。バスパークがあり、様々な人が行き交い、興味が尽きない。
昨日も、ぶらぶら歩いていたら、人のよさそうなおばさんが道端で新年用のカレンダーを売っていた。
左側には、マルクス=エンゲルス=レーニンのカレンダー、中間には、ヒンズーの神々のカレンダー、そして右側には、前国王一家の王室カレンダー。感動のあまり3枚も写真を撮り、その心意気に敬意を表して左と中央と右のカレンダーをそれぞれ1枚ずつ買った。
露店のおばさんも、周囲の人々も、怪訝なそぶりは微塵も見せない。コーラとペプシを1本ずつ買うのと同じ。
やはり、ネパールはよい国だ。
020321 カトマンズは静かです
昨夜、カトマンズ着。一日だけの見分ですが、市内は静かで、観光客も少ない。陽気な喧騒がなく、なんとなく、みんながじっと成り行きを見ている雰囲気が感じられる。
繁盛しているのは、インターネット屋ばかり。カトマンズにきて、インターネットとは、また皮肉。
それに、やはり、すごいインフレ。レストランからタクシーまで、本当に高くなった。これでは、庶民の生活は大変だろう。
ほんの1日滞在の印象にすぎないが、やはりカトマンズの雰囲気が大きく変わったという印象は否めない。
あとしばらく滞在するので、気付いたことがあれば、また報告します。
020318 M訓練キャンプ攻撃、68人死亡
国軍は16−17日夜、ロルパ郡のマオイスト軍訓練キャンプを包囲、攻撃し、100人以上を死傷させた。
「M訓練教官の中には外国人はいなかった」とのことだが、こんなことをわざわざ発表するのは、政府がそれをいかに恐れているかの証拠。
とにかく、マオイストに早く地上に出てきてもらわないと、外国介入が現実になりそうだ。
2日前、プラチャンダ議長が政府との交渉再開を打診したが、政府はこれを拒否したそうだ。そして、今度のインド訪問で、インドの強力な支援を要請するという。
インドへの支援要請は、諸刃の剣。マオイストの主張を裏付けることになりかねないし、軍事的に強圧すれば、まだ統制がとれ自制していると思われる人民戦争を中東のような無差別攻撃に追い込みかねない。
そんなことにならないうちに、取り返しがつかなくなる前に、なんとか平和的解決のテーブルについてほしいものだ。
020317 マイナリ提案の可能性
CPN−MLのマイナリさんが、毛沢東主義者の大同団結を訴えている。
毛沢東主義そのものの評価は別として、人民戦争の惨事を止めるには、マオイストに地上に出てきてもらうしか方法がない。UMLは怒るだろうが、現時点での選択肢の一つとして、マイナリ提案は考慮されてよいものだ。
実現は実際上は難しい。が、百戦錬磨のマイナリさんのこと、全く可能性がないわけではない。今後の展開を見守りたい。
020316 桜とシャクナゲ、そして肖像権
長崎では今日、南面の桜が満開になった。ネパールのシャクナゲは? 20日から訪ネだが、全山深紅に染める、あの見事なシャクナゲ林を見に行けるだろうか?
村がダメなら街だが、兵隊さんを撮る勇気はない。となると、街の人々。
ここで例の肖像権(No.2368)が問題になる。困った。タイミングよく『知っておきたい情報モラル』(岩波アクティブ新書)が出版され、その中に「スナップ写真の被写体の権利?」「街頭風景の中での肖像権」があるが、肝心の情報強者対情報弱者の問題には何ら答えてくれない。
先進国による途上国の知的搾取(たとえば動植物・人間の遺伝子搾取など)は、既に問題にされているが、つぎは誰でも直接的加害者になりうる人格権搾取が問題になりそうな気がする。
まぁ、すぐ答えが出る問題ではないから、カトマンズをぶらつきながら、ボチボチ考えてみることにします。
020305 ネパール人の肖像権?
ネパールの人々の肖像権について、どう考えたらよいのでしょうか?
