谷川昌幸(C)
民族自決は正当な権利だが,チベット叛徒は「人民」ではないから断固取り締まれ――この絵に描いたように見事な「人民」民主主義の民族自決論を,ネパール準官報ライジング・ネパール社説が堂々と掲げている。
1.ネパール政府のチベット系住民弾圧政策
準官報のライジング・ネパールがチベット系住民取締を唱えるのは,マオイストのマハラ情報大臣の意向を受けてのことではないかと推察される。しかも,統一共産党(CPN-UML)は対中国抗議活動取締に賛成だし,コングレス党もいまのところ取締反対はしていないようだ。チベット系住民取締に反対する大勢力は,いまのネパールにはいないのだ。
しかし,政府与党のマオイスト+6党の共通スローガンは「民族自治」である。彼らがつくった暫定憲法も,政府の基本政策も,強烈な「民族自治」原理に貫かれている。そのマオイスト+6党政府が,国内マイノリティであるチベット系住民の民族自治要求運動を激しく弾圧しているのだ。
この天にツバするようなネパール「人民」政府のチベット系住民弾圧を黙認してはならない。これは,ネパールの矜持(プライド)に関わる国際問題であり,かつ国内問題でもあるのだ。
2.社説記事の「主体思想」とチベット系住民取締
ライジング・ネパール社説記事は,マニク・ラル・シュレスタ教授名で掲載されている。個人署名記事だが,社説だからライジング・ネパール,つまりはネパール政府の意思の表明と見てよいだろう。
マニク・ラル・シュレスタ教授(Prof. Manik Lal
Shrestha)は,もし同名別人でなければ(別人の場合は以下は取り消します),トリブバン大学教授であると同時に,次の職にある。
・Newah
Rastriya Andolan:メンバー
・Nepal-Korea Friendship Association:議長
・"Juche
Cause and Songun Politics"(2006):著者
・アジア・チュチェ思想研究所:副理事長(*)
・Nepal
Institute for Juche Studies:議長(*)
*North Korea Today (2008.3.30閲覧)
**チュチェ思想国際研究所,参照
M.L.シュレスタ教授は,これまで反ラナ闘争,1960年国王クーデター反対闘争,1990年人民運動などに参加した闘士である。しかし,難しいのは「人民」のため闘ってきても,非「人民」マイノリティの自由や権利には,なかなか目が向かないことだ。(これは重要な問題なので,後日,あらためて議論したい。)
このネパール民主化運動闘士にして金日成・主体思想のアジアにおける代弁者の一人たるシュレスタ教授が,準官報ライジング・ネパールに,ネパールのチベット系住民取締を全面的に正当化する署名社説を書いているのだ。
これは見逃すわけには行かない。ことは重大だ。浮かれて「自由チベット,万歳!」などと叫んでいると,危ない。
3.M.L.シュレスタ「チベット騒乱の背景」
シュレスタ教授のライジング・ネパール社説タイトルは「チベット騒乱の背景」である。以下,要点を紹介しよう。
(1)民族自決の「客観的」分析
シュレスタ教授は,まず,チベット叛乱の2つの見方を区別する。
(A)叛徒側=(a)「人民」の散発的「叛乱(revolt)」あるいは不満の表現。
(b)「中国の占領からのチベット人民の独立運動」
(B)中国政府=「破壊的サボタージュ」。背後にいるのは「陰謀分子」や「帝国主義の手先」の指示で動いている「一握りの犯罪的悪人ども」。
以上の2つの見方のうち,どちらが正しいか,これをシュレスタ教授は「不偏不党の立場」から「客観的」に分析するという。以下が,その科学的分析結果である。
(2)民族自決の原理的正当性と「自由チベット」要求の根拠
まずシュレスタ教授は,民族自決の正当性を全面的に認める。人民は「自決権」をもち,「自分の未来を決定する絶対的権利」をもつ。
「チベット人が望むなら,分離し,自分自身の独立国を樹立することさえ,彼らの権利である。」
このように,教授は民族自決・民族自治の原則に従い,チベットの自治ばかりか分離独立をさえ,正当な権利として認めるのである。
ところが,これが「人民」民主主義の真骨頂なのだが,この論理は「人民」により,180度反転される。「人民」民主主義の魔術といってよい。
「中華人民共和国建国以来の中国によるチベットのいわゆる『占領』は,国際社会や,チベットの元農奴により打倒された封建的農奴所有者たちが捏造した神話であり真っ赤なウソである。『自由チベット Free Tibet』は,チベット人民の真の要求か,それともチベットの封建的元支配階級一派のでっち上げたスローガンなのか。これの確認こそが,いま求められているのだ。」
見事な議論の魔術的すり替えだ。シュレスタ教授は,「自由チベット」が人民の意思ではないことを,歴史的事実をあげながら,以下のように論証していく。
(3)中国の歴史的版図としてのチベット
チベットが古来,中国中央権力の勢力圏内にあったことは周知の事実だが,シュレスタ教授はその歴史的事実をもって「自由チベット」要求の不当性を立証しようとする。
教授によれば,中国政府がダライラマをチベット地域の統治者として承認する慣習は,13世紀半頃,ジンギスカーンの孫クビライが第5代ダライラマをチベット初代ダライ統治者として承認したことから始まった。以後,ダライラマは中国中央政府の承認を得て,中国領土の一部であるチベットを統治してきた。
1791−92年のネパール・中国戦争のとき,チベット政府は中国皇帝に「陛下の領土」にゴルカ兵が侵入したと報告した。
1911年,中国初の議会に,ダライラマ政府はチベット代表の参加を要求,2議席を割り当てられた。
1923年,英領インドと中国チベット地域との間の境界画定交渉を,チベット代表ではなく中国政府代表が行った。
1933年,イギリスのエベレスト登山計画をチベット政府ではなく中国政府が許可した。
