「戦争をする国へ」暴走する安倍内閣に対する抗議声明

                      憲法研究所
                       代表委員 上田勝美(龍谷大学名誉教授)
                       運営委員 澤野義一(大阪経済法科大学教授)
                       運営委員 出原政雄(同志社大学教授))

 今、日本の政治は、わが国の戦後体制、換言すれば平和憲法体制を覆し、これを否定しようとする政治の暴走でゆれている。

 それは言うまでもなく、2012年12月の衆議院選挙と、昨年7月の参議院選挙で改憲派議員が両議院の3分の2の議席を取得して、憲法改正の条件(憲法96条)をほぼ満たした安倍自民党内閣が、なりふり構わず「憲法改悪の暴挙」に出て来ているからである。 しかも自らの歴代内閣が否定してきた「集団的自衛権の行使」を今度は「内閣の解釈の見直し」で、ごり押しに実現しようとしている。

 このように安倍内閣はありとあらゆる「憲法改悪」の施策または手段を動員してきているが、ここでは、憲法論として絶対的に看過することができない2つの問題点を指摘する。

 第一は、憲法改正と言う改憲の手続きは、憲法96条所定の手続きを踏まえることが、憲法を改正する場合の鉄則であり、この手続きを踏まえないいかなる現政権の改憲施策も違憲無効と断じなければならない。いわんや「憲法改正権」を持たない内閣(行政権)が「憲法解釈の見直しで」、憲法の改正ができるなどと考えることは、「行政権の独裁的暴走」であり、「最高法規蹂躙」の違憲の政治そのものと批判せざるを得ないのである。

 第二は、最近の、安倍内閣の政治の典型的な改憲施策は、例えば@国家安全保障会議の設置(日本版NSC)、A特定秘密保護法の制定、B集団的自衛権とその行使の承認などは、言うまでもなく、平和憲法を否定するために、外堀、内堀を埋め尽くして、本丸(9条=九城)を落城させる悪質な手段そのものである。しかし「日本が直接攻撃されていないにもかかわらず」、戦争をするために自衛隊を海外派兵することは、今までの自衛隊派遣とは全く異なり、日本人が「外国人を殺傷する」こと、また逆に自衛隊員など日本の若者が「命」を落とす危険に晒されるということ、さらに言えば、日本への報復として相手国からのテロなども当然起こりうる危険性がある。

 このように安倍内閣の暴走政治は、憲法前文と9条で、全面的な戦争放棄(一切の戦力の不保持、交戦権の否認など)を定めた平和憲法を根底から否定することにならざるを得ない。いわば日本が「戦争をしない国」から、「戦争をする国」へ「国のかたち」を全面的に質的に転換し、歴史を逆行させる暴挙といえよう。

 以上、要するに安倍内閣は、数々の違憲の立法、施策で日本国憲法が定める法治主義と平和主義、すなわち「立憲平和主義」を破壊し、葬り去ろうとしている。わが憲法研究所は、「戦後レジームからの脱却」を標榜し、「集団的自衛権の行使」を始めとする露骨な一連の憲法改悪の施策で、戦後68年間の「平和憲法体制」そのものを根底から否定しようとしている安倍内閣の違憲の政治に対して、ここに断固として抗議し、批判する次第である。

                      (憲法研究所『憲法研究所ニュース』第32号,2014年5月3日,1頁)