ネパールに行くたびに街や村で写真を撮り、その中には顔が識別できるものも少なくありません。使用目的への同意はとっていません。そのような写真の場合、どう扱うか?
(1)自分のアルバムに貼る
(2)自分の知人に見せる
(3)集会で展示する
(4)写真展で展示
(5)チラシ、出版物に印刷
(6)インターネットHPに掲載
(1)(2)は問題ないとして、(3)〜(6)については、写された人の肖像権、人格権の侵害になる可能性が高いような気がします。
私自身いつも悩んでおり、ほかにもきっと同じ思いの人が多いと思います。どう考えたらよいか、ご存じの方、お教えください。
020223 外人部隊参加か?
藤本さんの危惧されるとおり(NO.2342)、これ以上事態が悪化すれば、アメリカ介入の恐れがあるが、直接介入は最後で、まずはインドを介してでしょう。もちろん、もうすでにインドには介入圧力をかけているでしょうが、報道を見る限り、インドは表面的にはあまり動いていない様子。ネパールに決定的な影響力を持つインドが、どうして積極的に動かないのか?
業を煮やしてアメリカが直接介入すると、大変。正戦イデオロギーと大量の近代兵器をネパールに持ち込めば、何が起こるか? すでに、マオイスト軍への外人部隊参加の証言あり。ここにアメリカが介入すると・・・・。
こんな事態にまでして、国王や議会政党やマオイストは何を得ようとしているのでしょう。輝かしいネパール・ナショナリズムはどこへ行ったのでしょうか? 誰かが、何らかの理由で「危機」そのものを欲しているとしか思えません。
020222 32警官殺害、5市民焼殺
<本当に気が滅入る。一体これからどうなるのだろう・・・・。>
●21日深夜−22日早朝、サルヤン郡でマオイスト攻撃により、32人以上の警官が死亡。非常事態宣言延長への報復か?
●チトワンでは22日早朝、カトマンズに向かっていたトラックが火炎ビン攻撃を受け、大人4人、子供1人が焼死。警察はマオイストの仕業と説明しているが、やや不審。
以上、新聞報道で未確認だが、最近は報道規制も出来ない(隠しきれない)ほど錯綜しているらしく、皮肉にも記事の信憑性はかなり高いようだ。
020221 非常事態宣言、延長か?
今日午後、非常事態宣言(26日で期限切れ)の3か月延長が採決されることになっているが、もう結果は出たのだろうか?
現状では、政府にとって非常事態宣言の延長は不可欠と思われるが、延長には議会での3分の2の多数による可決が必要。ネパール政治の悪い癖で、どうもすんなり行きそうにない。
議会政治家にとって、マオイスト問題は、これだけ大量の犠牲者を出しているのに、自分たちのパワーゲームの駒の1つ、取引材料の1つにすぎない。
コングレス党内では、スシル・コイララ書記長が、マオイスト問題を材料にデウバ首相の引き下ろしを画策しているらしい。
UMLは、延長賛成とあからさまに言うのはまずいので、欠席することで、反対の振りをして、実際には延長を実現する(出席議員の3分の2で可決)という高等戦術を使うかもしれない。これは責任逃れであり、本当にこの戦術を使えば、UMLの信用はがた落ちだ。
左派3政党、NPWP, NPF, UPFはもちろん大反対。というわけで、延長実現の可能性が高いが、実際にどうなるかは予断を許さない。
ここでまた不思議なのだが、マオイストも、本音では非常事態宣言の継続を望んでいるらしい。むろん表向きはケシカランということで、22−23日にはバンダをやる。いや、バンダをやって「それ見ろ、非常事態宣言は必要だ」と議会を説得するつもりかもしれない。
いずれにせよ、バンダの22−23日、非常事態宣言延長の26日頃は特に用心が肝要だろう。
020218 「敵国」としての日本