1959年,米印がチベットを中国から分離独立させる計画をつくり,ダライラマ一派をインドに亡命させた。アメリカは,国連安保理に「中国共産党のチベット占領」問題を提起し,チベット独立を要求した。このとき,中国・国民党政府はチベットを中国領と考え,それを何ら問題にはしなかった。
以上の歴史的説明は,ほぼ正確であろう。チベットは歴史的に見て,大きくは中国の勢力圏内にあったことは間違いない。
(4)「チベット解放」とチベット系住民取締の正当性
シュレスタ教授は,チベットは歴史的に中国の版図であったという歴史的事実から,中国共産党によるチベット解放の正当性と,ネパール政府のチベット系住民取締の正当性を論証していく。ここは核心部分なので,全文を引用する。
「1949年樹立の中華人民共和国新政府がチベットで行ったことは,併合でも占領でもなかった。それは,まさしく民主改革の導入そのものであった。それは,本質的に,封建的秩序に終止符を打ち,旧秩序に戻そうとして足掻く支配階級たる封建的農奴所有者たちの諸特権を廃止することが目的だった。打倒された支配階級一派が中国の存在(presence)に反対するのは,そのためだ。
毛沢東の中国が1951年に行ったチベット改革は,画期的な意義をもつ。中華人民共和国政府がチベット改革をする以前は,チベットの320万人の人口のうち200万人は農奴だった。しかも,120万人の自由民のうちのごく一握りの者だけが,農奴所有者だった。1951年の歴史的改革により200万人が解放され,こうして彼らがチベットと自分たち自身の将来を決める真の決定者となったのだ。中国共産党がチベット文化を破壊していると騒ぎ立て,チベット文化を守れと叫んでいる者たちは,実際には,農奴所有者の封建的諸特権の回復を要求しているのだ。
いまでは解放された農奴が,チベット人口の大半を占め,自分たちの自治区を統治している。以前のチベット統治において,支配的僧侶階層の僧侶たちは,単なる宗教者ではなく,国家制度の特権的支配者であった。日本の著名な仏僧,川口慧海は20世紀初め頃,チベットを支配している仏僧たちは実際には聖なる人ではなく邪悪な偽善者だ,と報告している。むろん,チベット僧侶の全部がそうであったのではなく,少数の封建的支配階級一派がそうだったのだ。
1959年,ダライラマとその同調小集団――特に彼の同僚たち――が,米帝国主義およびインド膨張主義と結託し,解放チベットの革命新体制を覆そうとした。そして,これに失敗すると,彼らはインドに逃れた。いま,その同じ一派が,アメリカに煽動され,チベットで騒乱を引き起こそうとしている。こうした状況においては,ネパール政府は厳戒態勢をとり,いかなる反チベット活動をもネパール国内では絶対に許さないようにするべきである。」(Manik Lal Shrestha,"Behind The Disturbances in Tibet," Editorial, Rising Nepal, 27 Mar.2008)
4.チベット系住民弾圧の問題点
マニク・ラル・シュレスタ教授の議論は,神がかり的明快さがある。これは人民主権論の本質であり,これの論破は信者に信仰の誤りを説得するのと同様の難しさがある。
まず,伝統的チベット社会が前近代的,封建的であったことはいうまでもない。しかし,もしそれを理由に外部から強制介入することが許されるのなら,民族自決は有名無実となるし,そもそも理性,文明,近代化,民主主義,人権などを押し立てて第三世界を徹底的に侵略してきた西洋や日本と同じことになってしまう。
もしシュレスタ教授の議論が成り立つのなら,先進諸国は,人権と民主主義を旗印に,中国や北朝鮮に強制介入してもよいことになる。現代の民族自決は,よほどのことがないかぎり,民族内のことはそれぞれの民族にに任せるということだ。むろん,シュレスタ教授が近代化論(共産主義は最も極端な近代化論)を採るのなら,近代化(共産主義化)のための他民族介入に矛盾はなくなるが,そうすると,ネパールも先進諸国の全面的介入を甘受せざるを得なくなる。
ネパールでは,マオイスト+6党もネパール政府も,それはいやだということで,民族自決・民族自治の原則の立場に立ち,内外に向けそれを大宣伝をしてきた。それなのに,その原則に則ってチベットの人々が始めた民族自治運動を暴力的に弾圧するのは,明白な自己矛盾である。
しかも,少なくともネパール国内では,チベット系住民の抗議活動は,非暴力的だ。そうした平和的な意見表明や集会の自由は,憲法で明確に保障されている。市民的自由は4月革命の中心的要求の一つだった。それなのに,その自由や権利を高く掲げるマオイスト+6党や,暫定政府がチベット系住民の平和的抗議活動を暴力的に弾圧するのは,これまた明白な自己矛盾である。
マオイストと6党,そして彼らの政府が一元的国民国家建設を目指しているというのなら,私はこれほど厳しい原理的批判は控える。途上国は国民統合が先だという立場であれば,それなりに首尾一貫しており,まだ許せる。しかし,いまのネパールはその逆,極端な民族自治,連邦制を謳っているのだ。だったら,自分のよって立つ政治原理にしたがうべきだろう。
それが,国家の,国民の,政党の,学者の,そしてジャーナリストの矜持(プライド)というものではないのか。
谷川昌幸(C)
桜が8分咲きになったので,近くを散歩した。長崎は狭い港町で,長崎駅の東側にもすぐ山が迫り,人家が山頂付近まで連なっている。そこを歩いてみた。
以前から,長崎は墓の多いところだなぁ,と感じていたが,いや,びっくりした。長崎駅の真正面,歩いて数分の所から山の中腹にかけて,びっしり墓が並んでいる。壮観といってよい。
ヒンズー教のように,火葬後,灰をガンジスに流してしまえば,魂は天に昇り,地上のどこかにとどまることはない。
ところが,キリスト教や中国経由の日本仏教は,そうはいかない。未練たらしく地上に墓をつくり,天国から魂が降りてきて土葬した自分の死体に入りよみがえることを期待したり(キリスト教),墓碑を建て,それを目印に降りてきてもらおうとしたりする(仏教)。
