報道に見るネパールの動き

                       日本ネパール協会『会報』156(1999.9)     

                      谷川 昌幸

 金融自由化の危うさ

 民主化後の金融自由化により金融機関の破綻の危険性が高まっていると、L・ファクレル(『スポットライト』7月2日号)が警告している。

 ネパールの金融機関は民主化以後急増し、今では商業銀行11、地域銀行2、開発銀行3、金融会社44、地方開発銀行5、協同組合29、金融NGO30がネパール・ラストラ銀行(NRB)の認可を受け営業している。

 金融業については、NRB法(1955年)がすべての金融機関に対し認可取得を義務づけ預金保護のための規制を定めているが、1991年制定の協同組合法は協同組合に対し預金と貸し出しの自由を幅広く認めている。この優遇措置に目を付けた人々が次々に組合をつくり、今では4500もの組合がNRBの監督を受けることなく金融事業を営んでいるという。

 協同組合の監督は協同組合局の責任だが、人員と能力不足のため正式に認可された組合についてさえ十分な検査はなされていない。ましてや無認可組合については、金融事業の実態は全く把握されていない。

 協同組合は庶民生活の向上という本来の目的を逸脱し、高利の日掛け貯金(10〜1000ルピー/日)で庶民の金を集め運用しているが、そうした貯金の保障はなく、事実、すでにユニオン協同組合やジャナキ協同組合が破綻し、他の数千に及ぶ組合金融も先行きが懸念されている。

 ネパール政府は、急激な自由化、資本主義化の中で知識と経験に乏しい庶民をいかに守るか、ここでも難しい政策選択を迫られている。

 

バタライ内閣、発足

 5月3、17日の総選挙でコングレス党が111議席(最終確定議席)を獲得、単独過半数を確保し、5月31日バタライを首班とするコングレス党政権が成立した(小林茂「ネパールの総選挙」本誌155号参照)。当初閣僚は16名であったが、段階的組閣の慣例に従い、一ヶ月後の6月30日17名を新たに入閣させ、32閣僚とした(1名入れ替え)。

 これで新内閣の陣容は固まったが、早速、カトマンズポストの社説(7月1日)で「欠陥内閣」と批判され、またコイララ党首との軋轢も表面化するなど、政権安定は依然として難しそうである。

        閣僚名簿(6月30日現在)

大臣(19名)

首相(宮務・防衛):クリシュナ・プラサド・バタライ

教育:ヨグ・プラサド・ウパダヤ

地方開発・女性・社会福祉:チランジビ・ワーグル

公共事業・運輸:クーム・バハドール・カドカ

水資源:ゴビンダ・ラジ・ジョシ

農業:チャクラ・プラサド・バストラ

外務:ラム・シャラン・マハト

観光・民間航空:ヴィジャイ・クマール・ガチャダル

住宅・環境計画・労働:バル・バハドール・KC

供給:プラカシ・マン・シン

青年・スポーツ・文化:シャラド・シン・バンダリ

森林・土壌保全:マハンタ・タクール

行政管理:シッダラジ・オジャ

産業:オムカル・プラサド・シュレスタ

内務・情報・通信:プルナ・バハドール・カドカ

保健:ラムバラン・ヤダブ

財務:マヘシュ・アチャルヤ

商業:ラムクリシュナ・タムラカル

法務・司法・議会:タラニ・ダッタ・チャタウト

国務大臣(8名)

科学・技術:スレンドラ・P・チョウダリ

労働:ラム・バハドール・グルン

人口・環境:バクタ・バハドール・バラヤル

地方開発:モハマド・アフタブ・アラム

女性・社会福祉:カマラ・パント

教育:ラジェンドラ・カレル

土地改革・管理:ガンガダル・ラムサム

情報・通信:ゴビンダ・バハドール・シャハ

副大臣(5名)

土地改革・管理:スレンドラ・ハマル

外務:アルジュン・ジュング・B・シン

商業:ナレンドラ・ネムワン

産業:サルバダン・ライ

観光・民間航空:ナラヤン・シン・パン