ネパール評論 2005年11月
→ ネパール研究会 谷川研究室
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2005/11/30 |
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末世の「釈迦の化身」出現 |
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谷川昌幸 メチャ面白い「ネパールの空の下」(11/29)を読むと，権威あるロイターのニュース配信の裏舞台がのぞけ，興味深い。ネパール語も読めない私には，こんな面白い記事は書けないが，ロイターの「釈迦の化身」出現報道は，文化的に見て興味深く，大いに食指をそそる。 Reuters UKの記事によると，１５歳の少年ラム・バハドール・バムジョン（母はマヤ・デビ）が，バラ郡の密林の菩提樹（pipal）の下で，食物も水もとらず半年にわたって座禅を組み瞑想している。人々は，彼を「釈迦の化身（incarnation
of Buddha）」とあがめ，多いときは１日１万人もの人々が彼の瞑想地を訪れるようになった。これに対し，バラ郡の長官は，王立科学技術アカデミーなどの権威ある機関に，この不思議な現象の科学的調査を依頼した。 以上が，ロイター記事の概要であり，これはこれでなかなか面白いが，残念なことに，肝心の文化的考察が欠落している。 第一に，そもそも化身するのはヒンズーの神々であり，釈迦は，本来，化身はせず，成仏すれば，それで終わりである。ヒンズー教が勝手にお釈迦様をビシュヌ神の何番目かの化身にしている（ヒンズー教の中に取り込んでいる）にすぎない。 仏教は，本来，化身もカーストも認めない。だからこそ，ヒンズー教社会は，取り込みに応じなかった原理派仏教を弾圧し，衰退させたのだ。 第二に，ロイターはそれほどでもないが，他のニュースやブログは，「釈迦化身」出現を非文明社会の迷信とバカにし，国王政府の科学的調査を笑いものにしているが，事柄の本質を見ないのは，むしろ彼らの方だ。 ネパールは，ビシュヌ神の化身たる国王を戴く世界唯一のヒンズー教国だ。そこに，ビシュヌ神の化身ではなく，「釈迦の化身」が現れ，何万もの人々がそのもとを訪れ始めた。政府が警戒するのは当たり前だ。 ビシュヌ神の化身＝国王としては，出現した「釈迦の化身」を徹底的に調査し，これがニセモノであり，民の苦境を救う救済者ではないことを科学的に証明しなければならない。それは，ヒンズー教国家体制の維持にとって，絶対に必要なことであり，真面目な政治的行為である。 もしそれを笑うなら，その前に，天皇の科学的批判も出来ない日本人や，聖書に手を置き宣誓するアメリカの大統領と国民を，笑いものにすべきだ。 第三に，この種の救済者，預言者の出現は，世の中が末世（終末）情況になった証拠だ。 以前，山形に住んでいたとき，即身成仏の実物を何体か見た。民衆の苦しみを救うため，自ら食を断ち，祈り，そのまま成仏する。ネパールの「釈迦化身」の先達であり，この日本にたしかに出現し，その即身成仏（仏となった身体）は寺院に安置され，いまでも多くの人々の信仰を集めている。このような想像を絶する苦行に耐えた民衆の救済者たちを見ると，当時の東北の人々の生活がいかに苦しかったかが，よく分かる。そして，その民衆の苦しみをわが身に引き受け，食を断ち，成仏した人々をバカにしたり，即身成仏への信仰を迷信として笑いものにするのが，いかに軽薄で許し難い行為であるかも，よく分かる。キリストも，結局，彼らと同じことをしたのではなかったか？ 「釈迦の化身」が，いわゆる「迷信」であることは，国王政府は，識者にいわれなくても，先刻承知だ。そして，「釈迦の化身」に手を合わせる民衆も，おそらく内心では，そんなことは気づいているはずだ。 「釈迦の化身」の正体を知りつつ，その身代わり受難に手を合わせる庶民と，庶民がそうしていることを知っている国王政府。その上で，政府は，庶民に「知らないふり」をさせないため，「釈迦化身」の正体を科学的に暴き，知らないふり信仰による末世感情の拡大とそれの反体制運動への転化を未然に防止せざるを得ないのだ。 ――これは，結局，ビシュヌ化身（国王）と釈迦化身との闘争，つまり神と神の闘争であり，あだやおろそかにしてはならない事柄だ。しかも，科学的にいえば，もし釈迦化身がニセモノと分かれば，当然，ビシュヌ化身もニセモノとなる。そんな危なく恐ろしいことを国王政府は科学者の手を借りてやらざるを得ない情況になっている。世は，いよいよ末世，終末の時を迎えつつあるのだろうか？ ＊宗教は専門外。解釈に誤りがあれば，ご指摘下さい。また，ラム少年が本気で「釈迦化身」を志しているかも不明。上記は，本気と仮定しての議論です。 （「ネパールの空の下」１１月２９日；, Gopal
Sharma, "Nepal to probe mystery 'Bhddha'
boy," Reuters UK, Nov27) |
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2005/11/29 |
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検閲拒否，ＢＢＣよりブルームバーグか？ |
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谷川昌幸 ＢＢＣが国王検閲に怒っている。ＢＢＣ中継をプラチャンダ・インタビューの前後１２時間にわたって中断した国営ラジオ・ネパールは，理由を問われ，「純粋に技術的な故障」と答えた。誇り高きＢＢＣが，こんなとぼけた説明を受け入れるのか？ 実は，ＢＢＣは国王検閲を容認してきたらしい。ＫＯＬによれば，「政府は，２月１日以降，BBC World ServiceのＦＭ中継を継続的に妨害してきた」という。検閲容認だ。 しかし，これは原理的問題だ。もしＢＢＣがネパールで検閲を受け入れるなら，ＢＢＣ情報一般が，検閲後情報と見られるし，そう見るべきだ。そんな報道は信用できない。 一方，ブルームバーグといえば，米国資本主義の中枢に位置し，社主がニューヨーク市長をやっている。そのブルームバーグが国王検閲に敏感に反応した。さすが，敵ながらあっぱれ。 「叛徒たちは和平国際仲介を歓迎し，自由・公正選挙に向け努力する，とプラチャンダは語った。」 国王政府やNCの言い分も伝えてはいるが，どうみても，マオイストにかなり好意的だ。「自由・公正選挙」を約束したのだから，やらせたらいいではないか――そういっているようにも読める。 検閲を甘受しかねないＢＢＣよりも，資本原理主義のブルームバーグの方がしっかりしているように見える。 (BBC News,
"Nepal radio shut over BBC report," Nov28; KOL,
"BBC seeks clarification," Nov29; Bloomberg, "Nepal Radio
Station Raided Before Rebel Leader's Broadcast," Nov.28.) |
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2005/11/28 |
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andolan and/or revolution |
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谷川昌幸 ネパール情勢が気になったので，「ネパールの空の下」を見たら，ウプレティ会長は「革命」の用語は使用されなかったそうだ。 たしかに，先のマーカンタイルの記事は，少々，変だった。「ラジオ・サガルマータは，この運動の前衛であった」。そして，上記の「われらのラジオ革命」。 「前衛」「革命」などという，物騒なマルクス主義用語をここであえて使う必要はない。変だとは感じていた。ウ会長の発言は，正確にはandolanだという。これだから，「事実」の報道は難しい。 ところで，「革命」訳は勇み足としても，この深読みには輝かしい伝統がある。そう，あの１９９０年革命。９０年の「民主化運動」は意図的か否かは分からないが，「民主化革命」として喧伝された。andolan（煽動，騒動，活動，運動）を「革命」と見たい，「革命」にしたいと願う人々が，revolutionと訳したのだ。 文章も行為も，生み出されたとたん，独自の存在となり，author（創始者，著者，制作者）を裏切り始めるものかもしれない。 |
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放送弾圧，ＢＢＣ＝サガルマータＦＭ放送停止 |
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谷川昌幸 １１月２７日午後９時１５分頃，警官数十名がサガルマータFM局を襲撃，放送機器を差し押さえ，局員５人を拘束した。 サ局は，ＢＢＣを中継していた。ＢＢＣはこの日，プラチャンダ議長の初のラジオ・インタビューを放送する予定であり，その中では７政党との合意についても言及されるはずであった。この部分は危険なので，サ局は中継を中断し音楽を流した。それでも，警察に攻撃され，放送停止となってしまった。サ局以外にも，７局がＢＢＣ中継を禁止された。 サガルマータFM局のラキシマン・ウプレティ会長は，「ネパールは，FMラジオ情報の南アジアにおける先駆者であり，ラジオ・サガルマータはその前衛だ。政府の行為は，われわれのラジオ革命の心意気に刃を突きつけるものだ」と述べ，国王政府を激しく非難した。 ウプレティ会長―― わが「ネパール評論」（ブログ＆HP）は，まだ微力ながら，この言論弾圧については，ウプレテイ会長を全面的に支持する。そして，他のネパール関係者にも，国王政府の言論弾圧への抗議と，ウ会長支持をアピールしたい。 それにしても，国王政府は，常軌を逸している。英米の選挙民主主義の核心は，言論・表現の自由だ。それを真っ向から，しかもあろうことかＢＢＣを攻撃するとは！ これで，アメリカも，国王を見限る決心がついたのではないか？ (Nepalnews.com,
"Radio Sagarmatha goes off air, four journors still in custody," "Raid on Sagarmatha condemned, |
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2005/11/27 |
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中国－国王－米国，危険なパワーゲーム |