長崎には,そのような死者たちの大団地が,駅前5分の一等地にある。死は神聖なものだが,目前の墓地パノラマをみると,神聖さよりもむしろ,死者たちの怨念大合唱が聞こえてくるような気がする。
死者の近くには,当然,死者の要望に応える神仏が居を構え,宣伝している。この神仏ももちろん神聖なものだが,墓地パノラマ周辺に寺,神社,教会等々が立ち並んでいるのを見ると,他の顧客商売と大差ないなぁ,とつい不敬なことを思ったりしてしまう。
墓地の桜は八分咲きがよい。生の側から死を見ることが出来るからだ。満開後だと,死に引き寄せられ,神仏の顧客となってしまいそうな気がする。
谷川昌幸(C)
1.チベット系住民弾圧の違法性
ネパールでチベット系住民弾圧が続いている。HRW(26
Mar)によれば,警察は,チベット系住民を逮捕や中国送還で脅し,また平和的抗議参加者を殴るなど不当な権力行使をしている。
・3月24日 461人逮捕
・3月25日 73人逮捕
ネパール政府のこのような権力行使が,国際人権法やネパール憲法そのものに違反していることは明白だ。
世界人権宣言
第19条 すべて人は、意見及び表現の自由に対する権利を有する。この権利は、干渉を受けることなく自己の意見をもつ自由並びにあらゆる手段により、また、国境を越えると否とにかかわりなく、情報及び思想を求め、受け、及び伝える自由を含む。
第20条1 すべての人は、平和的集会及び結社の自由に対する権利を有する。
ネパール暫定憲法
第12条(3) すべての市民は次の自由を有する。 (a)意見・表現の自由,(b)平和的非武装集会の自由
2.マオイスト系「準官報」で中国支持示唆
ここで,まったくもって不可解なのがネパールの政府と諸政党。報道を見るかぎり,彼らはネパール在住マイノリティであるチベット系住民の当然の自由や権利を守るどころか,その弾圧に加担しているようなのだ。
御用新聞Rising Nepal(Gorkha Patra)は,いまや「マオイスト準機関誌」とさえウワサされている。そのライジング・ネパールは,中国大使館声明をそのまま掲載し,弾圧協力の姿勢を暗示した。これは,全文掲載に値する。「準官報」だから,著作権はないだろう。
Tibet govt condemns criminal activities [Rising
Nepal,2008-3-17]
By A Staff Reporter
Kathmandu, Mar. 16: The government of the Tibet Autonomous Region of China (TAR) has condemned the violent activities being perpetrated by a small criminal group in Lhasa and has warned that it would take stern action if such violent activities are not stopped immediately.
A small group of people in Lhasa have started violence involving beating, smashing, looting and burning which has disrupted the public order and jeopardised people's lives and property, a press release issued by the Embassy of China in Kathmandu said.
"There are enough evidences to prove that the sabotage was organised, premeditated and masterminded by the Dalai clique and such action has aroused locals' dissatisfaction and been condemned by peoples in Tibet," the press statement said.
"The concerned departments of TAR are legally taking effective measures to properly handle this riot. We are fully confident of maintaining the social stability in Tibet and ensuring the safety of peoples' lives and property," the statement reads.
The smallest group of people's attempt to destroy Tibet's stability and harmony has no foundation and is doomed to fail, the statement said.
これもマオイストの検閲を受けているとすれば,彼らはこのような中国政府の政策を暗に支持しているということになる。これこそが,マイノリティの友,民族自治の旗手ネパール共産党マオイストの,チベット弾圧に対する態度なのだ。(マオイスト,中国のチベット弾圧支持か? 参照)
ちなみに,ネパール政府がエベレスト登山を禁止した本当の理由は,エベレスト山頂にチベット旗が立つのを恐れたからだ(と思う)。世界最高峰エベレストの山頂には,中国=ネパール両国「人民」の赤旗が立つべきなのだ。
3.沈黙か寡黙の諸政党
マオイストの中国政府支持はほぼ間違いないが,他の諸政党はほぼダンマリを決め込んでいる。目の前でマイノリティの自由・人権が大問題になっているというのに,自分たちの政府がマイノリティを大弾圧しているというのに,なぜダンマリなのだ!
