遺伝子について

 

長崎大学教育学部2年  三代大輔

 

現在21世紀を迎えたこの世界ではさまざまな科学技術の発達が見られその中で私が注目したのは生殖技術に関することである。1670年代に、この世で初めて精子の姿が顕微鏡で確認されてから主だった生殖技術の発展が始まったのである。顕著な発展が見られたのは20世紀の後半からである。

 体外受精がその発展の産物である。体外受精という考えは、1937年;ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン:という雑誌に「シャーレの中での受精」という論説が出されたのが始まりで、イギリスのロバート・エドワーズ博士は1978年に体外受精を初めて成功させ、ルイーズ・ブラウンを誕生させたのである。体外受精の成功によってもたらされる功罪はさまざまな点があげられる。1つに「生殖技術への影響」2つめに「遺伝子技術への影響」である。

 

1、  生殖技術への影響

これは、1978年から二十年間で生殖技術は急激な発展を見ることになる。このような急激な変化は生命倫理や法律が定まらないことで、世界各地で混乱を招くことになったのである。このために、当時、体外受精は政府などの公共機関からの資金提供がなかったために患者自身を実験台にして技術を発展させていったのである。つまり、体外受精は生殖の場所を夫婦のベッドから研究室へうつしたのである。驚くことに、1978年に人間の女性への体外受精が行われ、1979年に、ヒヒを用いて実験、1983年に人間に近い霊長類であるチンパンジーに行われたのである。動物実験より人間実験のほうがさきだったのである。ある学者も「動物のために、体外受精は生み出されたのだ」といっている。確かに、動物で成功したことがそのまま人間に適応するものではないと思われるが、動物実験を何度も繰り返しその結果に自身を持てるようになってから人体実験に移るべきだ。現代の科学は誤った形で進歩しているのである。

 体外受精から発展していき、現在、生殖方法は、;性交、体外受精、人工受精、クローン技術:の4つがある。

 クローン技術による生成は二つの方法がある。{1}胚から取り出した細胞を分割させながら生成する場合と{2}体細胞から細胞を取り出し、その細胞を分割させて生成する場合である。1996年にアメリカでは、{1}の方法で人間に近いサルのクローンの報告がなされ、また同じ年にイギリスでは{2}の方法で、有名な羊ドリーの生成に成功している。そして、この研究を人間にもする科学者が出てくるのである。リチャード・シード博士は1998年に年間500人のクローン人間を生産すると発表しお金さえ払えばその人のクローンを生成するのである。確かに、クローンを作ることでその人のメリットになることはたくさんあるだろう。日本政府は、クローンの長所として、食料の安定供給、実験用動物の革新、医薬品の製造、移植用臓器の作成、希少動物の保護をあげている。希少動物の保護は、絶滅していく動物を救い、また技術が進歩すれば絶滅していった動物{恐竜など}のクローンを誕生させることになるだろう。もう映画の世界の話が現実に近づいる。食料の安定供給は、世界では何カ国もの人が食糧不足で苦しんでおり安定供給さえあれば飢えや飢饉を防ぎ何億人もの命を救うことになるのである。実験用動物の革新はでは、同じ遺伝子を持つ同種の動物から実験結果を得られるので実験を有意義に行えるのである。移植用臓器の作成は、現在臓器移植を何年も待ち続けているほど、臓器不足なので臓器の大量生産は必要な事柄である。このようにクローン技術は現代に抱える数多くの社会問題のいくつかを解決してくれるのだ。しかし良いことだけではない、 問題点も数多くあるのだ。特に注目するのは、移植用臓器の作成で、普通に移植用クローンを作ることそのクローンの人格を認めないということになる。過去の動物実験報告で、かえるの頭なしクローン作成に成功しており、人間の頭なしクローンを作り移植専用に作成する考えが出てきた。このような事柄は生命倫理に影響するもので、クローンを人間とみなさずただの道具として扱っており、人間の定義というものはクローンの出現によって大きく変化した。法律家などはこのことについて激しい議論を交わしている。クローンの生成は、様々な社会現象を引き起こす危険があるので、アメリカの前大統領のクリントンが人間のクローン生成に強い歯止めをかけたのである。日本でも、科学技術会議生命倫理委員会で討議され法的規制がなされたのである。

 

2、遺伝子技術への発展

生殖技術が発展すれば、当然遺伝子技術も発展してくる。妊娠後の遺伝子診断はその例で、 出産前にその子供の胚を調べて、遺伝子に何か問題ないか調べるのである。もし、障害をもっていたり、大きな病気を持っているなら子供を中絶するのである。親は、優秀な子供を持ちたいと思う心理があるため、誕生した肺に遺伝子操作をしたり、優秀な人の精子や卵子を使って子供を作る状況が出てきた。この過程で、売買を目的とした精子バンク、卵子バンクができ産業部門に進出してきたのである。また、肺を増殖させて作った細胞はアルツハイマー型痴呆症やパーキンソン病の治療に有効活用できるようになった。このように、遺伝子技術の発展は多種の部門へのいい影響が見られる。だが、胚内部の遺伝子物質を操作して人間の品種改良を行うことはすなわち、人間の種の未来をこの手で左右できることで、宗教上神を冒とくする行為なのである。クリフォード・グロブスタインは「人類の生物学的プロセスにおける無意識的な決定をある程度意識的な自己決定にかえるようになった」となげいてる。20世紀前半まで生殖活動は自然に逆らわずそのまま行われ、何事にも左右されることはなかったが、20世紀後半は、自然の摂理を無視した生殖の方法が誕生した。宗教的、生命倫理的に見てもこのようなことが平気で行われている世の中で本当によいのだろうか?         

 

3、まとめ

 このように様々な問題を抱えたまま遺伝関係は現在にいたるのだが、あくまで体外受精は不妊治療のひとつとして行われるべきものであり、親の欲望満たすためやお金儲けのためにやるべきことではない。また、遺伝子診断もやるべきではないと思う。前もって病気をしって、もしそれが、治らないものであるならその人の運命を大きく変える恐れがあり危険だからだ。ハンチントン病などがいい例である。21世紀になり様々なガイドラインが出されている。これを踏まえて、僕たち人間がどう対応していくことが課題になるだろう。

 

 

■参考図書『人・クローンの無法地帯』ローリー・Bアンドルーズ

 

(著者)長崎大学教育学部2年  三代大輔

大分出身で好きな食べ物はみかん。なんともたまらない味である。長崎にきて思ったことは田んぼがほとんど見当たらないことだった、実家にはかなりあるのに、一種のカルチャーショックだった。バイトは居酒屋でやっているが、今度はバーでやろうと考えている。興味があることは、弓道とバレーである。好きな芸能人は松島奈々子。大好きです。長崎にいる残り二年間留年せずに楽しい思い出が残せる生活が目標である。