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谷川昌幸 前国軍総司令官のSS・ラナ枢密院常任議員が１１月２６日，国王に対し，「中国と手を組み」，インドと対決せよ，と要求した。 これに対し，MK・ネパールUML書記長は１１月２７日，７政党とマオイストとの第２回会談を開き，「１２項目合意」の実施に向け交渉すると発表した。R・ポウデルNC書記長も「１２項目合意」の実施準備が地方で進捗していると表明した。
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2005/11/26 |
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軍事援助，中国から |
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谷川昌幸 中国が国王に７千２百万ルピー相当の軍事援助を実施した。１１月２２，２３日，トラック１８台分をタトパニ経由で搬入した。グルン軍報道官によると，Non lethal military hardware だというが，これはまるでなぞなぞ。イラク派遣自衛隊は「軍隊」ではない，というのと同じくらい難解だ。
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2005/11/25 |
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国王パニック？ 国連介入か |
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谷川昌幸 アナン国連事務総長が１１月２３日，７政党＝マオイスト「１２項目合意」を歓迎し，「マオイストが一方的停戦を１２月以降も継続し人権を遵守するよう強く要望し，・・・また，ギャネンドラ国王政府も停戦宣言で対応するよう要求した」。 このアナン総長の介入は，もし米英印の同意があれば，実効的なものとなり，国王専制は終わる。まさか，中国やロシアが，表立って反対することはあるまい。 「国王はパニックに陥っている」というＡＦＰの表現はオーバーだろうが，形勢不利は歴然としている。「ネパールの空の下」(11/23)が示唆するように，亡命もありうるか？ 亡命先は，日本？ 身元引受人は日本ネパール協会？ ("UN
Chief welcome pact between Nepal parties, Maoists," AFP,
Nov24, 2005) |
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2005/11/24 |
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ブッシュ大統領への公開書簡，在米ネパール人組織 |
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谷川昌幸 在米ネパール人組織が，ブッシュ大統領に，国王の「勇敢な正義の行動」への支持を訴える公開書簡を出した。形勢悪化への悲鳴とも，深読みすれば国王専制風刺ともとれる，怪文書だ。 国王政府の選挙管理委員会は，２月８日を投票日に定め，すでに７２政党が登録した。国政選挙も予告している。 これに対し，これまでの政党政治は極度の腐敗，無能，不安定であった。そのためテロが拡大し，「国全体が失敗国家に向かい，国際テロの根城となりつつあった」。だから，「国王には非常事態宣言以外の選択肢は絶対になかった」。 「われわれの言うことを信じていただきたい。もし国王が失敗したら，ネパールは次のカンボジアになる。ネパールのポルポトたちは，８００万人，つまりネパール人の三分の一を虐殺するだろう。」 いま，政党支持は５％以下，マオイスト支持は１１％。これに対し，国王支持は，８３％。それなのに，国連や米英などが国王の行動を非難する動きを見せるのは，公正ではない。その一方，サウジ，クウェート，カタール，ブータンなどの国王専制や人権侵害を容認しているではないか。なぜダブルスタンダードで，ネパール国王のやむにやまれぬ一時的緊急措置を非難するのか。 人権の前に，生命を守るための平和の回復が必要だ。中国はテロリスト支援を断固拒否したのに，インドはテロリストを支援してきた。これはネパールでは公然の秘密だ。英米はインドを支持すべきではない。テロと戦っている国王に軍事援助を続けて欲しい。 ザッと読むと，大体このようなアピールだ。怪しげな数字，日付も署名もない。国王全面支持のアピールだが，単純すぎて，裏の意味を推理したくさえなる。これは，国王専制を非難し，万が一，ブッシュ大統領が国王支持を続ければ，世界の笑いものになる，という皮肉ではないのか？ 本気か風刺か？ 一読に値する怪文書だ。 ("Letter
to President Bush from Nepalese Community," News Blaze, Nov20, 2005) |
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2005/11/23 |
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代理戦争の気配？ |
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谷川昌幸 「１２項目合意」に驚いていたら，国王政府側はさっそく中国の援助を勝ち取った。ＫＯＬ(11/23)によれば，中国は100品目以上のネパール製品の輸入関税を撤廃するという。 この数年，ネパールには行っていないが，おそらく中国製品の洪水であろう。（中国の対ネ輸出109億ルピー，ネパールからの輸入24億ルピー） 中国製品がネパールに入れば，当然，インドにも流出する。ネパールには対中赤字がたまるので，中国は関税撤廃でネパール製品をを輸入してネパールの赤字を埋めようというのだ。うまくやれば，中国もネパールも損はしない。困るのはインドだけ。 中国は，チベット鉄道を建設し，北からの経済的・軍事的な圧力を強めている。インドも経済成長は著しい。この中印両国がネパールで衝突すれば，その巨大な圧力で軋轢はヒマラヤのように異様に隆起するだろう。 「中印の緩衝地帯」がネパールの伝統的な政治的英知であった。現代版代理戦争に引き込まれないことを願うのみだ。 (Milan Mani
Sharma, "Nepal seeks duty free marcket access
to China," KOL, Nov23, 2005) |
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マオイストと７党，12項目合意 |
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谷川昌幸 ７政党とマオイストが１１月２２日，「１２項目合意」に達した。 (1)画期的な12項目合意 「合意」は，解散議会を復活し，全党政府を組織してマオイストと協議し，憲法制定会議を開催することを要求している。 さらに「合意」は憲法制定会議選挙の期間中，人民解放軍と王国軍を国連または国際組織の監視下に置くことも宣言している。 国王政府の予告した都市部選挙やその後の国政選挙は，ボイコットを明言した。 この「合意」は，実行されれば，革命的だ。 第一に，王国軍とマオイスト軍を国連監視下に置くこと。これが出来れば，ネパール平和構築は一気に進むだろう。 次に，国王政府による選挙を完全否定し，７党＝マオイストが選挙を実施し，民定憲法を制定するとしたこと。これまでのネパール憲法は，すべて欽定憲法だった。（谷川「ネパール憲政史研究」参照） もし民定憲法となれば，たとえ王制が残ったとしても，人民主権が原理的に確立し，王位は人民の意思の下に置かれることになる。 この「和解」は，１１月２０日の記事（軍と国王の引き離し示唆か，米上院議員）で紹介したリーハイ上院議員の議会発言とも符合しており，米政府も認めている可能性がある。もしそうだとすると，米国はついに国王を切り捨てたことになる。 (2)合意の問題点 第一に，天敵のコングレス（ＮＣ）とマオイストが真に和解できるとは考えられない。 第二に，解散議会の復活（NCの要求）は，旧特権議員の復活であり，かつての統治無能力・利権あさり議会の再開となる恐れ大だ。 第三に，マオイスト活動家にとって，停戦・和平合意は特権的指導者層（上位カーストでもある）の裏切りであり，もし人民解放軍の国軍への編入（国軍就職）でも保障されないかぎり，彼らが「合意」に従うとは思えない。 第四に，７党とマオイストの合意は，原理的には野合であって，明確な意思統一はそもそも無理であり，国王が常套手段の「分割支配」工作をすれば，簡単に瓦解する可能性がある。 (3)合意の成否 次善の和平は，国王が情勢を見極めて大幅に譲歩し，７党＝マオイストもそれに応じ，１９９０年憲法体制＝立憲君主制に立ち戻ることだ。これは，可能性大だ。ただし，この解決は，暫定的であり，和平実現の猶予期間中に，グローバル化の矛盾の緩和・救済に本格的に取り組まないと，平和は再び崩れ，内戦再発となるだろう。 カギを握るのは，米英と国連，そしてインドであろう。この絶好の和平チャンスに，米英や国連がどこまで積極的に介入するか？ 中国，ロシア，そして多分インド（インドの立場は微妙）が，それにどこまで抵抗するか？ 注目していたい。 (4)何もしない日本？ (KOL, Nov22, 2005) --------------------------- Letter of
Understanding (Unofficial translation) The long struggle between absolute
monarchy and democracy in Nepal has now reached a very grave and new turn.
Establishing peace by resolving the 10-year old armed conflict through a
forward-looking political outlet has become the need of today. Therefore,
implementing the concept of absolute democracy through a forward-looking
restructuring of the state has become an inevitable need to solve the
problems related to class, caste, gender, region etc of all sectors including