危惧していたとおり(No.2271「人民戦争開戦記念日」)、マオイストは16−17日、開戦記念大攻撃を敢行した。死者約130人。昨年11月下旬以降、マオイスト側もかなり消耗しているので、当面、これ以上の急拡大はないだろうが、十分な注意が必要だ。
余計なことかもしれないが、人民戦争は「戦争」であり、マオイストからすれば、広義では日本は「交戦国」、日本人は「敵国人」である。
日本人も個人としては善意の人であり、幸い、これまで日本人が直接攻撃目標にされたことはないが、一方、日本は「対テロ・グローバル戦争」に参戦し、インド洋に軍艦を派遣している。
マオイストは、某ルポの言うように「無知」ではなく、日本がアメリカの同盟国であり、「帝国主義戦争」に名実ともに加担していることをよく知っている。国際法上許されるかどうか疑問だが、少なくともマオイスト側からすれば、「反帝国主義戦争」の敵国日本を攻撃する理由はあるということになる。その意味では、日本はマオイスト人民戦争に既に参戦しているのだ。
これは、必ずしも全く根拠がないわけではない。下記の「外務報道官談話」読めば、そうとられても仕方ないと、ある程度納得されるだろう。
この談話の是非は、それ自体として議論されるべき問題である。談話は抑制された論調だし、暴力非難、憲法順守、平和的解決は一般論としては正しい。日本政府が正統政府の政策を支持するのは、よほどのことがない限り、外交上、当然だともいえる。
しかし、それはそれとして、ネパールに関わる日本人は、日本が「対テロ戦争」に参戦し、このような「談話」をだしていること、したがってマオイスト側からは「敵国人」と見られる可能性があることを忘れてはならないと思う。
<外務報道官談話>
ネパール王国における最近の情勢について
平成13年11月29日
ネパール王国において、政府とマオイストとの間で対話により同国が直面する問題を解決する努力がなされていたにもかかわらず、今般、マオイストにより武装闘争が再開されたことは極めて遺憾であり、一連の襲撃・爆弾事件を非難する。
わが国は、ネパール政府が憲法の定める枠組みに従って行う努力を支持し、すみやかに平和的解決に至ることを強く期待する。
020214 「転向」上申書、あるいはネパール版「踏み絵」
報道によれば、マオイストあるいはシンパは、「転向」上申書に住所、氏名、活動歴等々を記入し、5ルピーの収入印紙を貼り、郡役所長官に提出することになったそうだ。
外国人免除と書いてないので、外国人は入国時に提出するのかな? それとも、入国ゲートに「踏み絵」が置いてあるのかな?
ネパールは発想豊かな国だ。このユニークな「踏み絵」のおかげで、村人も日夜、思想的に鍛えられることだろう。
020207 Re: ネパール現地滞在のボランティア
タジマさん、こんにちは。ボランティアについて、私は次のように考えています。参考意見の1つとしてお読みいただければ幸いです。
ボランティアを始めるにあたって、決死の覚悟や特別の専門知識は必ずしも必要ではありません。たまたまネパールに目が向き、そこで何かできるのではないか−−そのようなことであっても、それは立派な尊敬に値する態度です。万事、初発の動機はほとんど偶然(気まぐれ)。
計画し、準備万端整えてからやろうとするのは、畳の上の水練、何も始まりません。ボランティアはそんなものではない。まず気まぐれの善意で、気楽に始める。そして、行動しながら、試行錯誤、よりよい活動を考える。
「気まぐれ」ボランティアが迷惑であれば、アプローチされた機関や団体は「ダメ」と断れば済むこと。「ダメ」くらいは言ってもよいでしょう。政府機関もボランティア団体も、結局は、広範な善意の「気まぐれ」大衆に支えられているはずです。
もちろん、ボランティアとして他者に関わることには様々な危険が伴います。強制ではなく、まさにvoluntary(自分の意志)で始めることだから、結果に対する全責任は自分にある。この厳しい責任倫理は忘れられてはならないと思います。