それでも,UMLは声明を出し,多少はしゃべったようだ。
「わが党は,つねに一つの中国政策をとってきた。ネパールでは,いかなる反中国活動も許されるべきではない。」(Nepal
News Net, 17 Mar)
コングレスもどこかで何か言っているかもしれないが,今のところ見つからない。
4.マイノリティを守らない「人民」
6党+マオイスト政府によるチベット系住民弾圧は,loktantra=「人民」主権政府の未来を暗示している。
権力が「人民」のものになれば,「人民」ではないマイノリティの自由や権利は守られない。マイノリティ弾圧は,これまで以上に厳しく容赦ないものになるであろう。マイノリティは,「人民」への同化か,国外脱出の準備をするのが賢明であろう。
谷川昌幸(C)
1.超明快訳『永遠平和のために』
カントの『永遠平和のために』は平和論の古典であり,むろん幾度も読んだが,新訳(中山元訳,光文社)が評判なので,改めて読んでみた。ビックリ仰天,超明快。もともと『永遠平和』は『純粋理性批判』などの抽象的著作よりも分かりやすかったが,そこは哲学者中の大哲学者カントのこと,難解なところが多々あった。新訳は,そういったところも平易な表現になっており,これなら高校生にも分かる。
もともとphilosophyは日常生活と不可分のものなのに,それを「哲学」などと有り難そうな深遠な訳語にしたのが誤りだった。もう定着したので仕方ないが,この新訳を読むと,カントはごく身近な思慮深い隣人のような気がする。分かりすぎにも問題はあろうが,本来,哲学はこのように普通に読んでとりあえずは理解できるもののはずである。
この『永遠平和』の課題は,世界平和は国家体制が共和制であり,そうした共和国が集まって国家連合をつくり,国際法と世界市民法を守ることにより実現される,という命題の論証である。
2.国家体制の分類
カントによれば,平和のためには国家体制は共和制でなければならない。共和制は,次のように分類される国家体制の1つである(p.170-171)。
A.支配の形式による区別(支配者の数)
(1)君主制−−1人
(2)貴族制−−数人
(3)民主制−−国家構成員すべて
B.統治の形式による区別
(1)共和制
(2)専制
この体制分類は,古代ギリシャ以来のものであり,カントの頃もいわば「常識」であった。その「常識」が市民革命の中で動揺しかけてきたので,カントが常識を整理し,人々に再確認を促したわけだ。つまり,「支配の形式」と「統治の形式」は,別のカテゴリーであり,たとえば君主制か民主制かという問いと,共和制か専制かという問いは,別のものであるということである。この「常識」は,体制選択直前のネパールでも,今一度,初心に戻り,再確認すべきだろう。
(補足)法の分類−−(1)国民法(市民法) (2)国際法(万民法) (3)世界市民法
3.共和制
共和制の構成条件は,次の3つである。
(1)社会構成員の自由
(2)社会構成員が唯一の共同の法に従う
(3)社会構成員の市民としての平等
この共和制は,統治形式としては次のように規定され,専制とは明確に区別される。
「共和政体とは行政権(統治権)が立法権と分離されている国家原理であり,専制政体とは,国家がみずから定めた法律を独断で執行する国家原理である。」(p.171)
これは権力を「立法権」と「執行権」に分けたJ.ロックの権力分立論の流れに属する。立法権と執行権(行政権)が分離されるから,法が執行権(行政権)と人民自身をも拘束することになり,共和制が実現される。法の支配と,市民の自由・平等である。
4.代議制
共和制は,代議制をとる。「代議的でないすべての統治形式は,ほんらいまともでない形式である。というのは立法者が同じ人格において,同時にその意思の執行者となりうるからである。」(p.171)
5.共和制と民主制の矛盾
代議制をとる共和制は,君主制または貴族制とは結びつきうるが,民主制とは結びつかない。
「国家権力にかかわる人格の数,すなわち支配者の数が少なければ少ないほど,そして支配者が代表する国民の数が多ければ多いほど,国家体制はそれだけ共和的な体制の可能性に近づくのであり,漸進的な改革をつうじて,いずれは共和的な体制にまで高まることが期待できるのである。このためこの唯一法的に完全な体制に到達する可能性がもっとも高いのは君主制であり,貴族制では実現が困難になり,民主制では,暴力による革命なしでは,実現不可能なのである。」(p.172)
このように,カントは,古代ギリシャ以来の正統政治哲学にしたがい,君主制を最善の政体としている。最後の部分は,民主制であっても暴力革命により共和制の実現は可能としているようでもあり,解釈が難しい。おそらく,フランス革命を想定しているのだろうが,全体として見ると,カントが「君主制+共和制」をもって最善の国家体制としていることは明白だ。
6.専制としての民主制
民主制は,カントにおいて,最悪の政体である。
「三つの国家体制のうちで、民主制は語のほんらいの意味で必然的に専制的な政体である。というのは民主制の執行権のもとでは、すべての人がある一人について、場合によってはその一人の同意なしで、すなわち全員の一致という名目のもとで決議することができるのであり、これは普遍的な意志そのものと矛盾し、自由と矛盾するからである。」(p.171)
カントのいう民主制は直接民主制であり,この民主制が必然的に専制となるのだ。法をつくる者と法を執行する者が同一の「人民」だからである。 このような民主制を専制とする考え方は,19世紀初頃までの西洋では常識であり,民主主義は無知な民衆の専制として恐れられていた。
こうした反民主主義思想は,19世紀半に代議制民主主義が優勢となるにつれ後退し,20世紀にはいると,民主制こそが最善の政体とされ,いまやそれは疑う余地のない正義,いわばタブーのごときものとなっている。
しかし,民主主義の伝統の長い欧米では,現在も,カントにも継承されている反民主主義思想が根強く残っており,つねに民主制を批判し牽制している。原理的に,人民主権は立法権・行政権を主権者たる「人民」が握るものであり,人民主権が主張されればされるほど,二権は融合していく。社会主義がその好例だ。こうした人民主権論の必然的専制化の傾向に対し,カントの共和制論は,鋭い原理的批判としての意義を今なおもっている。