political, economic, social and cultural, bringing autocratic monarchy to an
end and establishing absolute democracy. We make public that, against this
existing backdrop and reference in the country, the following understanding
has been reached between the seven parliamentary parties and the CPN (Maoist) through different methods of talks. Points of Understanding 1. Today,
democracy, peace, prosperity, social advancement and a free and sovereign
Nepal is the chief wish of all Nepalese. We completely agree that autocratic
monarchy is the main hurdle in (realising) this. It
is our clear view that without establishing absolute democracy by ending
autocratic monarchy, there is no possibility of peace, progress and
prosperity in the country. Therefore, an understanding has been reached to
establish absolute democracy by ending autocratic monarchy, with all forces
against the autocratic monarchy centralizing their assault against autocratic
monarchy from their respective positions, thereby creating a nationwide storm
of democratic protests. 2. The seven
agitating parties are fully committed to the fact that only by establishing
absolute democracy through the restoration of the Parliament with the force
of agitation, forming an all-party government with complete authority,
holding elections to a constituent assembly through dialogue and
understanding with the Maoists, can the existing conflict in the country be
resolved and sovereignty and state power completely transferred to the
people. It is the view and commitment of the CPN
(Maoist) that the above mentioned goal can be achieved by holding a national
political conference of the agitating democratic forces, and through its
decision, forming an interim government to hold constituent assembly
elections. An understanding has been reached between the agitating seven
parties and the CPN (Maoist) to continue dialogue
on this procedural work-list and find a common understanding. It has been
agreed that the force of people's movement is the only alternative to achieve
this. 3. Today, the
country has demanded the establishment of permanent peace along with a
positive solution to the armed conflict. Therefore, we are committed to
ending autocratic monarchy and the existing armed conflict, and establishing
permanent peace in the country through constituent assembly elections and
forward-looking political outlet. The CPN (Maoist)
expresses its commitment to move along the new peaceful political stream
through this process. In this very context, an understanding has been reached
to keep, during the holding of constituent assembly elections after ending
autocratic monarchy, the armed Maoist force and the royal army under the
supervision of the United Nations or any other reliable international
supervision, to conclude the elections in a free and fair manner and accept
the result of the elections. We expect reliable international mediation even
during the dialogue process. 4. Expressing
clearly and making public institutional commitment to the democratic norms
and values like the competitive multiparty system of governance, civil
liberties, human rights, the concept of the rule of law, fundamental rights
etc, the CPN (Maoist) has expressed commitment to
move forward its activities accordingly. 5. The CPN (Maoist) has expressed its commitment to create an
environment allowing the political activists of other democratic parties
displaced during the course of the armed conflict to return to their former
localities and live there with dignity, return their home, land and property
seized in an unjust manner and carry out their activities without let or
hindrance. 6. Undertaking self
criticism and self evaluation of past mistakes, the CPN
(Maoist) has expressed commitment not to repeat such mistakes in future. 7. The seven political
parties, undertaking self evaluation, have expressed commitment not to repeat
the mistakes of the past which were committed while in parliament and in
government. 8. In the context of
moving the peace process forward, commitment has been expressed to fully
respect the norms and values of human rights and press freedom and move ahead
accordingly. 9. As the announcement of
municipal polls pushed forward with the ill-motive of deluding the people and
the international community and giving continuity to the autocratic and
illegitimate rule of the King, and the talk of elections to Parliament are a
crafty ploy, we announce to actively boycott them and call upon the general
public to make such elections a failure. 10. The people and their
representative political parties are the real guardians of nationality.
