個人情報の自衛を!


個人情報の安全については、個々人の日々の自衛行動が先決だ。

先日(2003年4月26日午後2時50分ころ)、警官の制服を着た人物が拙宅に来て、身分証明書も見せずに、私の
  @生年月日
  A家族関係
  B電話番号
  C勤務先の所属部署

を尋ねられたので、丁寧にお断りした。

すると、いささか気分を害されたらしく、「なぜ教えられないのか」と何回も尋問調で問われるので、必要な場合以外は答えないことにしていると述べると、「住民戸別調書」らしきカードに、
  「生年月日は教えたくない」
  「電話番号は教えたくない」
  「親族は教えたくない」

と鉛筆で記入された。

「そのような調査はプライバシーの侵害だし、そのような質問自体が一種の思想調査ですよ」とご注意申し上げると、その警官らしき人は、いま世間で個人情報保護法が問題になっていることなどまるで気にとめる素振りも見せず、「協力をお願いしているのであって、プライバシーの侵害でも思想調査でもない」と、かなりご立腹の様子で反論された。

この戸別調査を断った人は、この付近では私だけとのこと。他の人は全部協力してくれたと言いながら、チラチラ他のカードをめくって見せてくれたので分かったのだが、たしかに間違いなく他のカードには記入されていた(!)。

警官には住民の個人情報収集がどこまで許されているか、法令を調べてみないと正確には分からないが、常識で考えて、こんな調査が許されるとは、到底考えられない。もし許されるとされているなら、その法令を変えなければならない。

恐ろしいのは、このような調査に、ほぼ例外なく住民が答えていることだ。警官の制服を見ただけで、恐れ入り、プライバシーも何もかも包み隠さず、(おそらく自発的に)白状してしまう。なぜか? 答えないと「非国民」になるからだ。「協力」のお願いは、「非協力者」のあぶり出しのために実施される。本当は、戸別訪問で分かる位の個人情報なんか、必要なときにはどこからでも容易に入手できるのであって、警察にとってはどうでもよいことなのだ。が、非協力者リストはいざというときに役に立つ。私も、ちょっぴり「非協力者」リスト入りの恐怖と、「非国民」の悲哀を感じた。

その警官の制服を着た長崎県警の「警官らしき人」は、私の再三のお願いにもかかわらず、最後まで、身分証明書をお示しにならなかった。しかたないので、「お名前、勤務先、生年月日、電話番号をお教えください」とお願いしたが、「○○」(プライバシー尊重のため伏せ字とする)という姓だけで、他は一切答えていただけなかった。

もしこの○○さんが本物の警官だとすると、絶大な国家権力をバックに、個人に対し質問しているのだ。権力の行使者は、自分の身分と権力行使の根拠をはっきり示してから、権力を行使すべきだ。匿名の非公式権力行使に対しては、国民は何をされても責任追及のしようがない。

○○さんはおそらく善意の人であろう。警官の制服は着ておられたが、一私人として戸別訪問され、善意で住民調査をされていたのだろう。だったら、私もいささか大人げなかったかもしれない。部屋にお招きし、お茶でも飲みながら、世間話をすればよかった。

                               (2003.4.29 谷川昌幸)