ネパールは異文化であり、困難、失敗は多々あるでしょう。でも、あまり悲壮がらず、軽やかなフットワークで、まず可能な限り情報を集め、出来そうなことから始めてみてください。試行錯誤の中から、きっとそれぞれの人に相応しい活動が見つかる。全身全霊を傾けたボランティア人生もよいし、責任を限定したお気軽パートタイマー・ボランティアもよい。どちらも立派なボランティアだ。
ボランティアに決定版大理論なんてものはない。活動実践を踏まえて、一人一人が自由に決めればよいのだと思います。
*NGO情報は、「国際協力プラザ」にもあります。NGO情報CD2枚組、無料配布。
020131b ネパールの反骨:「反テロ戦争」加担批判
ネパリタイムズの社説が、パウエル国務長官の訪ネを痛烈に皮肉っている。
ネパールがアメリカ主導の「反テロ戦争」に加担すれば、大国の援助が期待でき、楽になるように思える。が、それは錯覚であり、マオイスト問題の解決にはならない。外国介入の口実を与えれば、次のアフガンだ。
ネパールは200年にわたり西側の忠実な味方であり、グルカ兵はアフガンで戦い、2度の世界大戦では10万人(人口の2%)の戦死者を出した。にもかかわらず、大英戦争博物館にあるのは、1本のククリだけ。
日本とドイツは、グルカ兵が戦い撃破したかつての敵国。ところが、いまやこの2国はネパール最大の援助国。イギリスとアメリカはいま何をしてくれているのか?
「パウエルさん、ネパールはこれまでいつも西側に味方し支援してきました。いまネパールは民主主義の危機にあります。いまこそ、西側はネパールの人民の側に立ち援助すべきではないでしょうか。軍備強化や権威主義助長ではなく、インフラ、交易、観光のためのマーシャル・プラン的経済援助によって。」
020131a そこに山があるから・・・・
藤本さんが憂慮されるとおり、観光地はどこも閑古鳥が鳴く有様らしい。ところが、ネパリタイムズによると、トレッキングだけは例外だ。ナムチェへの来訪者は2万2千人で、3千人減ですんだ。
エベレスト付近は、200人の戦死者を出したサレリのすぐそば。それでも、外国人(主に日本人)は、何事もなかったかのように、続々とやってきてトレッキングを楽しんでいる。非常事態、夜間外出禁止令をものともせず、パトロール兵よりも早起きし、山に登りはじめる。中には、ご来光を仰ぎに出て、歩哨に撃たれかけた者もいるそうだ。
そこに山があるから・・・・。山男は勇敢だ。
020122 人民戦争開戦記念日
2月13日は、人民戦争開戦6周年記念日。昨年11月に、めでたく「人民政府」「人民議会(評議会)」「人民解放軍」の3点セットがそろったことだし、記念日を盛り上げるために何かを起こすかもしれない。
人民軍のT参謀(司令官?)は、スゴイ経歴で、これは本物。しかし実力者には違いないが、プラチャンダ氏やバッタライ氏が失脚したとは思えない。むしろ、これでネパール政治の黄金の三角関係がマオイスト内にも確立したということではないかと思う。
(プラチャンダ党議長)−(バッタライ人民評議会議長)−(T軍参謀)
いずれにせよ、開戦記念日終了までは用心した方がよいだろう。
020121 Re: 究極の選択
アユミさんの健筆復活! ボードがますます楽しみです。今年も辛口批評をお願いします。
ところで、ネパールの「いい加減さ」は歴史の英知。アメリカにそそのかされ「テロ」認定なんかするから、じゃ「絶滅せよ」と脅される。でも、最近の容疑者の多くは真正Mではないらしい。敵か味方か、などと近代的な「究極の選択」を迫るから、「どちらでもない」という前近代的な「いい加減な」人が血祭りに上げられる。
しかし、近代化はネパール自身の望み。いい「加減」を断念し、敵抹殺の血みどろの道をこの国も進むのだろうか?
新年早々、縁起でもないが、アユミさんのアジについ乗せられてしまった。反省・・・・。