Therefore, we are firmly committed to protecting the independence,
sovereignty, geographical integrity of the country and national unity. Based
on the principle of peaceful co-existence, it is our common obligation to
maintain friendly relations with all countries of the world and good-neighbour relationship with neighbouring
countries, especially India and China. But we request the patriotic masses to
be cautious against the false attempt by the King and (his) loyalists to
prolong his autocratic and illegitimate rule and delude the patriotic people
by projecting the illusory "Mandale"
nationalism and questioning the patriotism of the political parties, and
appeal to the international powers and the people to support, in every
possible way, the democratic movement against autocratic monarchy in Nepal. 11. We call upon the
civil society, professional organizations, various wings of parties, people
of all communities and regions, press and intellectuals to actively
participate in the peaceful movement launched on the basis of these
understandings centered on democracy, peace, prosperity, forward-looking
social change and the country's independence, sovereignty, and pride. 12. Regarding the
inappropriate conducts that took place between the parties in the past, a
common commitment has been expressed to investigate any objection raised by
any party over such incidents, take action if found guilty, and to make the
action public. An understanding has been reached to settle any problem
emerging between the parties through peaceful dialogue at the concerned level
or at the leadership level. Nepali Original समझदारी-पत्र नेपालमा लामो समयदेखि चल्दै
आएको निरंकुश राजतन्त्र र लोकतन्त्र ९म्झयअचबअथ० बीचको संघर्ष
आज अत्यन्तै गम्भीर र नयाँ मोेेेेडमा पुगेको छ । विगत दश वर्षदेखि जारी सशस्त्र द्वन्द्वको
अग्रगामी राजनीतिक निकासद्वारा समाधान गर्दै शान्ति स्थापना गर्न आजको
आवश्यकता भएको छ । त्यसैले निरंकुश राजतन्त्रको अन्त्य गरी पूर्ण लोकतन्त्र स्थापना
गर्दै राजनीतिक, आर्थिक, सामाजिक, सांस्कृतिक सबै क्षेत्रका वर्गीय, जातीय, लिंगीय, क्षेत्रीय आदि समस्याहरुको
समाधान गर्न राज्यको अग्रगामी पुनर्संरचना गर्दै पूर्ण लोकतन्त्रको अवधारणालाई
कार्यान्वयन गर्न अपरिहार्य आवश्यकता भएको छ । देशमा विद्यमान उक्त परिप्रेक्ष्य
र सन्दर्भमा संसदभित्रका सात राजनीतिक दलहरु र ने.क.पा.-माओवादी) बीच विभिन्न ढंगलेेेे वार्ता भई निम्न प्रकार समझदारी
भएको कुरा सार्वजनिक गर्दछौं । समझदारी भएका बुँदाहरु १. आज देशमा लोकतन्त्र, शान्ति, समृद्धि, सामाजिक अग्रगमन तथा स्वतन्त्र सार्वभौम नेपाल
आम नेपाली जनताको प्रमुख चाहना हो । त्यसका निम्ति प्रमुख बाधक निरंकुश राजतन्त्र
हो भन्ने कुरामा हामी पूर्ण सहमत छौं । निरंकुश राजतन्त्र अन्त्य गरेर पूर्ण लोकतन्त्र
स्थापना नगरेसम्म देशमा शान्ति, प्रगति र समृद्धि सम्भव छैन भन्ने हाम्रो
स्पष्ट धारणा छ । त्यसैले निरंकुश राजतन्त्रविरोधी सम्पूर्ण शक्तिहरुले निरंकुश राजतन्त्रका
विरुद्ध आ-आफ्ना ठाउँबाट प्रहार केन्दि्रत गर्दै देशव्यापी लोकतान्त्रिक
आन्दोलनको आँधीबेहरी निर्माण गरेर निरंकुश राजतन्त्रलाई अन्त्य गरी पूर्ण लोकतन्त्र
स्थापना गर्ने समझदारी भएको छ । २. आन्दोलनको शक्तिले संसद्को पुनस्र्थापन गर्ने र त्यसको
निर्णयले अधिकार सम्पन्न सर्वदलीय सरकार, माओवादीसंग वार्ता र सहमतिका
आधारमा संविधानसभाको निर्वाचन गरी पूर्ण लोकतन्त्र स्थापना गरेर नै देशमा विद्यमान
द्वन्द्वको समाधान गर्न सकिन्छ र सार्वभौमसत्ता र राजकीय सत्ता पूर्णरुपले
जनतामा स्थापित गर्न सकिन्छ भन्ने कुरामा आन्दोलनरत
सात राजनीतिक दलहरु पूर्ण प्रतिबद्ध छन् । आन्दोलनरत लोकतान्त्रिक शक्तिहरुको
राष्ट्रिय राजनीतिक सम्मेलन गर्ने र त्यसको निर्णयले अन्तरिम सरकार बनाई संविधानसभाको
निर्वाचन गरेर उल्लेखित लक्ष्य हासिल गर्न सकिन्छ भन्ने ने.क.पा.-माओवादी)
को धारणा र प्रतिबद्धता रहेको छ । यो प्रक्रियागत कार्यसूचीको विषयमा आन्दोलनरत
सात राजनीतिक दल र ने.क.पा.-माओवादी) बीचमा सम्वाद चलाउँदै जाने र साझा सहमतिको
खोजी गर्ने समझदारी बनेको छ । उक्त लक्ष्य हासिल गर्न जनआन्दोलनको शक्ति नै एक
मात्र विकल्प हो भन्ने कुरामा समझदारी भएको छ । ३. देशले आज सशस्त्र द्वन्द्वको सकारात्मक समाधानका साथ
स्थायी शान्ति स्थापनाको माग गरेको छ । त्यसैले हामी निरंकुश राजतन्त्रको अन्त्य र उक्त प्रक्रियागत आधारमा आउने
संविधानसभाको निर्वाचन र पूर्ण लोकतन्त्र स्थापनाको अग्रगामी राजनीतिक निकासद्वारा
देशमा विद्यमान सशस्त्र द्वन्द्वको अन्त्य गरी स्थायी शान्ति स्थापना गर्न
दृढ संकल्पित छौं । यस प्रक्रियाद्वारा शान्तिपूर्ण नयाँ राजनैतिक धारमा अघि
बढ्न ने.क.पा.-माओवादी) प्रतिबद्धता व्यक्त गर्दछ । यसै सन्दर्भमा निरंकुश राजतन्त्रको