ネパールの民主主義は,手放しの人民主権論(loktantra)として展開されており,原理的な批判を受けていない。事実としての反民主主義勢力は存在するが,彼らはまだほとんど理論武装しておらず,旧態依然であり,人民主権との原理的対決は到底無理である。
欧米保守主義がフランス革命(人民主権)に対する対抗イデオロギーとして成立したように,ネパールでも近代保守主義がいまの民主革命(人民権力)に対する対抗イデオロギーとして出現するかもしれない。それは,社会が自由であるためには必要不可欠の条件なのである。
谷川昌幸(C)
1.中国憲法の民族自治保障
中国は「労働者階級の指導する労農同盟を基礎とした人民民主主義独裁の社会主義国」であり,民族自治は完璧に保障されている。
「第4条 中華人民共和国の諸民族は、一律に平等である。国家は各少数民族の合法的な権利および利益を保障し、諸民族の平等、団結および互恵関係を守り、発展させる。いかなる民族に対する差別と抑圧も禁止し、民族の団結を破壊し民族の分裂を引き起こす行為も、これを禁止する。
国家は少数民族の特徴および必要に基づいて、各少数民族地区が経済および文化の発展を速めるよう援助する。
各少数民族の集居している地区では区域自治を実行し、自治機関を設け、自治権を行使する。いずれの民族自治区も中華人民共和国の切り離すことのできない一部である。
いずれの民族もすべて、自己の言語・文字を使用し、発展させる自由を有し、自己の風俗習慣を保持または変革する自由を有する。」(中国憲法『アジア憲法集』所収)
2.マオイスト中国の国家理性
しかし,憲法の文言がどうであれ,マオイスト中国は一貫して「国家理性」の立場をとってきた。天安門事件はそのモデルだし,新彊ウィグル自治区など,少数民族に対する浄化作戦もそうだ。チベットでも,漢民族移住政策により民族構成を変え,「中国人民」への統合を図ってきた。
したがって,今回のチベット叛乱の弾圧方法も,きわめて理性的だ。武力で有無をいわせず一気に弾圧し解決を図る。マキャベリの教え通り,残虐行為は一気に,温情は小出しにする。実に,理性的だ。
4.非理性的ネパールの屈辱
中国の国家理由(理性)からしたら,ネパールの主権など,屁のようなもの。平和五原則を宣言したのはどこの首相? ふん,そんなことはしらないよ。(むろん,あの敬愛すべき周恩来首相)
このAFP写真を見よ。マオイスト中国の理性的偉大さに比べ,人民運動ネパールの何たる卑屈さ! 涙なくして見られようか。(某ネパール痛快ブログも,いつもはやさしい猫ブログも怒りまくっている。)
これはリパング村だそうだ。中国公安が堂々と入り込み,親チベット派を監視している。目つき顔つきがいかにも公安。中国の国家理性を見事に体現している。
ネパール政府は,むろん見て見ぬ振りをする内諾を与えている。理性的に脅されたのだろう。「プラチャンダの道」や「人民運動」の主権,ナショナリズムは一体どこへ行ったのだ。こんなときこそ,一致団結して,国境=ネパール人民を守るべきではないか。
5.自由,人権を守る権力
いつもいっているように,ネパールの人々は,勘違いしている。自由や人権は,強力な政治権力により守られる。権力=暴力ではない。権力こそが,暴力から人々を守るのだ。
いま,中国公安が国境を侵犯し,ネパール領内でわがもの顔に活動している。ネパール政府は,領内の人民の保護義務を放棄した。なぜか? 中央政府に主権(国家=国民=人民の権利)を守るだけの政治権力がないからだ。(むろん,対インドでも同様。)
同じことが,内政についても言える。もともと弱体なネパール国家をやれ連邦だの民族自治だのとバカなことをいって,バラバラに分解し,国家権力をさらに弱体化しようとしている。いったい誰が国内少数派,民族内少数派,集団内少数派の自由や権利を守るのだ。
むろん,アメリカのように「合州国」いや正確には「国家連合(United States)」なのに「合衆国」でもあり,強力無比の中央権力が構成できればよい。アメリカは,州自治と,憲法の前の万人平等を保障する強力中央権力との両立を,二百数十年の苦闘を通して何とか実現してきた。連邦政府権力の強化は,つねにアメリカ人の一方の願いだったのだ。
ところが,いまのネパールには,そんな反省はほとんどない。中央権力を解体すれば,民族や個人の自由や権利が拡大するといった短絡的思考に走っている。
AFP写真を見よ。弱体国家権力がいかに惨めなものか,自由と人権にとっていかに危険なものかを,いやというほど見せつけているではないか。選挙公報に掲載し,めでたく人民議会成立後は議場正面に掲げるべきだ。
谷川昌幸(C)
バブラム・バッタライ氏は大インテリだが,民主主義は苦手のようだ。マオイストが選挙で負けたら,また戦争だという。あるいは,人民の要求を実現できるのはマオイストだけだから,政権に参加できなければ,戦闘再開だそうだ。
選挙アジであろうが,それにしても,大インテリにしてはヒドイ発言ではないか。選挙の大原則を,全面的に否定している。こんなことでは,選挙をやっても意味はない。
ネパールには,選挙に負けた側が,選挙結果を認めず,選挙の不正を言い立て,街頭に出て実力行使をする古き悪き伝統がある。マオイストも全く同じ。ちっとも新しくない。
* eKantipur, 15 Mar.
谷川昌幸(C)
コングレスの比例区候補者は,男性168人,女性167人となった。選挙法で決められているから当たり前とはいえ,世界最先端,スゴイ!
これは,むろんマオイストのおかげだ。その意味では,本当に偉いのはマオイストだが,抜け目のないNC,美味しいところをチャッカリ頂戴してしまった。
これ以外にも,マオイストの先端的諸要求のかなりの部分は,他の諸政党が選挙公約の中に取り入れているであろうから,ここで困るのはマオイスト。これまで独占してきた急進改革者のイメージが急速に薄れ,他党と見分けがつかなくなってしまう。
