TVゲームとキラーソフト

          長崎大学教育学部  原口康平

 

 年間千本以上のソフトが発売される日本のゲーム業界。その中でも、ある特殊な称号を得るソフトが何本か存在する。俗に、「キラーソフト」と呼ばれるものである。ハードの売上に大きな影響を与え、業界内でのハードの地位を飛躍的に上げることが出来るソフト。これまでのゲームの業界でも、このキラーソフトによって大きな動きがあった。ここではそのキラーソフトについて書いていこうと思う。

 

1,任天堂ハードの時代

 1983年から1995年までは、ほぼ任天堂ハードの独占状態と言ってもいい状態であった。1983年に任天堂から「ファミリーコンピュータ」が発売。翌年には「ゼビウス」と言うソフトが発売となる。ゼビウスは、当時アーケードで人気を博していたシューティングゲームであり、そのゼビウスが家庭で遊べると言う事でアーケードからのファンが一気にファミコンへと流れ込んだ。

 1985年にファミコン優位を決定付けるソフトが登場する。任天堂が製作した「スーパーマリオブラザーズ」である。このソフトだけで、国内600万本、海外では3300万本以上のセールスがあった。これはいまだに破られていない記録である。このソフトで業界内の地位を固めた任天堂は、その後長期にわたり業界1位のハードを守り続け、「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」などの人気シリーズをリリースしていく。

 1990年、任天堂はファミコンの後継機として「スーパーファミコン」(以下SFC)を発売する。SFCもファミコンで発売してきた人気シリーズの続編を次々とリリースしていく。しかし新たなジャンルのゲームがキラーソフトとして登場する。対戦格闘と言うジャンルである。1992年、このジャンルのパイオニアともいえる「ストリートファイターU」が発売となったのである。ストリートファイターもアーケードから移植されたゲームであり、見知らぬ二人がゲームで戦うと言うことが和題となった。

 勿論、この間にも様々なハードが登場している。が、圧倒的なキラーソフトの存在がなかったり、ソフトの不足などがありファミコン・SFCに肩を並べることが出来るハードが存在しなかったのである。

 

2,第一次次世代ハード機戦争

 1994年から1996年の間に発売された「セガサターン」「プレイステーション」「ニンテンドウ64」の三機種はゲームの次世代機として、当時ほぼSFCの独壇場であった家庭用ゲーム機の後の覇権争いを演じていく事になる。

 最初はセガサターンが自社の人気ソフトなどをリリースし有利に事を運んでいたが、プレイステーションが、後に人気シリーズとなる「バイオハザード」や「鉄拳」などを発売し、徐々に力をつけていった。そして、プレイステーションの地位を固める事件が起こるのである。それは、これまで任天堂ハードでリリースされていたファイナルファンタジーシリーズがプレイステーションでリリースすると言うものであった。これが決めてとなりこの後プレイステーションは一躍ナンバー1ハードに踊り出るのである。

 他の二機種はどのようになっていったかと言うと、サターンは出だしこそよかったもののハード自体のカルトなイメージが消えずに98年後継機である「ドリームキャスト」にその座を譲ることになる。が、ドリームキャストもタイトルの不足などで製造中止となってしまった。ニンテンドウ64は、「マリオ」や「ポケモン」などの自社ソフトで対抗したが、発売時期が遅かったなどもありプレイステーションに追いつくまでには至らなかった。

 

3,第二次次世代ハード機戦争

 2000年に「プレイステーション2」(以下プレステ2)が発売されてから2001年に「ニンテンドーゲームキューブ」(以下GC)、2002年に「Xbox」が発売され第二次次世代ハード戦争が起こった。ここでも人気タイトルを抱えるプレステ2が発売3日間で100万台近くを売るなど力を発揮した。勿論このときもキラーソフトは存在している。が、ゲームソフトではなかったという話があるのである。問題はプレステ2の機能にあった。プレステ2はDVDプレイヤーとしても使う事が出来るのである。この機能があるためにプレステ2と同時期に発売された「マトリックス」がキラーソフトだったと言う話がまことしやかに流れたのである。プレステ2発売直後、ハード一台あたりのソフト供給量が、0.7本だったというデータも一部にあり、それらがこのようなことに拍車をかけているのである。

  

4,今後について

 これまでのゲーム業界について極簡単ではあったが書いてみた。今はハードの発売などもなくハード戦争は終わったとも言われる。しかし、これからが勝負である。これからいかにして質の高いソフトを発売していくかが各ハード最大の課題となっている。どのハードが多くの人をひきつけるキラーソフトを出してくるのか、それによって勢力図が大きく塗り替えられる可能性は十分にある。