अन्त्यपछि हुने संविधानसभाको निर्वाचनको क्रममा माओवादी सशस्त्र शक्ति र
शाही सेनालाई संयुक्त राष्ट्रसंघ वा भरपर्दाे अन्तर्राष्ट्रिय सुपरिवेक्षणमा
राख्ने, निर्वाचनलाई स्वतन्त्र र निष्पक्ष ढंगले सम्पन्न गर्ने र निर्वाचनको
परिणामलाई स्वीकार्ने समझदारी भएको छ । वार्ता प्रक्रियामा समेत भरपर्दाे
अन्तर्राष्ट्रिय समुदायको संलग्नतालाई हामी अपेक्षा गर्दछौं । ४. प्रतिस्पर्धात्मक बहुदलीय शासन प्रणाली, नागरिक स्वतन्त्रता, मानवअधिकार, कानुनी राज्यको अवधारणा, मौलिक हक आदि लोकतान्त्रिक
मूल्य मान्यताप्रति ने.क.पा.-माओवादी) ले आफ्नो प्रतिबद्धता प्रस्टताका साथ
संस्थागत ढंगले सार्वजनिक गर्दै तदनुरुप आफ्ना गतिविधिहरु
अघि बढाउने प्रतिबद्धता व्यक्त गरेको छ । ५. ने.क.पा.-माओवादी) ले सशस्त्र द्वन्द्वको क्रममा विस्थापित
हुन पुगेका अन्य लोकतान्त्रिक पार्टीका नेता, कार्यकर्ता र जनतालाई यथास्थानमा
र्फकेर ससम्मान बसोबास गर्ने, उनीहरुको अन्यायपूर्ण तरिकाबाट
कब्जा गरिएका घरजग्गा सम्पत्ति फिर्ता गर्ने र उनीहरुलाई निर्वाध ढंगले राजनैतिक
गतिविधि गर्न पाउने वातावरण तयार गर्ने प्रतिबद्धता व्यक्त गरेको छ । ६. विगतका गल्ती कमजोरीहरुको आत्मसमीक्षा र आत्मआलोचना
गर्दै भविष्यमा गल्ती कमजोरी हुन नदिन ने.क.पा.-माओवादी) ले प्रतिबद्धता व्यक्त गरेको
छ । ७. सात राजनीतिक दलहरुले विगतमा संसद र सरकारमा छँदा भएका
गल्ती कमजोरीप्रति आत्मसमीक्षा गर्दै अब त्यस्ता गल्ती कमजोरी नदोहोर्याउने प्रतिबद्धता व्यक्त भएको छ । ८. शान्ति प्रक्रियालाई अघि बढाउने सन्दर्भमा मानवअधिकारका मूल्यमान्यताहरुलाई पूर्ण
सम्मान गर्ने र तिनका आधारमा अघि बढ्ने तथा प्रेस स्वतन्त्रताको सम्मान गर्ने
कुरा प्रतिबद्धता गरिएको छ । ९. जनता र अन्तर्राष्ट्रिय समुदायलाई भ्रम दिने तथा राजाको
निरंकुश र अवैधानिक शासनलाई वैधानिकता प्रदान गर्ने कुत्सित उद्देश्यका लागि अघि सारिएको नगरपालिकाको निर्वाचनको
घोषणा र संसदको निर्वाचनको चर्चा एउटा कपटपूर्ण चाल भएकाले त्यसलाई आ-आफ्नो ढंगले सक्रिय
बहिष्कार गर्ने घोषणा गर्दै त्यस्तो निर्वाचनलाई असफल बनाउन आम जनतालाई आह्वान
गरिएको छ । १०. जनता र तिनका प्रतिनिधि राजनीतिक दलहरु नै राष्ट्रियताका वास्तविक पहरेदार हुन् ।
त्यसैले देशको स्वाधीनता, सार्वभौमिकता र भौगोलिक अखण्डताको रक्षा र राष्ट्रिय
एकताप्रति हामीहरु पूर्ण रुपले प्रतिबद्ध छौं । शान्तिपूर्ण सहअस्तित्वका
सिद्धान्तका आधारमा संसारका सबै मुलुकहरुसंग मैत्री सम्बन्ध र छिमेकी मुलुकहरु
ख्ाासगरी भारत र चीनसंग असल छिमेकीको सम्बन्ध कायम राख्नु हामी सबैको साझा
कर्तव्य हो । परन्तु आफ्नो निरंकुश र अवैधानिक शासन टिकाउन र देशभक्त जनतालाई भ्रम
दिन राजा र राजावादीहरुले मण्डले राष्ट्रवादको हौवा खडा गर्ने र राजनीतिक दलहरुको
देशभक्तिमाथि प्रश्नचिन्ह खडा गर्ने जुन मित्थ्या प्रयास गरिरहेका छन् त्यसबाट सतर्क
रहन हामी सम्पूर्ण देशभक्त जनसमुदायलाई आग्रह गर्दछौं र अन्तर्राष्ट्रिय शक्तिहरु
र जनसमुदायलाई नेपालको निरंकुश राजतन्त्रविरोधी लोकतान्त्रिक आन्दोलनलाई
हरतरहले साथ दिन अपिल गर्दछौं । ११. लोकतन्त्र शान्ति, समृद्धि, अग्रगामी सामाजिक परिवर्तन
तथा देशको स्वतन्त्रता, सार्वभौमिकता र स्वाभिमानलाई
केन्द्रमा राखेर भएका हाम्रा यी समझदारीका आधारमा संचालित
हुने शान्तिपूर्ण जनआन्दोलनमा सक्रिय सहभागिता जनाई आन्दोलनलाई सफल बनाउन हामी
नागरिक समाज, पेशागत समुदाय, जनवर्गीय संघ-संगठनहरु सबै जाति र क्षेत्रका जनता, पत्रकार जगत, बुद्धिजीवीहरु र आम नेपाली
जनसमुदायमा हार्दिक आह्वान गर्दछौं । १२. विगतमा दलहरुबीच भएका अनुपयुक्त व्यवहारहरुको सन्दर्भमा
दल विशेषले आपत्ति जनाएका र छानविनको माग गरेका घटनाहरुको सम्बन्धमा छानविन गर्ने
र दोषी पाइएमा दोषीलाई कार्वाही गरी सार्वजनिक रुपमा जानकारी गराउने साझा प्रतिबद्धता व्यक्त भएको छ । अब उपरान्त
दलहरुबीच समस्या उत्पन्न भए सम्बन्धित तह वा नेतृत्व तहमा छलफल गरेर सम्वादको
माध्यमबाट समस्याहरुको समाधान गर्ने समझदारी भएको छ । (KOL,
Nov22, 2005) |
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2005/11/22 |
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ネパール（国王）＝中国 vs インド＝日本 |
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谷川昌幸 「ネパールの空の下」(11/21)によれば，SAARCへのオブザーバー参加は，中国はネパールの，日本はインドの提案らしい。
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2005/11/20 |
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軍と国王の引き離し示唆か，米上院議員 |
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谷川昌幸 米上院有力議員パトリック・リーハイ氏が１１月１８日，ついに禁じ手に手をつけた。軍と国王の引き離しの示唆だ。 (1)このままでは，軍は国王か「人民」かの選択を迫られる。 これは，リーハイ議員が提案し可決成立した対ネ軍事援助規制強化修正法との関連での発言だ。そしてまた，これはアメリカ政府が迫られている選択でもある。 このところの情勢を見ると，これは単なる脅しではないと思う。中国とロシアの応援があるとしても，国王は国際情勢を見誤っている。アメリカは，国王がいなくても，ネパールが安定し米印勢力圏にいてくれさえすれば，それでよい。もし国王が不安定要因となれば，取り除くだけだ。アメリカは共和国の総本山だと言うことを忘れてはならない。（アジア君主制総本山の日本は何の力にもならない。） また，軍としても，国王の私兵か共和国軍かの選択を迫られれば，当然，栄光ある共和国軍を選択するはずだ。とくに，中下級軍人は共和国軍の方がはるかによい。 ネパールの実権は，結局，軍が握っている。その軍に合理的計算が出来るか否かに，ネパールの命運はかかっているようだ。 (Tilak P. Pokharel, "Choose