焦って暴力に訴えたり,選挙後,この選挙は不正だといってジャングルに戻るようなことは止めてほしい。武器をおき,選挙をするとは,このような試練に耐えることだ。プラチャンダ議長は「人民の裁決には従う」と何度か公言された。是非そうして欲しいものだ。
コングレス比例区候補者(eKantipur, 12 Mar)
谷川昌幸(C)
ネパール派兵のなし崩し延長は,軍民一体型途上国支援拡大への地ならしの一環だ。
軍民一体型支援の危険性については,中村哲氏ほど説得力を持って語れる人はいない。アフガン支援の立場から,中村氏はこう批判している。
「現地では,タリバーンの実効支配地域が拡大している。国民の半数以上が飢えている状況に,軍隊を送って暮らしや文化・慣習を荒らす外国への反感が高まっているからだ。・・・・/最近,日本政府が軍民一体型の『地域復興支援チーム』(PRT)に途上国援助(ODA)資金を出していることが,日本で報じられた。/私たちの診療所にも,軍服姿の者たちが突然,装甲車で乗りつけ,薬を配らせてほしいと言われたことがある。診察もなしに投薬するのは危険だと断ったが,PRTの実態は軍による宣撫工作に過ぎない。・・・・/日本が海外で軍事力を行使することの意味を,誰も真剣に受け止めていない気がする。・・・・/日本政府は民生一本に絞って支援すべきだ。」(朝日「給油再開・得られるものは」2008.2.24。聞き手・今田幸伸)
軍民一体型でまず狙われるのが,中村氏のような医療の分野や,教育の分野。「人道的」を宣伝しやすいからだ。事実,自衛隊はイラクでは,下図のように,教育支援を宣伝に利用しまくっている。自衛隊員(=日本兵)を学校の無邪気な生徒たちが日の丸で大歓迎する−−この構図は,日本人の大国主義的ナショナリズムを大いに満足させ,宣伝効果大だ。
ネパールは,アフガンやイラクよりも何倍も宣伝効果がある。ネパール派兵のなし崩し延長が,派兵目的の医療や教育へのなし崩し拡大となることを,何よりも恐れている。
むろん軍民一体型では,マオイストの方がはるかに上だ。私たちは,マオイストが生活全体を軍事化し,たとえば地方の小中学校を占拠し,子供たちを洗脳し,軍事教練を施し,人民戦争に少年少女兵として従軍させてきたことをよく知っている。しかし,もしこれに対抗するため日本が軍民一体型支援に走れば,生活の軍事化という点では,日本政府もマオイスト政府も同じことになってしまう。これは真のネパール平和への道ではない。
上の写真と下の写真を比べると,雰囲気はよく似ている。軍隊は生徒や学校が好きなのだ。
谷川昌幸(C)
軍は自己増殖,なし崩し介入をもって本質とする。ネパール派兵も,9月30日までのなし崩し延長となり,6人の交代要員が3月7日,ネパールに向け出発した。
この怪しげな「個人資格」陸自隊員派遣の延長は,どのような手続きで決定されるのか? 1年前制定のネパール国際平和協力法などを見れば分かるだろうが,面倒なので勘で書くと,閣議かそれ以下のレベルの決定でよいのだろう。
しかし,ここでの問題は,まだそのような決定はなされていないはずなのに,見切り発車でもう交代要員を出発させてしまったこと。防衛省自身,「現行のネパール国際平和協力業務実施計画では、国際平和協力業務の実施期間は、本年3月31日までとなっていますが、同期間を6か月延長する(9月30日まで)等の実施計画の変更について関係省庁と調整中です」(防衛省HP,3月5日付)と書いている。まだ調整中のはずなのに,延長を見越して,7日に交代要員を出発させてしまった。
軍は,いったん介入したら,よほどのことがないかぎり撤退(転進)はしない。作戦で予算と権限が増えるし,特にネパールは最も安全快適な海外派兵訓練場だからだ。「もう交代要員が行ってしまったから,延長せざるをえません」,まぁ,そんなところだ。
という訳で,「気合い十分の派遣要員」6人が,朝霞駐屯地から「万歳の三唱とともに見送られ」ネパールに向け出発した(防衛省HP)。北海道新聞(3/7)も,これまた気合いを入れ,「道内から3人」と報道した。道内の3人(1尉)は:
奥泉智生さん(33)=札幌駐屯地
嶋崎善幸さん(33)=北千歳駐屯地
日下耕さん(32)=東千歳駐屯地
他の3人のお名前,階級はまたあとで。
谷川昌幸(C)
3月6日午後4時30〜40分頃,コイララ首相が,国家元首として,マハシバラトリ(シバ神夜祭)を祝っているパシュパティナート寺院を参拝した。
これは一体どうしたことか? ネパールは世俗国家ではなかったのか? 過激世俗主義者マオイストは,なぜ抗議しないのか?
ネパール首相は,国家元首として,クリスマスを祝い,シバラトリを祝い,そしてたぶん灌仏会(釈迦誕生日)を祝うことになるだろう。
めでたいことだが,祝ってもらえない神々が怒らないか? ネパールにも世界中にも無数の神々がいる。少なくとも有力365神くらいは選抜し,1日1神ずつ国民祭日を割り当てるべきだろう。それが世俗国家というものだ。
いまや全権を握る世俗国家首相のあとで,一切の政治権力を剥奪されたギャネンドラ国王が,つつましくもパシュパティナート寺院を参拝した(午後6時半〜7時半頃)。政治権力皆無の国王参拝に問題はない。石一つ投げられなかった。これでよいのではないか。
絶対によくないのは,世俗国家元首たる首相の宗教行為。確信をもって予言するが,このままでは,宗教儀式参加の首相に石が投げられる日は近い。そして,投げた者は,人民の敵として世俗国家権力により厳罰に処せられるであろう。
参照:世俗国家の宗教祭日
谷川昌幸(C)
3月5日,選管が2日締め切った比例区候補リストの訂正を命令した。女性,ダリット,マデシ,先住民,少数諸集団を正しく代表していない,という理由だ。全601議席の30%以下,つまり18.3人以下の候補しかいないと主張する政党にも,訂正を求めた(ekantipur, 5 Mar)。う〜ん,訳が分からん。
1.男女の識別ですら困難
実に,愚劣きわまる。世界中でアイデンティティ政治の危険性が言われ始めているのに,いまさらなんでのこのここんな危険なことを始めるのか?
考えてもみよ,ネパールは性的マイノリティ解放の最先進国だ。生物学的性と意識上の性とが別の人は,選挙法ではどちらに分類されるのか? あるいは,男でも女でもない人は,どちらなのだ。1/2票ずつ投票するのか?