between monarchy and people: Leahy," KOL,
Nov18, 2005) Senator
Patrick Leahy's statement
(KOL, Nov18, 2005) |
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2005/11/19 |
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NGO弾圧にダンマリの日本政府，日ネ協会 |
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谷川昌幸 NGO行動綱領（社会組織および団体の行動綱領2062）についてはすでに批判したが（2005年11月16日付記事），この綱領については，やはり国連も，人権に敏感な諸外国もNGOも声を揃えて撤回要求を始めた。 在ネ国連事務局M・カハネ(Kahane)代表は，女性・子供・福祉大臣への書簡で，「この行動綱領は，NGO規律改善にもNGO活動促進にも役立たない」と批判し，これは国際人権諸法に対する明白な違反だと指摘した。 ネパールのNGO活動に多々問題があることは，周知の事実だ。私腹を肥やすためのNGOビジネスと揶揄されたり，宗教活動の隠れ蓑だったり，およそ健全なNGO活動とは無縁のものが少なくない。この行動綱領も，そうした公益無視の無軌道規制を謳っているが，これは建前と見ざるを得ない。 「第１１条 社会組織および団体は，その活動に対するいかなる二国間，多国間，あるいは他の団体支援を得る場合にあっても，あらかじめ，社会福祉委員会の承認を得なければならない。」 規則は運用でどのようにでもなるが，これらの規定や他の諸規定を全体としてみると，この綱領がNGO活動を完全な国家統制の下におくことを目的としていることは明白だ。したがって，在ネ国連事務局カハネ代表が撤回要求を出し，これに諸外国の政府やNGOが賛同署名をしたのは当然だ。 （賛同署名）イギリス，カナダ，オランダ，フィンランド，オーストラリア，EUの各国政府。US
Mission to Nepal, ドイツGTZ, SNV，スイスSDC，イギリスDFID。FAO，ILO, OCHA。 では，わが日本は・・・・？ 今のところ日本政府も日本ネパール協会も，ダンマリ。何たる人権無感覚！ これでは，金を出すだけの人権小国とバカにされても反論できない。（もしどこかで声明が出されていたら，このくだりは撤回し，お詫びします。） 最も当事者意識がないのが，日本ネパール協会。日本の協会だから，ネパールのことなんか知らない，というのは一つの見識だが，それでよいのだろうか？ あるいは，王様親睦団体だから，不敬NGO弾圧に賛成なのだろうか？ まさか，そんなことはないはずだが，ダンマリだと，ネパールの人々や世界中のネパール関係者からは，そう見られても仕方ない。 ネット時代であり，日本政府も日本ネパール協会も，重大問題については，ネットを通して迅速に明確な態度表明をしないと，あらぬ誤解を招く恐れがある。 (KOL, "UN to govt: Withdraw
NGO code of Conduct," Nov17, 2005) UN Resident
Coordinator's Letter to the Minister for Women, Children and Social Welfare Your
Excellency, It is our
firm belief that civil society in all countries plays a crucial role in the
promotion of democracy, human rights and development. However, in recent
months, the international community has become increasingly concerned at the
erosion of the rights and freedoms of civil society in Nepal. All governments
should provide an enabling environment for the broad participation of civil
society in all areas of development, social service provision, humanitarian
assistance and human rights, including the right to freedom of association.
We believe the “Code of Conduct” is not conducive either to improving NGO governance
or to fostering NGO endeavors. Moreover,
it is inconsistent with Nepal’s commitments and obligations under the
international human rights instruments. For example, provisions exerting
governmental control over NGO access to funding from international donors,
requiring that NGO personnel observe Government policies and bear individual
and collective responsibility for the activities implemented by the
organization would violate Nepal’s international human rights obligations,
including the right to freedom of association. As such,
the “Code of Conduct” does not appear likely to contribute to the process of
ensuring accountability and transparency and will be seen as another step to
constrain the legitimate activities of civil society. The regulation of civil
society should be the product of an open and active participatory and
consultative dialogue and in this instance both the process and the wording
have failed to take adequate account of the views of NGOs, both Nepali and
international. The donor
community believes that the ‘Code of Conduct’ clearly provides a means for
undue political interference. It is also likely to hinder critical
development activities as the independence and impartiality of Non
Governmental Organizations are essential to work in rural areas and to
support the population affected by the conflict. We therefore recommend that
the current ‘Code of Conduct’ be withdrawn and that this issue be revisited. Yours
sincerely,
On behalf of:
And the
following UN Agencies:
Code of
Conduct for Social Organizations and Institutions. 2062 B.S. To make the
contribution of social organization in the realm of social development more respectable,
institutionalized and effective, this Code of Conduct has been prepared and
enforced as per the rights enshrined in the Social Welfare Act, 2049 (1992)
Article 9 (First Amendment) Ordinance 2062, Clause (l) 1. Short
Title and Commencement: 2.
Definition: 3. Values
and Norms: 4.
Priority: 5.
Transparency: 6.
Responsibility and Obligation: 7. Spirit
of Volunteerism: 8.
Impartiality: 9. Ethics: 10. Social
Goodwill: 11. Use of
Financial Resources:
13.
Coordination: 14.
Confidentiality: 15. Abiding
Policy, Program and Code: Source:
Social Welfare Council via Nepalnews.com UWB, Nov17, 2005 |
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2005/11/18 |
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在日ネパール人と英仏移民問題 |
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谷川昌幸 フランスが移民住民の反乱で，非常事態法・外出禁止令発動の大混乱に陥っている。イギリス多文化主義の試みが移民系住民によるロンドン連続爆破テロで挫折したのに続き，今度は，誇り高きフランス人権普遍主義が試練にさらされている。
――問題の構図は，英仏と全く同じではないか。しかも，より危険なのは，日本では政府にも国民の間にも，日本単民族・単文化意識が濃厚に潜在していることだ。多民族共生経験は，英仏よりも圧倒的に少ない。ネパール人などの外国人労働者がスケープゴートにされる可能性は，日本の方がはるかに大きい。
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2005/11/16 |
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NGO取り締まり「行動綱領」 |
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谷川昌幸 ＮＧＯ活動を規制する「社会組織（NGO）行動綱領」が１１月１０日，施行された。メディア規制令と同根の悪法だ。 綱領が定めたのは，社会的調和を損なう活動の禁止，政治的傾向をもつNGOスタッフの排除，NGO活動地域規制，NGOスタッフの活動への無限責任，NGO活動を監督する社会事業委員会の設置，詳細な収支報告書の作成と監査など。 こうした規制をそのまま適用されたら，GONGO（御用NGO）しか残らないだろう。 メディア規制令で表現の自由，知る権利を否定し，NGO行動綱領で団体規制をする。日本のNGOや友好団体は，この動きをもっと警戒すべきではないか？ 某協会のように，GO-Societyを目指すのなら，これは歓迎すべき動きではあろうが。 (HRW, "Nepal: Legal Veneer for Repressing Civil
Society," Nov11, 2005; Legal News from Nepal, "NGOs Warn to
Move Intl Court against Code of Conduct," Nov15, 2005) |
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2005/11/14 |
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メディア規制令施行差し止め請求棄却 |
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谷川昌幸 最高裁は１１月１１日，メディア規制令審理優先を理由に，同法施行差し止め請求を棄却した。 カンチプールに対する適用猶予命令については言及しなかった。適用猶予は続いているようだが，メディア規制令の脅し効果は十分に発揮されている。カンチプールFMは，差し止め請求棄却後，「カンチプール・ダイアリ」の放送を中止した。 これに対し，ネパール法律家協会は，国王圧力への屈服を理由に，法廷ボイコットを宣言した。１９９０年以降，初めての実力行使であり，１３日には最高裁前で座り込みデモを実施した。 国王＝最高裁は，ますます冷静な判断力を失いつつある。報道の自由は，アメリカ選挙民主主義の大原則であり，その侵害に対しては，アメリカはタカ派もハト派も容認はしない。 国王は，１９９０年革命以前の情報統制を夢見ているのであろうが，それはもはや非現実的といってよいだろう。 (Kathmandu
Post, Nov11; KOL,Nov14) |
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2005/11/09 |
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憲法信仰と天皇的国王 |
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谷川昌幸 Dr. Arun Sayamiという人が，「カトマンズ・ポスト」に長文の時評を載せている。サヤミ博士も，対話相手のパンデ博士も全く存じ上げないし，この評論が事実に基づくものかどうかも分からない。議論は，定型そのものだが，それだけに分かりやすい。 (1)「成文憲法」信仰 (a)諸政党，マオイスト，市民社会（民間諸集団）が和解し，新憲法を制定し，国王と軍を憲法下に置く。 ――のいずれかの方法を提案される。しかし，これは根拠なき「成文憲法」崇拝である。現行憲法も守れないのに，新憲法を作ってみても，守れる保障はどこにもない。ヒンズー教聖典ならいざ知らず，成文憲法など，所詮，紙上の黒点（文字）にすぎない。 (2)パンデ博士の模範答案 「日本人はモンゴロイド系ネパール人そっくりだ！ ・・・ネパール人より賢いようには見えない。が，日本人にとって，第２次大戦中の爆撃による破壊は，良い教訓になった。彼らは驚異的に国を発展させた。わが国はいつ日本のように発展するのだろうか？ ・・・ネパールの人民，政治家，国王は日本から学ぶべきことがたくさんある。日本人は寡黙でよく働く。勤勉こそが日本人の成功の秘密だ。」 これを受けて，サヤミ博士が，こう答えている。 日本の天皇は儀式的君主だ。誰からも敬愛されていて，政治には全く関与しない。「２千年の歴史をもつ日本君主が政治を断念できるのに，ほんの２百年の歴史しかないネパール君主になぜそれが出来ないのか？」ギャネンドラ国王は，王制を維持したいのなら，タイ，日本，カンボジアの君主を見習うべきだ。 (3)言やよし (Dr Arun Sayami, King Gyanendra and Emperors of Asia, Kathmandu
Post, Nov11, 2005) |
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2005/11/07 |
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王制をめぐる官報と民報 |
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谷川昌幸 朝日（１１／４）が「ネパール王制 岐路」（カトマンズ＝大野良祐）という大きな記事を掲載している。 王制の現状をバランスよく解説した良い記事だ。結びは「もし（新憲法発布の）強硬策に出れば，王制廃止・共和制への流れが強まるのは避けられない情勢だ」となっている。客観的な情勢分析の上に，国王強権化の問題点を的確に指摘している。 もしこれが外務省などの官報なら，このような表現は出来まい。外務省は，朝日記者以上の情報をもち，情報分析もしているに違いないが，日本国益や内政干渉などを考慮し，書く内容や表現を規制せざるを得ない。官報は，「真実」を伝えようとするジャーナリズムではなく，国益優先である。 官報のそのような特質を理解しておれば，官報は大いに有益だが，なかには外務省などの圧倒的な情報収集力に惑わされ，官報さえあれば独自の取材，分析は必要ではない，と思い違いする人がいる。外務省が詳細なネパール情報を流しているのだから，それで十分だ，屋上屋を重ねる必要はないという。 これは，「事実」はつくられるという歴史認識のイロハを知らない稚拙な，だが極めて危険な議論だ。惜しくも亡くなられたが，もしビンティ氏ご存命なら，そのような議論がネパールに関し広まることを決して座視されなかっただろう。ビンティ氏ほどネパールに関する「事実」を構成することの難しさを痛感されていた方は無いのではないか，と思うからだ。 特に王制については，天皇制ともからみ，日本においても微妙な問題である。官報鵜呑みは，個人にとってもNGOや友好団体にとっても，危険であろう。 |
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2005/11/03 |
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MSN秘密検閲の恐怖 |