笑い事ではない。少なくとも立候補者は,投票前に選管によりセックス・チェックを受けるべきだ。そうでないと,「女」で立候補し当選した人が,じつは「男」だったなんてことが起こるにちがいない。
いや,もっと厳密にいうなら,すべての人間を男と女にきっちり区分することはできないというのが,生物学でも心理学・倫理学でもいまや常識なのだ。
2.所属集団識別はもっと困難
男女識別問題よりももっと現実的なのは,所属集団の識別。厳密な所属集団識別は困難であり,ニセ○○民族がわんさと出るにちがいない。
あるいは,異民族,異カーストの父母から生まれた子供は,たとえば70%○○民族,30%△△民族と分類して,票を比例配分するのか。それとも,彼らのために別の集団カテゴリーをつくるのか? バカげている。
3.アメリカ民主主義の王道を行くオバマ
この点,世界最古の多民族近代民主主義共和国アメリカは偉い。大貫恵美子ウィスコンシン大教授「米大統領選・カギは分裂を超える力だ」(朝日,2008.3.6)は,アメリカがアイデンティティ政治に苦しみ,いまようやくそこから脱却しつつあることを鋭く指摘している。
オバマとヒラリーは,黒人,女性というアメリカ政治のマイノリティに属すが,ヒラリーが「女性」アイデンティティを押し出しているのに対し,オバマはそうではない。
「オバマの方はこれまでのアフリカ系候補者と違い,自らの皮膚の色を全面に打ち出していない。アイデンティティ・ポリティックスが米国に深い亀裂をもたらしていることを深く認識している。
彼自身,大統領選に出るのは,人種,ジェンダー,階級,政党で分裂してしまった米国を本当の統合された国家にするためだと訴えている。・・・・
・・・・ヒラリーのフェミニズムは一世代前のリベラル派を代表する存在だ。
オバマの支持が上昇してきたのは,・・・・ヒラリーと違って,オバマは最初からイラク『侵略』に反対してきたことも大きな原因だが,分裂の政治・社会を克服しようとする彼のメッセージが米社会で共感を広げつつあるからではないか。」
見事な分析だ。これから先,選挙戦が激化すれば,オバマもアイデンティティ政治に走るかもしれないが,少なくともいままでは,それを自由と平等の普遍的アメリカ民主主義理念により乗り越えようとしている。
4.弁証法マジックの危険性
ゴリゴリのヘーゲル=マルクス主義者なら,階級は階級意識の強化により,カーストはカースト意識の強化により,そして民族は民族意識の強化により,克服されるという弁証法マジックを使うであろう。ネパールは,国連の煽動に乗り,この危険な弁証法マジックを試すつもりだろうか?
私は,保守的近代主義者だから,星条旗の下に万人を平等とするアメリカ民主主義,自由・平等・友愛の建国理念を認めるものは民族に関わりなく市民とするフランス民主主義を支持する。
5.モルモット化されるネパール
ネパールは,怪しげなアイデンティティ政治を押し進める国連のモルモットにされつつある。こんな政治が本当に成功してきたのか? ヨーロッパや,オーストラリア,カナダ,アメリカなどでもっともっと実験し,どのような条件があれば,多極共存型民主主義は成立するのかを確かめてから,ネパールなど途上国に導入すべきではないだろうか?
谷川昌幸(C)
4月10日選挙のために登録している政党は,下記の通り。10番目はミヤハラ・タカシ氏の「ネパール開発党」。いま注目されている,もう一つの政党だ。
ネパール開発党
シンボルマーク: ラジオ
公約: 開発による失業解消,観光開発,自然保護,社会保障,教育開発。
●Full list of registered political parties
Names of
political parties Names of presidents/chairs/secretary-generals
1. Communist Party of Nepal (Unified Marxist- Leninist) Mr
Madhav Kumar Nepal (Secretary-General)
2. Nepali Congress
Mr Girija Prasad Koirala (President)
3. Rashtriya Janshakti
Party (National People's Force Party) Mr Surya Bahadur Thapa (Chair)
4. Rashtriya Prajatantra Party (National Democracy Party)
Mr Pashupati Shamsher JBR (Chair)
5. People's Front, Nepal
(Janamorcha Nepal) Mr Amik Sherchan
6. Communist Party of
Nepal (Maoist) Mr Pushpakamal Dahal (Prachanda) (Chair)
7.
Nepal Workers' and Peasants' Party (Nepal Majdur Kishan Party) Mr Narayanman
Bijukchhe (Chair)
8. Samajwadi Prajatantrik Janta Party,
Nepal (Socialist Democratic People's Party Nepal) Mr Prem Bahadur Singh (Chair)
9. Rashtriya Janmorcha (National People's Front) Mr Chitra
Bahadur KC (Chair)
10. Nepal National Development Party
(Nepal Rastriya Bikash Party) Mr Takasi Miyahara (Chair)
11. Samajwadi Party Nepal (Socialist Party Nepal) Mr
Salimmiyan Ansari (Chair)
12. Rashtriya Janamukti Party
(National People's Liberation Party) Mr Malwarsingh Thapa (Chair)
13. Rashtriya Prajatantra Party Nepal (National Democracy
Party Nepal) Mr Ravindranath Sharma (Chair)
14. Communist
Party of Nepal - Yekikrit (Unified) Mr Ramsingh Shrish Budhathoki (Coordinator)
15. Communist Party of Nepal (Marxist-Leninist) Mr CP
Mainali (Secretary-General)
16. Rashtriya Janta Dal
(National People's party) Mr Yunus Ansari (National Chair)
17. Communist Party of Nepal - Sanyukta (United) Mr
Chandradev Joshi (Chair)
18. Nepal Samata Party (Nepal
Equity Party) Mr Narayansingh Pun (Chair)
19. Dalit Janjati
Party Mr Vishwendraman Pashwan (Chair)
20. Nepal Sadbhawana
Party (Anandi Devi) (Nepal Goodwill Party Anandi Devi) Ms Anandidevi Singh
(National Chair)
21. Hariyali Nepal Party (Green Nepal
Party) Mr Kuber Sharma (Chair)
22. Communist Party of
Nepal - Sanyukta Marksbadi (United Marxist) Mr Hemanta Bahadur BC (Chair)
23. Shivsena Nepal (Shiva's Army Nepal) Mr Arun Subedi
(Chair)
24. Madhesi People's Rights Forum, Nepal (Madhesi
Janadhikar Forum, Nepal) Mr Upendra Yadav (Chair)
25.
Nepal Co-operative Party Mr Toyanath Dahal (Chair)
26.