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谷川昌幸 ネット時代の危険を思い知らされた。こんなことが現実になろうとは・・・・・ (1)「禁止用語」とMSNの回答 投稿原稿には「禁止用語」はないはずなので，MSNに問い合わせると，次の回答が来た。 -------MSNの回答（原文のまま）-------- (2)秘密ルールの支配 私たちは，守るべきルールが明示され分かっているからこそ，それに従うことが出来る（ルール公示原則）。ところが，MSNは，守るべきルール（禁止用語）を教えないという。どの言葉が禁止されているのか分からないのに，どうルールを守れというのか？ どう自主規制せよというのか？ 何たる非常識！ 史上どの専制君主も，このような不合理な命令は出さなかった。 MSNには，歴史も文化も見向きもしないIT技術者しかいないのか？ (3)権力批判の封殺 あるいは，文脈分析で，反米的な内容として拒絶されたのだろうか？ MSNは「日本だけでなく、世界中のMSN共通のもの」と説明している。この「禁止用語」秘密検閲は，CIAの援助でも受けているのだろうか？ (3)世界監視社会化の恐怖 ネパール国王の「メディア規制令」は，ローテクであり，先進国型秘密検閲よりも対処しやすい。われわれは，ネパールの言論出版の自由を求める一方，自分自身に迫りくる先進国型ハイテク秘密検閲にも抵抗しなければならない。IT技術をコントロールする常識＝良識(common sense)が，いま試されている。 |
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2005/11/02 |
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A. チャンド氏誘拐とその背景 |
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谷川昌幸 L.B.チャンド元首相の息子アルン・チャンド氏が１０月２７日，カイラリ郡チューハ村からマオイストに連行された。チャンド元首相は，１１月１日の記者会見で，アルン氏の解放を強く訴えた。
アルン氏は製糖工場をもち，農民とサトウキビ代支払いの件でもめていたらしい。マオイストは，これを理由に彼を連行したようだ。
マオイストは，以前から，有力者の家族や関係者を連行する作戦を多用してきた。そのため，多くの有力者の家族や関係者が地方からカトマンズや他の都市部に逃れ，避難生活をしている。村の土地や財産からの収入を立たれた彼らは，都市部でどのようにして生活しているのだろうか？
マオイストの連行作戦は，人道法違反であり，許されるはずはないが，一方，連行作戦を容認させるような不公正な社会・経済関係が地方に根深く残っていることもまた事実だ。
テロは許されないが，武力弾圧でテロはなくならないことは，いまや世界の常識である。同じことが，マオイストの連行作戦についてもいえる。妻子，兄弟姉妹の強制連行（誘拐）が卑劣な行為であることは，あの難解なマルクス・レーニン・毛沢東を学習しているマオイストに分からないはずがない。分かってはいるが，彼らにそうさせ，地方住民にそれを容認させてしまう，その社会的・経済的状況を改める方策を政府や国際社会は，もっと真剣に考える必要がある。
しかし，現状は，その方向には向かっていない。国王はますます強権化し，軍事独裁化しつつある。この国王専制をどの勢力が支持しているか正確には分からないが，諸状況から推測すれば，その有力な一派は，おそらく没落しつつある地方寄生特権階級であろう。これは，世界史の至るところで見られた現象である。
しかしネパールでも，都市部では新しい中産（ブルジョア）階級がたしかに生長しつつある。マルクス主義史観をとらなくても，地方寄生特権階級の没落は必至であり，いまさら国王専制に組みするのは，泥船に乗り込むような先見性のない愚行だ。
(Kathmandu Post, Oct31; KOL,
Nov1) |
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2005/11/01 |
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ビンティ主催者のご逝去を悼む |
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谷川昌幸 ビンティ掲示板によれば，主催者のＴ氏がご逝去されたらしい。 ビンティ・ニュースは，最も信頼できる日本語ネパール・ニュースであった。事実は創られることを十分に自覚された上で，事実に接近するという謙虚かつ勇敢な姿勢に，心から敬服し，また勇気づけられていた。 ご冥福をお祈りする。 ------------------------------------ （ビンティへのコメント 2005/01/06) 050106 祝ビンティ，６０万回突破！ デザインはきわめてシンプルであり，むしろ素っ気ないくらいだ。HP作成者はあれもこれもと大盛りにしたがるが，ビンティは見事に禁欲し，必要最小限のものしか表示しないようにしている。この清貧型HPは私の好みだが，むろんデザインだけで６０万回も閲覧されるわけはない。 支持されているのは，何といっても中身（コンテンツ）である。どの頁がよく読まれているかは部外者の私には分からないが，おそらくNEPAL WATCHであろう。トップ頁にNEPAL WATCHとして重要ニュースが一覧表示される。一番知りたいことがアクセスと同時にパッとわかる。これはよい。 もちろんニュースそのものであれば，英語やネパール語のHPの方がはるかに速く詳しい。ビンティといえども，とてもそれらに太刀打ちできない。ではなぜ読者はビンティを読むのか？ それは，おそらく著者が一定の立場を堅持され，その見識により，多くの出来事の中から重要なものを取捨選択し，再構成して示してくださっているからだろう。 しかもその際，著者はあくまでも事実に即して記述し，事実をして語らしめるという禁欲的姿勢を崩されていない。読者はわがままなものであり，事実選択（価値判断）の的確性と記述の客観性を同時に要求する。この無理難題にネパールウォッチの著者はよく応え，読者の信頼を勝ち取られているようだ。 HPの成否判断には，アクセスの質も無視できないが，何といっても量が先決だ。それには，トップ頁に読者が一番欲している情報をまず出すことが肝要だ。もしビンティがトップにビンティからのメッセージや宣伝を大々的に載せていたら，これほど成功はしなかっただろう。それらは，ビンティが伝えたいことではあっても，読者が欲していることではないからだ。ビンティを見たら，パッといまの重要問題が表示される。このシンプルさが，読者に支持されている。 「ネパール情報なら，ビンティ！」は，ビンティの宣伝文句だが，どうやら正夢になりそうな気配だ。ご健闘を祈る。 ---------------------------- （ビンティへのコメント 2005/03/09) 050309 「命がけ」のビンティ 人権・民主主義（回復）要求は正しいことだが，「でも引っかかりを感じる」と著者はいう。これはきわめて健全な感覚だ。朝日社説は，そんな「引っかかり」を少しも感じていない。これはダメだ。 私はネパール語も分からないし，ビンティ氏のようにネパール事情にも詳しくなく，単なる外部からの観察者にすぎないが，それでもやはり「引っかかり」は感じる。その理由は，ビンティ氏とは少し違うかも知れない（同じかも知れないが）。 私の「引っかかり」は，人権・民主主義要求をする場合，自分も多かれ少なかれ暴力を行使せざるをえないという罪意識があるからだ。暴力を止めさせるために暴力を行使するという罪悪感。 ODA停止の場合，甚大な影響を与える。しわ寄せはまず弱者にくるだろうから，そうでなくても苦しい彼らの生活は悲惨なことになる。これは暴力，いわゆる構造的暴力に他ならない。 あるいは，それほど直接的でなくても，国際世論を喚起し，現体制を倒したとして，そのあとがもしアナーキーになれば（その可能性大），ネパールの人々の悲惨はいうまでもない。国際世論という強制力＝暴力を行使した結果への怖れ，それもまた「引っかかり」を感じさせる原因だ。 しかし，たとえそうであっても，そうした暴力を行使してでも守らなければない自由や権利，つまり人間の尊厳はある。暴力行使の結果を完全に予測することは出来ない。が，人間の尊厳を守るには，いま暴力行使を決断しなければならない。そういった時が，私たちには必ずある。 私自身は，軍事援助停止だけでなく，状況によってはODA停止という暴力行使にも訴えざるを得ない場合があると考えている。自分の手を汚さず他人を救うことなど，人間には出来るはずがない。 「引っかかる」のは，どんな小さなことであれ，罪を犯すこと，手を汚すことへの恐れがあるからであり，だからこそ「命がけ」で決断し，その結果には当然「責任」を引き受けることになる。 そして，忘れてはならないのは，「なにもしない」のも（消極的）決断であり，責任は免れないということである。目の前で友人が殴られているのに，助けようとしない。この場合，たとえ刑事罰は免れても，道徳法廷か，あるいは最後の審判で裁かれ，厳しく責任を追求され処罰されることは間違いない。 |