Communist Party of Nepal - Marksbadi (Marxist) Mr Durga Prasad Gyawali
(Secretary-General)
27. Hindu Prajatantrik Party (Hindu
Democratic party) Mr Bishnu Kumar Prasai (Chair)
28. Nava
Janwadi Morcha (New People's Front) Mr Ramraja Prasad Singh (Central Chair)
29. Nepal Rashtriya Jankalyan Party (National Welfare Party)
Mr Khushilal Yadav (President)
30. Rastrabadi Milan Kendra
Nepal Dal (Nationalist Unity Centre Nepal Party) Mr Ganesh Bahadur Pande
(President)
31. Rashtriya Vikash Party (National
Development Party) Dr Asarphi Shah (Chair)
32. Communist
Party of Nepal (Marxist - Leninist and Maoist Centre) Mr Nanda Kumar Prasai
(Secretary-General)
33. Muskan Sena Nepal Party (Smiling
Army Nepal Party) Mr Muskan Paudel
34. League Nepal Shanti
Ekta Party (League Nepal Peace Unity Party) Mr Dhanendra Bahadur Basnet (Chair)
35. Nepal Jantantra Party (Nepali People's Rule Party) Mr
Shyam Prasad Lama (Chair)
36. Rastriya Jana Eakta Party
(National People's Unity Party) Mr Manmohan Shamsher Rana (Chair)
37. Nepal Janasangha Party (Nepal People's Organisation
Party) Mr Padam Bahadur Sapkota (Chair)
38. Prajatantrik
Shakti Party (Democratic Force Party) Mr Ganesh Bahadur Shrestha (Chair)
39. Nepal Janabhawana Party (Nepal People's Will Party) Mr
Surya Bahadur Khadka 'Bikharchi' (President)
40. Rashtriya
Jana Prajatantrik Party (National People Democratic Party) Mr Kameshwarsingh
Subedi (Chair)
41. Nepal Shanti Kshetra Parishad (Nepal
Peace Zone Council) Ms Shushma Badal Sharma (Chair)
42.
Nationalist Youth Front (Rastrabadi Yuba Morcha) Mr Shyam Kumar Thapa (Chair)
43. Nepal Rashtriya Janabhawana Party (Nepali National
People's Will Party) Mr Bhim Bahadur Tamang (Chair)
44.
Liberal Socialist Party (Liberal Samajbadi Party) Mr Baburam Dhakal Shastri
(Chair)
45. Prajatantrik Shanti Party (Democratic Peace
Party) Mr Hemraj Adhikari (President)
46. Nepali Janta Dal
(Nepali People's Party) Mr Haricharan Shah (Chair)
47.
Nepal Rashtriya Loktantrik Dal (Nepal National Democratic Party) Mr Amar KC
(Chair)
48. Rashtrabadi Ekta Party (Nationalist Unity
Party) Ms Uma Shrestha 'Hima' (Chair)
49. Nepali Congress
(Nationalist) (Nepali Congress Rastrabadi) Mr Khanuparude (Rambabu Prasai)
(Chair)
50. Prajatantrik Janamukti Party (Democratic
People's Liberation Party) Mr Gore Bahadur Khapangi (Chair)
51. People's Liberation Party, Nepal (Janamukti Party
Nepal) Mr Atalman Rai (Chair)
52. Loktantrik Janta
Party, Nepal (Democratic People's Party Nepal) Dr Yogendra Thakur (President)
53. Nepal Jagriti Dal (Nepal Awareness Party) Ms Sommaya
Tamang (Chair)
54. Sa-Shakti Nepal (Empowerment Nepal) Ms
Padmini Pradhanang (Chair)
55. Rashtriya Janta Dal Nepal
(National People's Party - Nepal) Mr Bharat Prasad Mahato (Chair)
56. Nepal Prajatantrik Yuva Party (Nepal Democratic Youth
Party) Mr Lakshman Paudel (Chair)
57. Shanti Party Nepal
(Peace Party Nepal) Mr Jhanak Prasad Dhungana (Chair)
58.
Nepal Janta Party (Nepal People's Party) Mr Shyamnarayan Sharma (Chair)
59. Nepal Bahudal Party (Nepal Multi-party Party) Mr
Ambika Rana (Chair)
60. Lok Kalyankari Janta Party Nepal
(People's Welfare People's Party - Nepal) Mr Kishori Mahato
61. Sadbhawana Party (Goodwill Party) Mr Rajendra Mahato
62. Terai Madhesh Loktantrik Party (Terai-Madhesh
Democratic Party) Mr Mahanth Thakur
63. Mongol National
Organization Mr Gopal Gurung
64. Nepal Samyavadi Dal
(Nepal Communist Party) Mr Ravindra Kumar Basnet (Secretary-General )
65. Nepal Parivar Dal (Nepal Family Party) Mr Vinod Dangi
(Maha-Mantri)
66. Sanghiya Loktantrik Rashtriya Manch
(Federal Democratic National Forum) Mr Kamal Chharahang
67. Nepa Rashtriya Party (Nepa National Party) Mr
Keshavman Shakya
68. Madheshi Jan Adhikar Forum (Madheshi
People's Rights Forum) Mr Bhagyanath Shah 69. Nepal Loktantrik
Samajvadi Dal (Nepal Democratic Socialist Party) Mr Upendra Gachchhadar
70. Nepal Sukumvasi Avyavasthit Party (LoktantriK) (Nepal
Landless settlers' Party - Democratic) Mr Buddhiman Dausi
71. Nepal Dalit Shramik Manch (Nepal Dalit Labourers'
Forum) Mr Ravindra Bahadur Sunar (Secretary-General)
72.
Chure Bhavar Rashtriya Ekta Party Nepal (Churia Bhavar National Unity Party
Nepal) Mr Keshav Prasad Mainali
73. Tamsaling-Nepal
Rashtriya Dal (Tamsaling-Nepal National Party) Mr Parshuram Tamang
(Secretary-General)
74. Nav Nepal Prajatantrik Dal (New
Nepal Democratic Party) Mr Kuber Bahadur Raut
(*未確定リスト,2008.3.2現在)